ACT.8 足りないもの
※注意!
この作品はフィクションです。これらに登場する人物は実際に存在しません。
この作品は公道レースを題材にしている作品ですが、公道でレースやドリフトをするのは危ないのでサーキットでやってください。
後、車を運転する時はシートベルトをしっかり締めて、安全運転でお願いします。
「行けェーッ! 行けェーッ!」
高速セクションを終え、コーナーに突入!
練習では1回しかクリアしていないコーナーに挑む!
(キイイイイイイイン!)
「抜けるか……?」
ギャラリーたちが翔子のコーナリングを見守る。
(キュアアァァ!)
「行けえええワンエイティィィィ!」
攻めるか……!
攻めるかァァ……!
攻めるかァァァァッッ!!
「曲がってェェ!」
そして……!
「ぬ……抜けたよ!」
ダウンヒルでの練習でスピンしたコーナーをクリアしたのだ!
すごい! 練習の成果が出た!
「やべェェェェェ! 見たことのないドリフトだ!」
ギャラリーも翔子の練習の走りにビックリ。これが練習というものだ。
焦らずに冷静に攻めているワンエイティの姿は、ドリフトのライン取りが綺麗で、進入角度もよく整っている。
頂上。
(プルッ、プルッ!)
葛西サクラの携帯電話が鳴る。
電話の相手は翔子のドリフトを見ていたWINDSONICのメンバーだ。
「すごいよサクラさん! あのワンエイティは私には出来ないドリフトだッ!」
「──あいつ……朝オレとのバトルでスピンした奴だ。なのにこんなすごいドリフトするとは……あいつはわざと手加減したのか……!?」
本当に翔子のテクニックなのかとサクラは気になる。
一方、翔子はヒルクライムに入っていた。
次々に迫り来るコーナーをドリフトで駆け抜けながら、赤城山を登っていく。
「うまい……ドリフト走行会をつまらないと思った自分は馬鹿だった。雨原さんとサクラさん以外に運転がうまい走り屋がいるんだな………引き続き見よう」
スピンした走り屋を見てこれに唖然し、帰宅しようとしたギャラリーたちが戻ってくる。
翔子の走りを見に来るためだ。
「ワンエイティが帰ってきた!」
最終を抜けて、直線を抜ければいよいよゴールだッ!
翔子の出番は終わりだ。頂上の駐車場に戻ってくる。
「はあァ――ふうゥ、おれは頑張れたのかな?」
走り終えた翔子が降りてくる。
ドリフトで頑張ったのか、ちょっと疲れた感じだ。
「よくやったな。WINDSONICのメンバーとギャラリーたちはお前のドリフトで大興奮だ」
智が来て、翔子に話しかける。
"おれは頑張れたのかな"という翔子の言葉に対してよく頑張ったと言った。
「――時間をくれ……どうしてお前はこんなドリフトができるようになったんだァ……? 教えてくれ……」
突然サクラが翔子の元に来る。
どうやってこんなドリフトができるようになったかを教えてほしいと言い出す。
「今朝ァ、おれにはまだ足りない物があったんだ。それを練習で手に入れた。だから、こんなギャラリーたちを喜ばせることができたんだ」
ドリフトを喜ばせることができたのは翔子に足りない物を手に入れたからだ。
「練習で足りない物を手に入れるのにはすごく苦労したんだ。最初はスピンしまくりだった」
自分には足りない物を練習でどうやって手にいれたのかを翔子は話し始める。
「けど、諦めず頑張ってバトルでスピンしたコーナーを攻める練習でやっと手にれたんだ。足りない物とは君に足りておれにあんまりない物、それは冷静さだった。おれは集中しすぎた走り屋、抜かれそうになるとすぐ焦っちゃうんだ」
自分のことは焦りすぎた走り屋だと翔子は語る。
「──なるほど、これで強くなったか……ちょっとは感じる……。ただし、足りない物だけじゃオレ倒せない……。オレはWINDSONICのメンバーだ、WINDSONICのメンバーでいるからに負けない……オレはお前との差を広げてやる……お前を超えさせない……」
(ウオン、ウオオオオオオオオンッ!)
ちょっと強くなったと感じるがまだオレを倒せない、サクラはそう言って、JZA80の運転席に乗り、去っていく。
まだ倒せないとサクラに言われたが、翔子はドリフト走行会を盛り上げたのだった。WINDSONICの二人よりも。
彗星のごとく赤城で現れた少女は伝説を作ったのだった。これが翔子の最速伝説、第1章となった。
午後9時……。
ドリフト走行会が終わった頃、翔子と智は帰る途中。
「朝の練習の成果が出たな」
「葛西サクラに負けたくない、リベンジしたいという気持ちで猛練習したからですよ。最初はスピンしまくりでしたけど、焦らずに攻めれば無事にスピンせずに走れるようになりました」
絶対サクラにリベンジしてやるという気持ちで翔子は頑張ったと語る。
「運転がうまくなったな、大崎。2年前のお前の運転は激しくて必ずバンパーを落とすほどだった」
智が言うのは、昔の翔子の運転は乱暴でクラッシュが多かったことだ。
しかし、今の走りは落ち着いており、クラッシュすることはなく、さっきのドリフト走行会でギャラリーを盛り上げるほどに成長している。
「フフ、それを言わないでくださいよ。恥ずかしいですから」
智の言葉に翔子は半笑いする。
「じゃあ家に帰ったら一緒にお風呂だぞォ!」
「やったーッ! 智姉さんとお風呂ォォ!! 一緒に入るのが楽しみです!」
帰ったらお風呂だと、翔子は大興奮!
早く帰りたい気持ちだ。
「大崎、スピード出し過ぎだぞ!」
興奮のあまり、スピードを出し過ぎたようだ。
夜が明け、翌日……。
3月19日の午前6時、ドリフト走行会の熱気が消えた赤城山の頂上。
駐車場にはWINDSONICの2人、雨原我来也と葛西サクラがいた。
サクラは赤城山の道路を見る。
「どうしたんだ。サクラァ?」
道路を見ているサクラのもとに雨原が来る。
「──あいつが走りを終えた頃、オレはあいつと話した……。昨日の朝……オレはあいつを倒したが、ドリフト走行会でのあいつは変わっていた……なんと、ドリフト走行会で一番ギャラリーを盛り上げたのはあいつだった……。なぜ強くなれたというと、練習で足りない物を見つけることができたからだ……。オレはあいつが本当に強くなっているのかって疑問に思った……。もう一度バトルしてあいつの強さを調べ直すしかない……!」
なんとサクラはあいつこと翔子とバトルをしたいと言い出した!
強くなっているか確かめるために。
「昨日の朝、勝ったのにまたバトルをしたいのか! 昨日あたしはびっくりしたぜ、あいつはわずか半日でどうやって強くなったんだろうと思った。しかし、WINDSONICは赤城最速のチームだ。あいつが強くなってもあたしたちは無敵だ!」
翔子のパワーアップぶりに雨原もびっくり。
しかし、成長した翔子にも負けないと言う。
「――雨原さんの言うとおり……WINDSONICは負けない……。最速だからだ……。最速だから負けないんだ……」
翔子には勝つ自信はサクラはある。
WINDSONICは最速チーム。最速チームは負けを許されることはないッッ!
午前7時45分、前橋の智の家。
「ごちそうさまでした! 智姉さんッ!」
翔子は朝ご飯を食べ終えた。
「昨日のことなんですが、あまり盛り上げた実感はありませんでした。他の人のほうがうまかったですよ」
昨日のドリフト走行会で盛り上げたことは翔子にとってはあまり実感はなかったらしい。
他人のほうが盛り上げたと思っている。
「お前は実感がないと思っているが、私はうまくなったと思ってるぞ」
しかし、智にとっては、翔子が1番盛り上げたと思っているそうだ。
玄関に1台の車が来る。ボディーカラーは黒、派手なエアロパーツを付けたスポーツカー、WINDSONIC・葛西サクラのJZA80型スープラだッ!
「──ここか……タウンワークで調べたら本当にあったぞ。なぜ坂下智の家に来たのは、坂下智はあいつと一緒にいるからな」
サクラは智が翔子と一緒にいることを知っていた。
翔子とバトルしたいと智に言うのだッ!
サクラは80から降りる。
突然、サクラはあるものを見る!
(──あ、あいつのワンエイティ………ッ! あいつは坂下智の家に泊まってもらっているんだな……)
そう、翔子のワンエイティだ。
サクラは翔子が智と同居していることを知ってしまった。
(ピンポーン)
サクラは玄関のピンポンを鳴らした。
「誰か来たぞ」
ピンポンに反応し、智は玄関を開ける。
「──WINDSONICの葛西サクラだ……」
「ど、どうして来たんだ? 何かようか?」
サクラが来たことに智はちょっと驚いているようだ。
「──お前と一緒にいたワンエイティ乗りに伝えてほしい話だ……。オレはバトルを申し込む……」
バトルをしたいという用件をサクラは言った。
これはぜひ翔子に伝えてほしいと。
「ワンエイティ乗りは大崎のことか? 伝えるなら私じゃなくて大崎に言ってくれ。おーい! 大崎、玄関にお前に用がある人が来たぞ!」
サクラが翔子に用があることを聞いて、翔子を呼ぶ。
「はーい! すぐ玄関に来ますッ!」
智に呼ばれて、翔子が来る。
(──やっぱり、あいつはこの家に住んでいたのか……)
ワンエイティが智の家にあったことで翔子がそこに住んでいると思ったサクラ。
翔子が来たことに、“やっぱりいたのか”とサクラは感じた。
「──昨日ドリフト走行会にいた葛西サクラだ……。オレはお前にバトルを挑みたくてここに来た……。日程は28日の土曜日、時間は午後10時に行う」
行う日と時間が言われた。
28日の土曜日……。つまり、来週だ。
「バトル……断る理由なんかない。やるよォ!」
サクラの挑戦を受けてしまった。
本当に良かったのだろうかァ?
「──やるのか……決まった……。じゃあ28日の10時の赤城山にこい……。じゃあな……」
翔子の承諾を認め、サクラは帰っていった。
「本当にバトルを受けてもいいのか? たとえお前がドリフト走行会を一番盛り上げたとしても、葛西サクラに勝つことは難しいぞ。なぜならあいつはWINDSONICで雨原芽来也に次ぐ2番目に速い走り屋だぞ」
受けてもよかったのか? と智は尋ねる。
「いや、おれは勝てますよ。この1週間の間、練習すればいいですからね」
だが、翔子は楽勝だと感じた。
この1週間を頑張ればいい。
大丈夫かァ?
「自分が強くなっても、相手を知らなきゃ勝てないぞ」
智の言う通りだ。
たとえ自分が強くなっても、相手の強さを知らなきゃ勝てない。
「あいつの個性を覚えたほうがいい。どんな奴かどんなクルマに乗っていた覚えているか?」
「たしか、クールな性格で……愛車はJZA80型のスープラでした」
サクラの性格を翔子は言う。
無口でクールな性格だ。
「彼女は笑わないほどの無口で……クールな性格からくる運転は一流だ。雨原はあいつが赤城最速になりそうだと思われている」
サクラは感情を表さないほどの無口で喋る時は「――」から始まる。
「奴の80は普通の80じゃない。とっても軽いぞ」
80スープラの弱点といえば1510kgという車重の重さだ。そのせいでFRのくせにコーナリングは苦手で、ドリフトには不向きだ。
しかし、サクラの80はリアシート、エアコンといった走りに不要な物を外し、100kg以上の軽量化をしている。
「ここからも長く話したい所だが、私は仕事に行かなきゃならない、言えるのはここまでだ」
説明はここで終わる。
智が仕事に行かなきゃいけないのだ。
サクラの話は続きだ。
「えぇ~ッ! 行って欲しくありませんよォ! もっと説明してくださいィィ!」
智が仕事に行って欲しくないと言う翔子。
「私は真面目な人間だ。仕事は絶対に行かなきゃならない。絶対に遅刻したり休んだりしないぞッ!」
真面目な性格の智は仕事を休みたくないものだ。
「じゃあ、80の情報についてなんですが、知らないところはパソコンで見ます」
80の情報の残りは智のパソコンで見ると言う翔子。
だったが……。
「パソコン!? パソコンのインターネットより私のノートが詳しいぞ」
インターネットの情報より自分の部屋にあるノートが詳しいと智は言う。
「智姉さんの本のほうが詳しいですね。じゃあそこに行きます!」
それを聞いて、翔子はすぐ2階の智の部屋に行き、ノートを見に行った。
「ここかな。あった! 80の本がァッ!」
早速、翔子は80について書かれた智の本を見つけたのだった……。
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
今年最初の小説です。
翔子ちゃんはドリフト大会を盛り上げましたが、サクラが来て、バトルを申し込みに来ました。
翔子ちゃんはどうなるやら……その後の翔子ちゃんの活躍に期待してください。




