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閑話17「氏と姓」
「ねえ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
彼女が、俺の話を遮ってくる。
「どうしたんだ」
「氏とか姓って、どう違うの」
「確かに、ややこしいところだな」
六法はいったん閉じて、辞書を取り出す。
「氏姓制度というのは、奈良時代に確立されたと言われているね。君の名前を例にしよう。秋原岩子という名前を、現在の基準で分けたら、秋原が苗字、または氏や姓になる。そして、岩子が名前とか名と呼ばれるわけだ。法的には氏名として、使われることになる」
「つまり、氏も姓も同じところをさしているということ?」
「昔はそうじゃなかったんだ。とは言っても、今となっちゃ同じところだけどね。じゃあ、そろそろ戻ろうか」
俺は彼女がうなづくのを見て、六法を再び開けた。




