表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
民法私的解釈  作者: 尚文産商堂
第二章第七節第二款 賃貸借の効力
770/1107

閑話15「家制度」

「そういえば…」

彼女が俺に話しかけてくる。

「家制度ってどんな制度?」

彼女の質問に、こんどはずいぶんとくたびれた六法を引っ張り出す必要があった。

「これ、いつの六法?」

「戦前のだよ。正確には昭和22年の大規模改正直前のものだな」

(作者注:以下、当時の条文を引用する際には中野文庫;http://www.geocities.jp/nakanolib/hou/m4_o.htmより抜粋/引用とします。なお、以下の条文は特に断りが無い場合は、引用等はすでに効力を失った条文とします)

「…なんで持ってるの」

「昔の法律が、ごくわずかな例だけども、適用される例があるからだね。例えば借地法と借家法と建物保護に関する法律は、1992年に借地借家法という一つの法律に統合されたけど、法律が適用されていた時の建物人は適用されるという附則が付いているんだ。そんな時のために、こうして昔の六法を保存しておくんだよ」

「そうなんだ」

彼女は話を聞いて、うんうんとうなづいていた。

「さて、家制度というのは戸主を頂点とした家族の制度のことを言うんだ。古来から戸主である父親を中心として家族は構成されていたんだ。それを受けて、第732条戸主ノ親族ニシテ其家ニ在ル者及ヒ其配偶者ハ之ヲ家族トスと定められたんだ。つまり、戸主と戸主の親族で家にいる人とその配偶者は家族だとされたんだ」

「へー」

「この戸主には、いろんな権限が与えられていて、例えば、家族についての結婚についてや養子についてなどは、戸主が決定することになっていたんだ。他にも、家族の離縁についても、戸主が決めていたんだよ」

「なんだか昔って、男社会の印象があるんだけど。戸主も男だけしかなれなかったの?」

「いや、女戸主の制度があったんだ。戸主が死んだり、隠居することになって、戸主ではなくなった際に、女性が戸主の地位を引き継ぐ際に使われた地位の名称だね。女戸主も、戸主と同様の権利を行使することができたんだ。まあ、いくつか違う点もあるよ。例えば、第755条第1項女戸主ハ年齢ニ拘ハラス隠居ヲ為スコトヲ得とある。男の戸主だったら第752条第1号満六十年以上ナルコトと第2号完全ノ能力ヲ有スル家督相続人カ相続ノ単純承認ヲ為スコトの2つの場合に限って隠居ができるって感じに、多少違いはあるんだ」

「なるほどー」

「まあ、俺はあまり詳しくないから、家族法の先生に聞いたら、もっと分かるだろうな」

「そっかー…」

彼女は少し考え込んでいたが、どうやら授業の後にでも聞くように決めたのだろう。

「じゃあ、次に行くね」

俺は昔の六法を戻して、今の六法を開けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ