閑話11「有名契約と無名契約」
「そういえば、有名契約と無名契約って言ってたけど、あれってどんな感じのものなの?」
彼女が、俺に急に質問してきた。
「じゃあ、もう一度みてみようか」
俺は振りかえることにしてみた。
「まず、有名契約について。典型契約ともいわれている13種類の契約についてだね。これらはすべて社会的にも重要な契約だとして、それぞれに名前があり、型があらかじめ決められている契約なんだ。これは第3編第2章の第2節から第14節までに書かれているそれぞれの契約についてを指すんだ。第1節は総則だから関係ないね。一方の無名契約とか非典型契約と言われているのは、それ以外の全ての契約のことを指すんだ。これらは、型にはまらない自由な契約ができるということも意味しているんだ」
「重要だから型をあらかじめ作っておくけど、それ以外にも時には必要になる契約があるから、それらも結ぶことができるようにしているっていうことね」
「そういうことだね。ただし、公序良俗やその他の法律に反するような契約、例えば盗品売買契約といった契約は、全て無効となるよ。契約が自由だからと言って、必要な制限はかけられているんだ」
「じゃあ、有名契約と無名契約が一緒になるっていうことはないの?」
「どちらかと言えば、そういった契約の方が多いんだ。有名契約と無名契約が一緒になった契約や有名契約同士が一緒になった契約のことを混合契約というよ」
「例えばどんなのがあるの」
「典型的な混合契約と言われているのは、製造物供給契約かな。これは請負契約と売買契約が一緒になった契約とされるんだよ。請負人が自らの力によって集めた材料を用いて相手の注文してきた品物を製造して引き渡すと言ったものだね。請負や売買についてはあとで詳しくやるから、ここでは言葉だけ覚えてて。一般的な例でいえば、オーダーメイドのスーツが分かりやすいかな。自分がスーツ製造のメーカーに発注を行う時点で請負契約が成立。さらにメーカー側が製造したスーツは、代金が支払われるまではメーカー側に所有権があるという点では売買契約ということになるんだ」
「なるほど」
彼女は、分かったようにうなづいていた。
「じゃあ、次に行くよ」
俺は、説明に戻ることにした。