閑話5「付合、混和、加工」
「付合、混和、加工ってなんかややこしいね…」
「もうちょっと説明しておこうか」
彼女がそう言ったので、俺は別の本を取り出して教え始めた。
大学に通っていた頃の教科書で、『有斐閣アルマ』が出版している『民法2物権 (第2版補訂版)』だ。
ここからの話は、この本を参考にしている。
「まずは復習。付合、混和、加工の差は」
俺は彼女に聞いた。
「えっと、付合は固形物がひっついて一緒になる。混和は液体が混ざり合って一緒になる。加工はあらかじめ用意されている材料を別のものへと変化させること…だよね」
「まあ、そんな感じ。それら3つを一緒に言うと添付という法律行為になるんだ」
俺はそれから判例集を持ってきて、彼女に見せた。
「主な判例には、大判大正5年11月29日民録22輯233号3頁と大連判大正6年6月13日刑録23輯637頁があるな。前のは付合の、後ろのは加工についての判例だ。詳しくは調べておいてもらうとして、大雑把に言えば、完全に分離が不可能な付合ならば、所有権は留保されないというのと、加工業者へ依頼をするときに、契約があればそちらを優先するということだね」
[作者注:以上「」内の説明はWikipedia添付 (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B7%BB%E4%BB%98)を参考しました]
「なるほどねー」
「他の重要判例としては、最判昭44年7月25日民集23巻8号1627頁や最判昭54年1月25日民集33巻1号26頁があるね。前者は、借家人が行った家の増築部分について、建物からの独立性がないと、借家人の物にならないという判例。後者は、1つの建物の工事で、別の請負人が材料を提供し、建物が出来上がった時には動産の符号ではなく、加工の規定を使うこととしたものなんだ」
「へー」
俺は本を閉じて、言った。
「まあ、このあたりはややこしい分野でもあるからね。しっかりしとかないと後々わからなくなるから気をつけるように」
「はーい」
俺はその返事を聞いて、いささか不安に思ったが、気にしないことにして、続きを始めた。