第一編まとめ
「…どう?」
俺は、彼女に聞いた。
「分かったことはただ一つ。なんでこんな難しい規定を創ったの?」
「仮にさ、岩子がお小遣いを母親から前借していたとするだろ。そしたら、一定期間が経ったらそのお小遣い分を返還することも無くなるんだ。必要だろ」
「うーん…それは重要かも……」
彼女はそう言って、考え込んでしまった。
俺はそこですかさず聞いてみる。
「それで、第1篇をまとめてみると、どんな感じになる?」
「え?えっと……」
彼女は考え込んで、俺に言った。
「法的な人とは何か、住所はどうやって決められるのか、契約をする時にどうしたら向こうや取り消しができるのか…かな」
「お前、民法音読100回してこい」
冗談のつもりで言ったら、すぐにそのことが分かったようで、壁にかかっている時計を見て立ち上がった。
「もうそろそろ帰らないと。お母さん心配してるかも」
「送って行こうか。俺も帰る時間だ」
午後7時。
俺以外には所長が一人でコーヒーを飲んでいるぐらいだった。
「所長、帰りますけど大丈夫ですか」
カバンに必要以外の書類が入っていないことを確認しながら、聞いた。
「ああ、大丈夫だ。気をつけてな」
「はい、失礼します」
所長に軽く会釈をしてから、事務所から出た。
自動車で家まで送っていく道すがら、俺は彼女に聞いてみた。
「それで、第2編以降はどうするつもりなんだ」
「明日…とかは?」
明日は土曜日で、俺は久しぶりのオフだった。
「…仕方ないな。後進を育てるとするか」
「いいの?!」
「事務所は締まっているだろうから、俺の家か、岩子の家のどっちかだな」
「じゃあ、小父さんの家で」
「いつ?」
「午前10時は?」
「午後からがいいんだがな」
「じゃあ午後1時ぐらい?」
「それでいこうか」
「分かった。じゃあ、お母さんにも言っておくね」
「俺からよろしく言っていたと伝えておいてくれ」
「分かった」
彼女は、うなずきながらカバンから携帯を取り出してメモをしていた。