閑話3「判例」
「そう言えば…」
彼女は、俺に聞いてきた。
「判例って、どんな感じで重要なの?」
「ああ、教えてなかったか」
俺は、民法のページにしおりを挟んで、刑事訴訟法をあけた。
「刑事訴訟法の第405条2号には、"最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと"で上告する理由となると書かれているんだ。つまり、判例というのは最高裁判所の判決で、それと違う判断をするだけで上告ができるということになるんだ」
「最高裁判所は分かったけど、戦前は別の名前だったよね。確か…だ、だい…なんだっけ」
「大審院だね。それは同条第3号に書かれているんだ。"最高裁判所の判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所の判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと"ということになっていて、最高裁判所の無い場合に限って、大審院、戦前の高等裁判所であった控訴院、現行法による高等裁判所の判決と反する時に、上告することができるようになっているんだ」
「じゃあ、控訴院と高等裁判所が違う判断をしていたら、どっちをとるの」
「後に判決をしたほうをとるんだ。これは、今の裁判でも変わらないよ。だから、控訴院と高等裁判所を比べたら、今の高等裁判所のほうが新しいだろ。だから、そっちを判例とするんだ。同じように、同じ高等裁判所だとしても、去年の判決と今年の判決があったら、今年の判決を判例とするんだ」
「じゃあ、判例の定義って何なの?」
「『一定の法律に関する解釈で、その法解釈が先例として、後に他の事件へ適用の可能性のあるもの』ということになってるね」
[作者注:Wikipedia内の判例のページより抜粋]
俺は続けて言う。
「ああ、そうそう。他の法律、例えば民事訴訟法第318条第1項や裁判所法第4条とかにも判例について書いてあるし、他にもいろんなところに顔出してるから、調べてみると面白いかもよ」
「へー」
彼女は面白がっているように俺に顔を向けてくる。
「じゃあ、次行こうか」
そう言って、しおりを挟んでいた民法のところへ戻った。