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民法私的解釈  作者: 尚文産商堂
第二章第七節第二款 賃貸借の効力
1065/1107

閑話20「遺贈」

「ねえ、ちゃんと聞いておこうと思うんだけど…」

「ん?なんだい」

彼女からの質問を受け、俺は一旦六法を閉じる。

「遺贈って、結局何なの?」

「遺贈か。じゃあ、まとめて説明をしておこうか」

それから、俺は辞書を持ってきて、彼女へと説明をする。

「遺贈というのは、遺言をして被相続人の財産を相続人や相続人以外、もしくは法人に無償で譲るという行為のことなんだ。そして、受け取る側の人を受遺者というんだ。そして、さらに、遺贈を履行する義務は、相続人が負うことになっていて、これを遺贈義務者という。また、包括受遺者も、遺贈を履行する義務があるんだ。さて、受遺というのは、包括遺贈、特定遺贈、負担付き遺贈の3種類がある。包括遺贈は全体を割合などにして遺贈するという行為のことを、特定遺贈は遺産のうち指定された財産を遺贈するということを、負担付き遺贈というのは遺贈者が受遺者にある一定の義務を負担することを条件とする遺贈のことをいうんだ」

「なるほど、なるほど」

うんうんとうなづきながら、なにやらメモをしている。

「包括遺贈というのは、例えば、遺言者甲が受遺者乙に対して遺産の3割を渡すという遺贈をするような場合。特定遺贈というのは、例えば、遺言者甲が受遺者乙に対して車を遺贈すると言っているような場合。そして負担付き遺贈というのは、例えば、遺言者甲が受遺者乙に対して遺産の3割を渡すが、甲の妻丙の世話を死ぬまで見ることというような場合だね。負担付き遺贈の場合は、さらに遺贈の目的の価額を超えない限り、負担している義務を履行するという義務が課されるんだ。ちなみに、これまで民法を見てきたように、包括遺贈の場合は通常の相続人と同一の権利義務が課されるんだ」

ここで、一応確認をするために棚から辞書を取り出す。

「さて、特定遺贈と包括遺贈の差はそれだけではなくて、お金や土地のような積極財産だけを承継することになる特定遺贈に対して、借金のような消極財産と積極財産を一緒に承継することになるのが包括遺贈なんだ。」

「ふむふむ」

相変わらず彼女は、俺の説明を聞き続けている。

「但し、包括遺贈は相続人とは区別されていて、相続人に法人は成ることができないけども包括受遺者にはなれるんだ。さらに、遺留分や代襲相続というのは包括受遺者には認められていないんだ」

彼女がメモを取り終わるのを確認してから、俺はさらに話を続ける。

「さて、ここまでは規定された話なんだけど、規定外の遺贈もあるんだ。例としては、後継ぎ遺贈と呼ばれるものだね。判例によれば、後継ぎ遺贈といわれるのは『一次受遺者の遺贈利益が、第二次受遺者の生存中に第一次受遺者が死亡することを停止条件として第二次受遺者に移転する』という遺贈の形態を指すとされているんだ。そして、同一の判例によって、遺言の解釈というのは、形式的のみに判断するのではなく、遺言者の真意を調べなければならないということになっているわけ。遺贈というのは遺言による贈与だから、遺言者の考えている通りに遺贈も行わなければならないということだね」

「なるほどねぇ」

「分かったかな?」

「うん、大体は」

「じゃあ次に行こう。ラストスパート、頑張っていこう」

俺はそう言って、辞書を棚に戻してから、六法を再び開けた。

今度は、遺言の執行からとなる。


[著者注:遺贈に関して、以下のサイトを参考としました。

遺言完全ガイド:知識のすべて

http://www.ac-yuigon.jp/information/index.html

Wikipedia:遺贈

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%BA%E8%B4%88

裁判所判例検索システム:事件番号昭和55()973;集民第138号277頁

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=66874

]

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