民法とは
弁護士である俺は、幼馴染の娘をよく預かることがあった。
昔からよく一緒にいたもんだから、彼女も俺のことを兄ぐらいに思っているようだ。
そんな彼女も今は法学部の2回生になった。
法律家としては、うれしい限りだが、しょっちゅう質問に来ている。
大学のほかの授業が心配になるぐらいだ。
今日も、そんな彼女が質問に来た。
いつものように俺が使っている机のそばに、キャスター付きの椅子を持ってきて、何も言わずに本題へ入る。
「民法について、教えてほしいんだけど」
「今回は民法か。どの範囲だ?」
「えっと…全部」
俺は一瞬倒れそうになった。
「全部って、お前どれだけあるか知ってるか?」
「知ってるよ1044条[2010年7月1日時点]まででしょ?」
基礎知識だが、一応聞いておいた。
「じゃあ、民法っていうのは、どんなものか。言ってみ」
「民法は、私法の一般法で、第1編総則、第2編物権、第3編債権、第4編親族、第5編相続に分かれてるんでしょ。で、パンデクテン方式で描かれているから、共通しているものが総則として一番前に置かれていて、それぞれの編の中にも、第1章が総則とされて、それが各編の共通事項、そのあとに具体的なものがずらーっと書かれているんでしょ」
自信満々に答えた。
俺は、そんな彼女にさらに聞いてみた。
「じゃあ、日本民法の歴史、明治期以降のものを簡単でいいから言ってみて」
「えっと…」
彼女は必死に思い出そうとしているようだ。
「確か、元々はフランスから来たボアソナードさんが作った旧民法を公布して、施行しようとしたらいろいろとややこしい論争があって、そのために結局施行されたかったんだよね。それで、次はドイツ式の人たちが集まって今の民法の基礎を作って、明治29年に公布、31年に施行されたもの。それで、その後は大規模な改正を何回か経て、今の形になっていると」
「まあ、そんなところだね」
俺は、そこまで言ってから、次を聞いた。
「で、民法のどんなところが分からないんだ」
「なんだか抽象論みたいで、つかみ所がないって言うか…」
俺は一筋の溜息をついて、言った。
「じゃあ、例題をあげていろいろ説明をしていけば、何とかなるか?」
「それだったらいけるかも…でも、どれだけ時間かかるかな」
「さあな」
俺は、机の棚から六法全書を取り出し、民法のところを開けた。
「じゃあ、それぞれのものに合っているだろうという事例を、この場で勝手に作っていくからな。説明とかは大学で受けると思うから、必要なもの以外は全部省くからな」
「分かった」
彼女にそういってから、俺は説明を始めた。