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昭和の話  作者: 朝倉一二三


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10/59

その10 東京タワー


 昭和◯◯年◯月◯日


 TVを観ると、東京タワーが映っている。

 カメラがアップになる――タワーの脚の部分にへばりついている男。


 当時名物だった、東京タワー男だ。

 若い人は当然知らないだろうが、当時はたまにあったイベントだった。


 タワーにしがみついてなにをするのかといえば――「逃げた女房を連れてこい!」みたいな、しょうもない話。

 こち亀の中でもネタにされていて、若い人が「親に車を買わせろ!」みたいなことを叫んでいた。

 もちろんギャグなので、こういう要求をしてたやつがいたわけでもない。


 東京タワーを警察、TV局、野次馬がなん重にもとり囲み、ワイワイとやっているのが中継されている。

 江戸っ子にとっては祭りみたいなものだ。


 説得のために、田舎から犯人のオカンが呼ばれて拡声器でなにか叫んでいる。


「◯◯男~! こないなことは止めてけれ~!」「お前のお母さんは泣いているぞ~!」

 まるでギャグなのだが、これが本当に行われていたという昭和。

 東京タワー男だけではなく、立てこもり事件などでも、よく両親を連れてきての説得というパターンが多かった。


 アニメや漫画のシーンでも、そういうシーンが定番のように出てきたが、やっぱりTV放送で流されたシーンの影響があるものと思われる。


 そんな大騒ぎになった東京タワーだが、当然逃げた女房が出てきたこともない。

 半日ぐらい鉄骨にしがみついて、暗くなったら、寒くて降りたとか、小便が我慢しきれず降りた――みたいな、つまらん終わり方。

 面白がっていた見物客も、バラバラと帰っていく。


 TVで全国中継するから、模倣犯が出るんだよ。

 鉄骨にしがみついても上手くいかないとわかったから、東京タワー男はいつの間にかいなくなった。


 まぁ、そんなのあたり前田のクラッカーだよな。



 昭和◯◯年◯月◯日


 TVに物騒なニュースが流れる。

 東京の電話ボックスの中に置いてあった、瓶コーラを飲んだ人が亡くなったというニュースだ。

 コーラからは、青酸カリが検出されたという。


 野犬駆除に使う毒饅頭が撒かれてた時期なので、落ちているものを食うなと徹底されていたのだが、東京では違ったのだろうか?

 親からは、再度「落ちているものは口にするな!」と厳命された。


 そのあとも、自販機に缶コーラが残っていて、それを口にした~みたいな事件もあった。

 たしか、どちらも犯人は捕まっていなかったはず。


「どくいりきけんたべたらしぬで」のグリコ森永事件もあったな~。

 なぜか、◯ッ◯だけは、被害にあわないやつな。

 なんでやろうな~。

 不思議やな~。


 ――と、こどもの頃も思ってました。


 身代金の受け渡しで、警察が初動にミスって犯人をあと1歩のところで取り逃がしたんだよね~。

 その頃から、子どもの誘拐事件の話も聞かなくなりました。


 やっぱり成功率が低いし、割に合わないと思われるようになったのではないか。

 海外じゃ普通にあるみたいだけどね~。


 日本の治安が悪化すると、また誘拐などの事件も増えるかもしれない。


 

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― 新着の感想 ―
グリコ森永事件は、身代金目的じゃなくて株価操縦目的。実際、株の売買で犯人グループは大儲けした。だから非上場企業のロッテは標的にならなかった。ってキツネ目の男が言っていた。
オロナミンCも毒入り事件があり、それでキャップが再利用できないように変わったんですよね
逃げた女房に帰ってこいよと呼び掛ける旦那と それを見て号泣する司会者か売りのテレビ番組もありました 今だったら逃げられる奴が悪いと冷笑されるか炎上して終わりでしょうね
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