表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ウミガメの鳴き声

作者: スケキヨ
掲載日:2026/02/23

 中学生の頃、家がBSとかCSとか、そういうのに加入している子が居て、その子の家でよくディスカバリーチャンネルを見ていた。


 好きだったのは『ミスバスターズ』だ。


 おっさん達と時々きれいな女の人が、「水上を走れるか」「ミッキーマウスの蒸気船を再現」とか、とんでもなく阿呆な事を莫大な予算をもってして、大規模かつ真剣に科学的に検証するのがとにかくおもしろかった。


 ある日の事、同級生のAが「自分も見てみたい」と言ってその子の家に来た。


 その日の上映会で見たのは「映画やドラマで出てくるガンアクションの検証」だった。


 『冒険野郎マクガイバー』で、マクガイバーが檻に閉じ込められた男の子を助けるために、銃弾から火薬を取り出し、その上に銃床を叩きつけ、火花で南京錠を開けるシーンがある。


 鍵を撃ったら普通に開いたのは笑った。


 銃を持ってひたすら机を叩き続ける映像もシュールすぎてみんなで笑った。


 問題はその後起きた。


 射撃訓練場で実銃を撃つシーンで、軍人のような人がハンドガンを撃った瞬間、Aがビクッとして硬直した。


 最初は音に驚いたのだと思った。


 からかってやろうと横を見ると、こわばって蒼白になったAの表情に何も言えなくなってしまった。

 

 その後、サイレンサーを装着した銃の射撃映像が続いた。映画では「ピシュッ」みたいな音がするのに、本当の音は全然違って、だいぶ大きな音がした。


 爆発する音だ。

 銃って思っていたよりもずっとうるさいんだな、と思いながらもう一度Aを見ると、今にも気を失いそうなぐらい具合が悪そうで、まわりのみんなも心配しだした。


 ひとりで帰ろうとするAが心配で、家の方向が近い何人かでAを送った。


 Aは不思議な事を言った。


「ウミガメのスープを飲んだ人は、きっとこんな気持ちだったんだと思う」




 10年後、仕事先でたまたまBに出会った。Aと同地区出身の同級生だ。


 Aについて聞くと、Bは表情を曇らせた。


「子供の頃、変なルールがあった。


 ポストに回覧板があったらすぐに持ってこないといけない。でも絶対に中身を見たらいけないんだ。

 

 一度、うっかり落とした回覧板が開いて、中が見えた事がある。

 

 名前がびっしり書いてあった。名前の横には数字が書いてあった。

 

 すぐに閉じたから全員の名前は見ていないけど、知ってる人が何人か居た。


 近所に住んでる酒飲みのおっさんとか、名前だけ知ってる、三軒隣の、徘徊癖のあるおばあさんとか。


 なんでかは分からないけど、見なきゃよかったって思った。


 実家のあったところではさ、年に一回だったり、月に一回だったり、本当に気が付くといつの間にか、って言う感じで、いつとはっきりは決まってはいないんだけど、夜になると、ドォンとか、バァンみたいな音が、何回か鳴る事があった。


 母親は、近所の悪ガキが爆竹で遊んでる音だって言ってた。


 子どもってさあ、ぜんぜん、大人が思うほどには、バカじゃないじゃん。なんか、よくわからないけど、今でも全然わからないけど、


 とにかくめちゃくちゃバイトして、家出て、家族とは音信不通。Aの事も知らない」


 Aはうつむいて、「あの地区で子どもなんて、俺とAぐらいだったのにな」とつぶやいた。


読んでくださってありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ