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遠目に、黒い巨躯の牛が見えた。爆発牛だ。
黒馬の雷魔法で、先手必勝とばかりに攻撃を仕掛ける。
放たれた紫電は的確に標的を射抜き、絶命させた。
俺がこのダンジョンに来た目的は、この二階層での金策、そして階位昇格だ。
一層と違い霧が晴れているため、より遠くの魔物まで発見することが可能だ。
それは魔物側も同じで、向こうからもこちらが見つかりやすく、戦闘が避けられなくなっている。
だが、黒馬の射程はこの階層のどの魔物よりも長い。
俺にとっては一方的に攻撃できる絶好の狩り場だ。
俺は近くの枯れ木をゴブリンに集めさせ、焚き火を起こした。
毒山蛙は殺しても体液が猛毒のため、ゴブリンには剥ぎ取りに行かせず放置する。
魔法耐性を持つ泥人形が接近してくることもあるが、接近戦も黒馬の独壇場だ。
その桁外れの膂力で蹴り飛ばせば、泥人形は木端のように吹き飛んでいく。
――時刻はおよそ17時を超えた所。
当初の予定より大幅な短縮ペースで、ついに「第二階位」への昇格を果たした。
昇格を果たしてもなお、手元には魔石が40個ほど余っている状態だ。
第二階位への昇格と言っても俺の特性上、身体能力の向上は一切ない。
肉体的な実感は皆無だ。
だが、スロットが一つ増えた。
これで「黒馬の召喚魔法」以外にも、もう一つ遺物の効果を抽出して装備できる。
遺物はあれから追加でもう一つ出た。
媒体は大ぶりな斧。
効果は火魔法「火球」だった。
一般的には当たりだが、自分にとってはハズレだ。
火魔法を抽出してスロットへ入れても良いが、攻撃手段なら黒馬で事足りている。
特性で補正がかからない並レベルの攻撃魔法は、今急いでスロットを埋めてまで欲しいものではない。
自分の身体能力が著しく低いこと。
これは今後のダンジョン攻略において、最も考慮すべき弱点だ。
この先、「やばい」と思った時に身一つで逃げることが出来ないのだから。
行動の制限や、足手まといになることによるパーティーの拒絶。デメリットは多い。
だが、そこまで悲観するのはもう辞めた。
例えば「変身魔法」で鳥獣型になれる遺物があれば、空を飛んで逃げる事だって出来る。
他にも解決策となる魔法はあるはずだ。
貴重な遺物ほど市場には出回らないが、自分で取得するなら可能性はある。
希望は見えている。
第二階位への昇格という当初の目的を達成した俺は、夕闇の迫る東山ダンジョンを後にした。




