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只人の『召喚魔法』運用法  作者: 上昇線


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4

最初に接敵したのはクロコブラだった。

人一人を丸呑み出来そうな太い胴体。鎌首をもたげ、爬虫類特有の冷たい瞳で見下ろしてくる。その思考は全く読めない。


黒馬は俺を一瞥すると、全身にバチバチと雷を帯電させた。

「殺せ」

短い命令と共に放たれた紫電は、一瞬でクロコブラを貫いた。巨体が痙攣し、どうと地面に伏す。

念のためにもう一発叩き込んだが、最初の一撃ですでに絶命していた。

死体に近づくと魔石の気配を感じる。ゴブリンよりも皮が厚く解体に手間取ったが、出てきたのは親指の第一関節ほどの大きさの石だった。

ゴブリンのそれとは輝きが違う。俺は迷わず自己強化に使用した。


近くの手頃な岩に腰を下ろす。

登った距離はおよそ1キロ弱。だが慣れない山道と緊張感で、鉛のように足が重い。

身体能力が上がっていない今の俺には、ただの移動ですら試練だ。

背嚢からペットボトルの水を取り出し、一気に流し込む。


召喚生物には疲労がない。俺が息を整えている間も、黒馬は彫像のように動かず、周囲への警戒を続けている。


その時、静寂が破られた。

――火火猿だ。

耳障りな鳴き声が霧の奥から響く。俺は慌てて荷物を背嚢に押し込んだ。

「見つけ次第殺せ!」

指示と同時、黒馬の全身がスパークする。

視界を覆う薄い霧の向こう、ぼんやりと赤く発光したかと思うと、火球が飛来してすぐ脇の地面を抉った。


熱風と爆発音。咄嗟に腕で顔を覆う。

狙いが甘い。向こうも霧でこちらを視認出来ていないのだ。


黒馬を見ると、心得たと言わんばかりに炎の飛来源へ稲光を撃ち返した。

「ギャッ!」という甲高い悲鳴。

一匹やった。だが、数は?

わからない。

四方八方から次々と飛来する炎。俺は黒馬の巨体を盾にするように駆け回るしかなかった。


雷鳴が轟くたびに、猿の悲鳴が上がり、気配が消えていく。

黒馬は完璧だ。自分への攻撃すら雷撃で相殺し、一方的に敵を減らしていく。


時間にしておよそ2分。戦闘は終わった。

移動距離は30メートルにも満たない。だが心臓は早鐘を打ち、喉はカラカラだ。

焼け焦げて穴だらけになった地面を見渡し、大きく息を吐く。

俺自身は何もしていない。だが、あの一撃を貰えば俺の体など容易く炭になっていただろう。

死と隣り合わせの暴力的な世界。

だが、恐怖よりも先に立ったのは、奇妙な高揚感だった。これこそが、俺が憧れた場所だ。


火火猿は20匹近く転がっていた。

黒焦げの死体から一つずつ魔石を剥ぎ取り、吸収していく。


その作業中、幸運にも「遺物」を見つけた。

――遺物。

ダンジョンが生み出す、理外の効果を持った宝。

宝箱や直置きなど出現形式は様々だが、今回はこれだ。


火火猿の死体のそばに、重力を無視してふわりと浮く、黒い球体。

空間に空いた穴のような、不気味で魅力的な球体。これこそが遺物の器だ。


俺は黒い球体に手を伸ばし、中にある「実体」を掴み取った。

――現れたのは、一振りの長剣だった。


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