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只人の『召喚魔法』運用法  作者: 上昇線


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「喜んでくれたようで何よりです。ミルさんも喜ぶでしょう」

家長は瞳を細め対面の席に腰を下ろした。


俺は指輪を指に嵌め感触を確かめる。

遺物と巨大な魔石。

これで話は終わりだと思っていたが、どうやら違うらしい。

家長の視線はまだ俺を観察している。


困惑顔で家長と目が合う。

彼は何も言わない。

沈黙に耐えかねて俺はテーブルの上の魔石へと手を伸ばした。


「待ってください」


驚いて手を引っ込める。

何事かと再び家長へ目を向ける。

彼は真剣な表情でその赤黒く輝く結晶体を見つめていた。


「私はAランクダンジョンの魔石を目の前で見たのはこれが2度目です。普通に生きていればまずお目にかかれない。価値がある貴重な魔石です」


「……といいますと?」


「強化……に使用しようとしていませんか?」


強化。

すなわち魔石や遺物を用いて自身の階位を昇格させる行動。

探索者なら誰もが渇望する力への近道だ。

だが俺はダンジョン内でルカの体内から摘出した魔石を既に吸収している。

既に()()()()であるため、特に使い道を決めかねていた。

このままだと強化に使用しただろうが……。


この巨大な魔石を使えば第五階位すら視野に入るかもしれない。


「いえ……今はまだ使用予定は考えていません」

俺は平静に答える。


家長は一つ頷くとスッと封筒を机へ滑らせてきた。

上質な和紙のような手触りの封筒だ。


「公表されていませんが、特定の管理所では秘密裏にもう一つダンジョンを運営している場合があります」


「……?」


「聞いた事はありませんか? ……人語を喋る魔物を」


心臓が跳ねる。

すぐに脳裏に浮かんだのは、あの金山ダンジョンで出会った半魚人だ。

デラボネア。

命の恩人とも言える奇妙な魔物。

見た目こそ人間と乖離しているが、その知性と癖のある喋り方からは害意を感じなかった。

魔物でありながら人間と意思疎通が可能な存在。


「聞いた事はあるようですね。――私はアキさんを推薦し紹介状を書きました」


一呼吸おき家長は続ける。

「特殊なダンジョンです。そこでは魔物と『取引』を行えます。何の遺物でも、と言う事ではないようですが、アキさん自身の単純な階位昇格に使うよりも有益な使い道があると思います。取引ではそのような貴重な魔石を使用しますので」


差し出された封筒。

そこに記された場所へ行き然るべき手続きを行えば、デラボネアのような知性ある魔物に出会えるという。

手持ちの遺物をさらに強化できるチャンス。

俺の戦力は召喚獣に依存している。

自身の階位を上げるよりも、手札の強化の方が実質的に強化される。


「ありがとうございます。向かってみます」

俺は二つ返事で礼を言い席を立った。


電車に揺られる事1時間ほど。

都心から離れたベッドタウン。

指定されたダンジョン管理所はごくありふれた外観で、一般開放もしており探索者が出入りしていた。

だが受付で家長の名前が入った封筒を渡すと空気が変わった。

怪訝な顔をしていた受付嬢が顔色を変え、奥の応接室へと俺を通す。


そこで機密書類としての誓約書にサインをさせられた。

他言無用。

内部での出来事は一切口外しないこと。

厳重なチェックの後、通された会議室の扉を開ける。

そこには部屋の中央にぽっかりと浮かぶ、半透明の膜が揺らめいていた。


意を決して足を踏み入れる。

視界が反転し、次の瞬間には甘い香りに包まれた。


「これは……」


桜だ。

満開の桜が咲き誇る並木道。

足元にはピンク色の花弁が絨毯のように敷き詰められている。

空は晴れ渡り、穏やかな春の陽気が降り注いでいる。

今まで潜ってきた湿っぽい洞窟や血なまぐさい遺跡とは対極にある、天国のような光景。


道は平坦で魔物の気配はない。

そもそも誓約書には「攻撃禁止」の条項があった。

俺は桜並木を進む。

風が吹くたびに花吹雪が舞う。

しばらく歩くと、風景に似つかわしい古風な茅葺きの小屋が見えてきた。


その時だ。

クイクイ、とズボンの裾を引っ張られる感触。


「久しぶりの人間だね」


足元から声がした。

幼い、少女の声だ。

驚いて振り返る。

そこにいたのは編み笠を被った小さい子供だった。

身長は俺の腰ほどもない。

顔は笠に隠れて見えないが人間の子供のように二足歩行をしている。


「驚かしてすまないね」


前方から別の声。

茅葺き小屋の方から砂利を踏む足音が近づいてくる。

俺は子供から視線を外し、声の主へと向き直る。

背の高い男性の声。

スラリと伸びた手足に仕立ての良い着流しを纏っている。

俺は自然と見上げる形になる。


「ようこそ」


男が笠を上げる。

同時に足元の子供も顔を上げた。


黄色くまん丸な顔。

つぶらな瞳にオレンジ色の嘴。

柔らかそうな羽毛。


ヒヨコだった。

どう見てもあのヒヨコだ。

男の方はそのヒヨコヘッドがモデル体型の人間の首から上に乗っかっている。

子供の方も同じだ。

ヒヨコの顔をした女児。


お目当ての魔物で間違いないだろう。


「ここでは魔石で遺物を強くしてあげれるよ。ただしユニーク遺物のみだけどね」

足元の女の子が言った。

嘴が器用に動いている。


「ユニーク遺物?」


「そう、ユニーク。君が持ってるおもちゃ、そのデカい魔石と共に見せてみ?」


言われるがまま、俺は装備している遺物を突き出すように見せていく。

レンから入手した巨大魔石。

錆びたナイフ。

泥人形のアンクレット。

森林狼の指輪。

蝕燐竜の指輪。

そして黒兵士の指輪と、黒石の巨人の腕輪。


ヒヨコの女の子は小さい指でそれらを摘み上げ、嘴を近づけて鑑定していく。

「これも違う、あれも違う……お、竜か。いいモン持ってるね。でもこれじゃない」


彼女は次々と遺物を弾いていく。

ドラゴンの指輪すら対象外らしい。

そして最終的に、彼女の短い指が二つの黒い金属を指差した。


「この黒い指輪と、腕輪だけだね」


【媒体:指輪】

効果:666秒間、武装した骨の兵士を5体召喚する。


【媒体:腕輪】

効果:666秒間、黒石の巨人を1体召喚する。


「適合するのはこの子達だ。さあ、どうする? そのデカい魔石を貰えれば強化してあげるよ」

つぶらな瞳で俺を見上げて、ニヤリと笑った気がした。


俺は背の高い男性の方もチラリと見て一言添える。

「お願いします」


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― 新着の感想 ―
正直今回の話は何が書きたかったのか良く分からなかったです。 突然のホラー感?ある話で普通に困惑するし、出てきた敵の能力が普通に無法すぎてえぇ、、、て感じ。自分を殺した、もしくは死んだ時に近い生物に寄生…
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