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その後も見つけたゴブリンは瞬殺だった。
魔法で焼き払い、時には黒馬を向かわせて肉弾戦で蹂躙した。
魔物の体内には魔石がある。
それが探索者の唯一の収入源であり、己を強化する糧でもある。
魔石を手に持ち、念じれば光の粒子となって体内に吸収される。それを繰り返すことで「器」を満たし、階位を上げていく。
試しに一つ使用してみたが、手応えは皆無だった。
感覚的に、第二階位への昇格は遥か彼方だ。コップの水滴一滴分も溜まっていない気がする。
やはり、「遺物」を吸収しないと効率が悪いし、そもそもゴブリン程度の魔石では含有量が少なすぎるのだ。
初日の戦果。
ゴブリンを40匹殺し、魔石を3つ摂取。残りをダンジョン管理所で換金した。
買取価格は一つ50円。37個売って、計1,850円。
命を懸けた対価がこれだ。
だが文句は言えない。今の俺には貯金がないのだから。
その日のうちに家に帰り、俺はPCや金になりそうな家財を全て売り払った。
第一階位の探索者に儲けなどない。
悠長に構えている時間も金もない俺は、黒馬の強さが想定外だった事を受けて、当初の予定を前倒しすることにした。
ターゲットは「東山ダンジョン」。
第二階位以上が推奨される、険しい山岳タイプのダンジョンだ。
翌朝。
缶詰や簡素なナイフを詰めた背嚢を背負い、登山服で管理所へ向かった。
「当ダンジョンは第二階位からを推奨しています。」
受付でしつこく警告されたが、俺は構わずゲートを潜った。
俺だって安全圏でゆっくり強くなりたかった。だが、金がない。明日食う飯のために、リスクを背負うしかない。
ダンジョン内は足場が悪く、雲とも霧ともつかない薄いモヤが視界を遮っている。
どこか遠くで、ガーガーと耳障りな魔物の鳴き声が響いていた。
これが第一層。ここから頂上を目指して登っていく。
黒馬を召喚し、その巨体に隠れるように慎重に進む。
時刻は午前9時。
どうやら今日の入場者は俺一人だけのようだ。管理所の規模からも察していたが、完全な過疎ダンジョンらしい。
俺は調べ物は好きだ。
探索者になるのが夢だった。有名な探索者や魔物、ダンジョンの特性や豆知識のストックなら、そこらのプロよりあるつもりだ。
この東山ダンジョン一層の出現魔物は主に3種類。
猛毒を持つ大蛇、クロコブラ。
火魔法を操る猿、火火猿。
そしてハゲタカのような怪鳥、ガマグドリ。
警戒すべきは火火猿だ。
知能が高く、徒党を組むこともある。今の俺の身体能力では遭遇したが最後、逃げ切ることは不可能だ。
クロコブラは速度がない。ガマグドリは好戦的ではない。
だが、火火猿だけは詰む可能性がある。
それでも来たのは、勝算があるからだ。
俺の身体能力では無理でも、第三階位相当の黒馬なら殺せる。




