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只人の『召喚魔法』運用法  作者: 上昇線


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短い休息を終え遺跡の暗がりへと足を踏み入れる。

翡翠のメンバーやミルによれば最奥にボスは不在だったという。

その言葉を信じるならば目指すは出口の手がかりのみだ。


外観からある程度の規模は予測していたが内部は想像を絶する広さだった。

地下へと深く潜り込んでいく構造らしく天井が見えないほどの空間が広がっている。

暗所特有の燐光現象もここでは過剰なほど強く、石壁そのものが発光しているかのように視界は明るい。


環境の変化に伴い出現する魔物の生態系も一変した。

湿気を好む毒蟲や石材に擬態したゴーレムが頻繁に現れる。

毒荊棘虫や毒山蛙といった厄介な状態異常持ちも増えたが、最大の脅威は「ラディアント」と呼ばれる巨人だ。


通路を塞ぐように現れたその巨躯は3メートルを超える。

岩のような筋肉に覆われた体には四本の太い腕が生えており、それぞれが丸太のような棍棒や石塊を握りしめていた。

第四階位の魔物。

単純な殴り合いなら重戦車に轢かれるに等しい。


「任せろ!」

レンが前に出る。

ラディアントが四本の腕を振り上げ暴風のような連撃を叩き込む。

だがレンは正面から受け止めない。

紙一重で石の拳を躱し、流れるような動作で懐へと潜り込む。

銀閃が走る。

硬質な皮膚を切り裂く嫌な音が響き、巨人の膝から力が抜けた。

関節への正確無比な斬撃。

体勢を崩した巨人の首へ、追撃の刃が吸い込まれる。


ズン、と地響きを立てて巨人が沈黙した。

ソロとなった今でも一対一なら危なげない完勝だ。


俺は冷静に彼を分析する。

今までの戦闘においてレンは魔法遺物や変身遺物を使用していない。

純粋な剣技と身体能力で戦う近接特化型。

あるいは奥の手を隠している可能性も高いが、現状見えている手札だけで判断しても脅威だ。


もし「混ざった魔物」がレンだと仮定したら。

俺の手持ち戦力で勝てるだろうか?

物量で押し切れるか、それとも懐に入られ首を飛ばされるのが先か。

底を見せないレン。

怯えるだけのルカ。

静観を貫くミル。

誰が敵かわからない状況で、俺は答えの出ない自問自答を繰り返すしかない。


魔物の階位が上がり、レンの提案で進軍速度を落とした。

慎重に進むことおよそ四時間。

未だ最奥には辿り着けない。


疲労の色が見え始めた頃、手頃な石造りの小部屋を見つけた。

扉があり防衛に適している。

「今日はここで休もう。ルカ、頼めるか?」

レンの指示にルカが小さく頷く。

彼女が懐から取り出した遺物が淡い光を放ち、部屋の入り口に薄い膜を張った。

虫系の魔物が嫌がる臭気または波長を出す結界遺物らしい。

サポート役としては優秀だ。


遺跡の中で野営の準備をする。

焚き火を囲み、レン達から分け与えられた非常食を口にする。

味気ない固形食だがカロリーは摂取できる。


揺らめく炎の向こうで、レンとルカが身を寄せ合っている。

それをミルが影からじっと見つめ、俺はさらにその全体を警戒する。


最奥まであと少し。

出口への手掛かりか、それとも絶望か。

明日には全てが判明するはずだ。


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