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只人の『召喚魔法』運用法  作者: 上昇線


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2

電車に揺られ、ダンジョン管理所へと到着した。

探索者としての登録は、18歳の時にすでに済ませてある。


どこのダンジョンでも、第一層に出現するのは弱い魔物だと相場が決まっている。

透明な膜のようなゲートを潜る。視界が開けると、そこは勾配のきつい草原だった。所々に墓石のようなオブジェが点在している。


召喚魔法を行使するのは初めてだったが、落ち着いて念じると、問題なく魔物が実体化した。

……だが、目の前に現れたのは、商品説明にあったような愛らしいポニーではない。さらに二回りほど巨大化した、漆黒の馬だった。

茶色の長い(たてがみ)をなびかせ、幼さなど微塵も感じさせない筋骨隆々の巨躯。

その蹄で人を踏み潰せそうなほどの迫力だ。

あまりの威容に、召喚した俺自身が固まってしまった。


黒馬は俺に対し、恭しく頭を下げて指示を待っている。


「……魔物がいたら教えてくれ」

そう短く指示を出し、俺は歩き出した。


特性のことは考慮していたつもりだ。「召喚生物の階位が一つ上がる」。

頭では理解していたが、生物としての「格」にここまで強く影響が出るとは予想外だった。


最初に見つけたのは、緑の皮膚を持つ子供の背丈ほどの魔物、ゴブリンだ。

三匹の群れが、急勾配の小山を登っていく後ろ姿が見える。

「……殺せ」

端的に黒馬へ指示を出す。


ブルル、と荒い鼻息と共に、黒馬の全身がバチバチと帯電した。

「雷魔法か!」と認識した瞬間、放たれた一筋の稲光によって、三匹のゴブリンは瞬く間に倒れ伏していた。


――速い。瞬殺だった。

距離にして50メートルはある。てっきり駆け寄って蹴り殺すものとばかり思っていたが、魔法の射程圏内だったようだ。

「よくやった」と首筋を撫でてやる。


「第三階位を超えれば、人の枠組みを超える」それがこの世界の通説だ。

探索者はまず第三階位を目指し、そこへ至ってようやく一人前のプロとして認められる。

この召喚生物の元々の強さは、おそらく第二階位相当。それが俺の特性によって第三階位へ引き上げられているのだ。


あの稲光を浴びれば、俺もあいつらと同じように一瞬で死ぬだろう。


ダンジョンでの初勝利。

けれど、成功の喜びは薄かった。

死んだゴブリンの姿が、無力な自分と重なって見えてしまい、心の底から喜ぶことはできなかった。


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