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只人の『召喚魔法』運用法  作者: 上昇線


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拠点へ戻り手頃な枝にニジマスを突き刺す。

ゴアデビルに火種を頼み焚き火で炙っておく。

食料確保は優先事項だ。

魔物を大量に殺して以降新しい湧きはない。

魔物の死体は朽ちてダンジョンに吸収される。

森林型という環境も幸いし飲み水や食料には困らないだろう。


焼き上がりを待つ間ゴブリン達の様子を見に行く。

不定形の泥人形が土壁に取り付き溶かすように掘削しゴブリンが排土をかき集めていた。


少し屈んで中に入ると洞穴は予想以上に広い。

作業開始から1時間足らずでここまで拡張するとは。

中は暗いが金山ダンジョン5階層と同じく光源なしでも仄かに明るい。

ダンジョン内部特有の現象である。

広さは8畳ほどか。人間一人が横になるには十分だ。

入り口がゴブリンサイズで狭いためもう少し拡張するよう指示を飛ばす。

内部の壁面は泥人形が行ってくれたのかツルツルと硬質化されており床も平坦だ。


簡易拠点としては上出来だろう。


背嚢を下ろし残り少ないペットボトルを片手に外へ出る。

黒兵士は召喚時間の666秒を過ぎ自動回収されていた。

伐採された木材は森林狼が運び終えている。


俺はゴブリンに指示し木材で入り口付近にバリケードを作らせる。

簡素だが無いよりマシだ。


焼き上がったニジマスを齧る。

皮はパリッと焦げ目がつき身は驚くほどふっくらしている。

塩気はないが川魚特有の泥臭さは皆無だ。

噛むたびに溢れる脂の甘みと香ばしさが疲労した体に染み渡る。

完食し手元のペットボトルの水を飲む。


手持ちの水は飲みきり川の水を飲まざる得ないだろう。

本来なら煮沸すべきだが青龍達の荷物に鍋やコップは見当たらなかった。

俺の背嚢の準備も悪過ぎた。


悲鳴茸の後遺症か頭に鈍痛が残っている。

今はこのまま魚を腹に入れ洞穴で眠ろう。

目が覚めたら先へ進む。

出口は消えたが奥への道は続いているはずだ。


――手元には空になったペットボトル。

少し躊躇したがゴアデビルを連れ川へ向かう。

透き通った水をボトルに汲み意を決して飲んだ。

かつて見た配信者達もやっていたことだ。

迷宮ニジマスが生息できる水質なら毒はないだろう。


ただ彼らが飲んでいたのは安全が保障されたダンジョンでの話。

「指名依頼」レベルの未探索ダンジョンでやる人間はいなかったが。


仄かに空間が光る洞穴で背嚢を枕に横になる。

森林狼をそばに寝転がせて一緒に寝る。


入り口にはゴブリンを見張りとして立たせて泥人形がその体で空気穴以外の入り口を塞いでいる。


瞳をつぶれば、青龍達の死体が瞼の裏に貼り付く。

とくに無念そうなリーダーの顔は忘れないだろう。


つい先日まで、平和な日本で暮らして。

人間の死体を見るのは初めてだった。


魔物は殺して来た。

人型ならゴブリンやオークも殺した。

血も沢山見て来たが、落ち着いた今、人間の死体に俺は大きく動揺していたのだろう。


ため息を吐きながら、就寝する。


――――

眠気眼で俺は目覚めた。

枕元に置いてある背嚢から時計を確認するとおよそ6時間はぐっすり寝ていた。


外で音が聞こえる。

近くの森林狼は立ち上がり、入り口をじっと見つめて警戒していた。


俺を起こしたのは森林狼だろう。


外から複数人の声が聞こえた。

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