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只人の『召喚魔法』運用法  作者: 上昇線


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通常、召喚生物(召喚獣)に自我はないとされる。

しかし、元になった魔物の習性や戦闘本能など、遺物の術者が細かく指示を出していない部分については、自律的に補完して動く性質がある。

それは階位が高い召喚獣になればなるほど、より顕著だ。


召喚獣が裏切る事は決してない。

術者に意識がなく、例え命じられていなくとも、術者本人に危害が加えられそうな場合は、召喚獣は自主的に守るという研究データが存在する。


しかし、先程述べたように、元になった魔物の性質によって、命令の遂行プロセスには誤差が生じる。


――ゴアデビル。

第三階位の魔物。

金山ダンジョン5階層でアキと敵対した際、スケルトンの軍勢の隙間を縫うようにして狡猾にアキを追い詰めた魔物。

仲間を平然と囮にする非情さを持ち、人間や敵性生物に対しては嗜虐的な残酷さを持ちあわせている。

その生物がアキの特性により、第四階位相当へ昇格した召喚獣。

理解していただろう。自らが手を出せば、窮地に陥った青龍のパーティーを救えることを。


しかし、決して行わない。

――自我はない。しかし、本能によるものなのか、目の前で蹂躙され、死にゆく人間をただ眺め、口元を歪める。

まるでそうする事が、己の習性であるかのように。


近くで嘶く黒馬は、あくまで忠実な守護者として、他の魔物を主人に近づけないよう雷撃を温存し、結界のように周囲を警戒していた。


散発的に現れる魔物は、格の違う怪物を本能的に恐れて避ける。

行き場を失い溢れ出た魔物達は、ゴアデビルを避けるように迂回し、そして手頃な獲物である青龍へと殺到した。


――召喚獣は動かない。

主人に危険が及ぶ、その瞬間まで。


目の前の、助けられるはずの人を見殺しにする。

それが、主を守るための最適解だとでも言うように。


――――


体調が悪い。

鈍い頭痛と、硬い地面で寝ていたせいで身体の節々が痛む。

アキは周囲の轟音が止んでいる事に気がつくと、ゆっくりと上半身を起こした。

周りには黒馬が控え、ゴアデビルも直立している。

倒れた時に手から離れてしまったゴアデビルの遺物である杖を手元に戻し、それを支えにして立ち上がる。


辺りを見渡せば、魔物の死体が至る所に転がっていた。

何の音もしない。

不気味なほどの静寂。


俺は足を引きずりながら、ゆっくりとダンジョンの入り口へ歩く。


その途中に、引きちぎられた人の首が転がっていた。

頭が潰れたように抉られ、目を見開き恐怖と苦痛に歪んだ壮絶な表情を浮かべている。

――見覚えがあった。

つい先程言葉を交わした、この作戦のリーダーの成れの果てだ。


俺はこの男に実力不足を突き付けて、一人でやろうとしていた。

俺には、その実力があると思っていた。

だが結果はどうだ。

温存していた腕輪や指輪を使用するまでもなく、この貧弱な身体は悲鳴茸の音だけで気絶し、後はゴアデビルが魔物を片付けただけだ。


俺の意識があれば、救えた命だ。

どうしようもない状況での死なら、ここまで心に来る事はなかっただろう。

第三階位のパーティーだ、死ぬ覚悟などしてきていただろう。


しかし、救えたはずの命だ。

落とす必要のなかった命だと思うと、俺は無残な姿になった青龍達が憐れに思えてしまった。

俺は屈み込み、その壮絶な表情の男のまぶたを、そっと手で閉じてやった。


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