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只人の『召喚魔法』運用法  作者: 上昇線


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森の奥から吐き出される魔物の群れは、もはや悪夢の博覧会と化していた。


先陣を切って雪崩れ込んできたのは、磨き上げられた鋼鉄の様な甲殻を持つ銀アントだ。カチカチと硬質な顎を鳴らす音が、押し寄せる金属の波となって迫る。


黒馬が嘶く。全身から解き放たれた放射状の紫電が、銀色の絨毯を直撃した。金属質の体が災いし、雷撃は瞬時に群れ全体へと伝播。連鎖するスパークの中、数十匹の銀アントが断末魔すら上げられずに一斉に焼け焦げたスクラップへと変わった。


だが、息つく暇はない。左右の死角から新たな脅威が迫る。

樹木に擬態していた化け木樹(ばけもくじゅ)が、鞭のようにしなる太い枝を振り上げて襲い掛かる。後方の湿地からは死臭を漂わせるドス黒い粘液にまみれたネクロカエルが、膨れ上がった喉袋から腐食性の毒霧を吐き出そうとしていた。


「右の木と奥の蛙だ。火槍で潰せ」

上空のゴアデビルが無造作に長い腕を振るう。放たれた紅蓮の火槍が、化け木樹の幹を深々と貫き、内側から爆燃させた。人の悲鳴に似た木々の軋み音が響き渡る。同時に放たれた二発目が、ネクロカエルの口腔内に正確に着弾。体内で炸裂した炎が、毒霧ごと醜悪な蛙の頭部を吹き飛ばした。


オークの増援がまた顔を出したが、黒馬の広範囲雷撃と、デビルが放つ火槍が、森の出口を絶対的な死地へと変えていく。

しかし、森の奥から魔物はどんどんと溢れて出てくる。

数だけではない、魔物の種類が増えている。


チラリと背後の青龍に目を向け、顎でダンジョン入り口の方向を指し示す。

これ以上は守り切れない。

その一言が口に出ていたのかは分からないが、青龍のメンバーは悔しそうに顔を歪め、俺に背を向けて撤退を開始した。


やれるとこまではやる。

だが、第四階位の魔物が確認出来たら俺も撤退する。

そう決めて再度向き直す。


「龍光」

再び魔物の軍勢に向けて、魔法を放つ。

今度は直上からではない。

上空のゴアデビルを俺の横に戻して、正面からの全力攻撃。

不気味な顔を歪ませ、背筋を曲げた悪魔は手のひらを魔物へ向け、破壊の光を解き放つ。


その一撃は目の前の魔物を全て消し去り、再びこの戦場に一時の平穏をもたらす攻撃に違いなかった。


――違和感。

ふわりとした浮遊感の後に、気が付けば俺は地に倒れ伏していた。


何故? いつ攻撃を喰らった? どうなった?

溢れ出る疑問はすぐに解決出来ない。

口から地面へ、ドロリとした血を吐く。

頭が痛い。割れる様に痛い。

頭を抑えると、耳から血が出ている事にも気がつく。

ふらりと、視界がぼやける。


この症状には覚えがあった。

第三階位の魔物、悲鳴茸。

絶命時に呪いの音波を放つ魔物だ。

……群れの中に混じっていたのか。龍光で焼き払った際に、断末魔を撒き散らしたらしい。

同じ第三階位の身体能力なら、多少の不調で済む攻撃だ。

だが、第零階位相当の俺へのダメージは、ここまで致命的だった。


「俺を……守れ」

薄れゆく意識の中、そう最後に指示を出して、俺の世界は暗転した。


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