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ダンジョン入り口に近づくにつれて、激しい剣戟の音が聞こえてくる。
ダンジョンの入り口から扇状に広がって展開した今回の作戦。
俺の位置は右端。
そして中央付近の担当はたしか、パーティー「青龍」だった。
既に青龍の持ち場だと認識していた場所には激しい戦闘の跡しか残っておらず、戦線が大きく下がっているのが見て取れた。
彼らはダンジョン入り口の目前まで押し込まれている。
眼前に広がるのは、泥沼の消耗戦だ。
多勢に無勢。青龍のメンバーは円陣を組み、押し寄せる魔物の波に飲み込まれる寸前だった。
俺は杖を強く握り直し、上空を旋回するゴアデビルへ指示する。
悪魔が翼を広げて急上昇する。狙いは魔物の密集地帯、その中心点。
味方を巻き込まないギリギリの座標へ、真上から極大の熱線が撃ち下ろされた。
「龍光」
天から降り注ぐ紅蓮の顎が、地面ごと魔物の群れを食らい尽くす。
轟音と共に大地が揺れ、発生した凄まじい爆風が、周囲の魔物をも弾き飛ばした。
土煙の晴れた先には、巨大なクレーターだけが残る。
だが、まだ終わりではない。爆心地を逃れたオークや毒荊棘虫、そしてデカいトカゲのような魔物が、混乱しながらも生き残っている。
俺は黒馬を展開し、背後から挟撃の形を取る。
紫電が走り、火槍が唸る。
青龍の正面と、俺の背後。二方向からの飽和攻撃が、残存する魔物を確実に肉片へと変えていった。
肩で息をする青龍のメンバー達。
火力が足りず、ジリ貧の戦いを強いられていたのだろう。
息も絶え絶えで感謝を述べてくる。
「第三階位の魔物が複数出現しています。もう作戦も破綻してますよね、どうすればいいですか?」
俺は自分について来ていた3人の男達が、後方の安全圏へ退避していくのを尻目に、青龍へ今後の判断を投げかける。
この作戦の現場リーダーは彼だと言っていた。なら彼に聞くのが筋だろう。
「……ここで食い止める」
「実力不足では?」
この期に及んで無理を言う。
つい、強い言葉で否定してしまったが、事実だろう。
ムッとしたのか、青龍のリーダーである男は言い返してきた。
「龍光が使える様な、強力な魔物を召喚出来る遺物が俺達にないから……不可能だと言いたいのか?」
そう言われて、口を開こうとしたが――やめた。
議論する意味がないと思ったし、何よりまた背後から新たな魔物達が来たのを確認したからだ。
「龍光」は連発出来ない。
俺は杖を構え直し、再び火槍と雷撃で魔物を殺す作業に戻った。




