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只人の『召喚魔法』運用法  作者: 上昇線


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19

ゴアデビルが、オークと呼ばれる第三階位の魔物を火槍で貫いた時であった。


森の木々の奥、隣の陣地から雪崩れ込む様に3人の男が駆けてきた。

「――2人死んだ!!! 助けてくれ!!」

そう叫びながら、彼らは背後に魔物の群れを引き連れてくる。


座って水分補給をしていた俺は、ゆっくりと地面に置いてある背嚢へペットボトルをしまった。


第三階位の魔物が混じってきた時点で、こうなる未来は予想できた。

そして隣の陣地のこいつらが、戦闘音の少ない俺の所へ逃げて来るのも、想定内だ。


助けを求める男たちの背後から、木々をへし折ってオークの群れが現れる。

その足元には、無数の猛毒の棘を持つ毒荊棘虫が這い回っていた。

第三階位のオークが主力。そして足元には、近接戦を行うと非常に厄介な虫が10体強。


「黒馬はオークを。デビル、虫を焼き払え」

俺の指示に、二体の召喚獣が即座に反応する。


上空へ舞い上がったゴアデビルが、長い腕を蟲の群れへ向けた。掌から放たれたのは火槍。

着弾と同時に爆炎が広がる。毒荊棘虫の厄介な毒針も、硬い甲殻も、圧倒的な熱量には耐えられない。断末魔ごとかき消され、黒い灰となって風に舞った。


一方、地上では黒馬が嘶いた。

紫電を纏ったその体から、太い雷撃が奔る。

第三階位の肉体を持つオークたちが、雷光に貫かれる。

だが――オーク達は歩みを止めない。

オークとほぼ同格とされる黒馬の魔法では、タフな彼らを一撃必殺するには至らないのだ。


「――龍光」


毒荊棘虫を処理したゴアデビルが戻ってきたタイミングで、俺は手に持つ杖を突き出して短く指示を出す。

その一言と共に、突き出されたゴアデビルの腕から、龍の顎を模したような極太の炎の渦が放たれた。


オークの群れを飲み込む紅蓮の奔流。

地面は抉れ、森に大穴が開く。

龍が去った後には何も残らず、第四階位相当の召喚獣が放った魔法は、オーク達を骨すら残さず消滅させた。


隣の陣地の男たちが呆然と立ち尽くす中、俺は森の奥を睨んでいた。


「……た、助かった」

ありがとう、ありがとうと何度も繰り返す男達。

その中には先ほど、俺の事を嘘つき呼ばわりした男も居たが、もはやそんな侮蔑の感情は消え失せているだろう。


「――死んだ2人は確実なのか?」

そう問いかけると、男は青ざめた顔で首を縦に振った。


俺達はあくまで第三階位のPTの寄せ集めだ。

同格の魔物には必ず勝てるわけではない。所持している遺物の相性もあるだろうし、そもそも数が多い。こいつらが勝てないのは道理だ。


他の持ち場も怪しいな。

守る範囲を縮小する為に、俺は背嚢を背負って入り口の方へ歩き出す。


「ど、どこへ!」

「もう作戦は破綻している。ここからは入り口の間際で戦う。俺が行けばまだ持ち堪えられる。歩けるか?」


そもそもパーティーごとに広がって対応するのは、一度に戦う魔物の数を分散させて負担を減らす為だ。

だが、当初の作戦が崩壊した今、律儀に俺だけ持ち場を守る意味はない。


全ての魔物を、俺と召喚獣で負担する。

そう思い、俺は持ち場を離れた。


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