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只人の『召喚魔法』運用法  作者: 上昇線


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18

――紅蓮人の侵入から3時間。


散発的に発生する低階位の魔物を、黒馬の雷撃で撃ち抜く作業が続く。

隣接する持ち場からも戦闘音が聞こえて来るため、偶発的な魔物はそちらにも流れているのだろう。

正直、暇だった。

俺はあくびを噛み殺しながら、うとうとしていた。


だが、偶発的だった魔物の襲来間隔が、ほんの少しずつ狭まってくる。

1匹から2匹、2匹から3匹と増えていくにつれて、森の奥から不穏な空気が漂い始めた。


俺は頬を叩いて眠気を覚まし、杖を掲げてゴアデビルを召喚した。

その辺りでようやく、小規模ながら「スタンピード」と呼べる魔物の襲来になってきた。


――スタンピード。

何らかの理由で魔物がパニックを起こし、大量に押し寄せる現象を指す。

今回の攻略に限っては、紅蓮人がこのダンジョンを常人では考えられないスピードで攻略しているため、奥から魔物が押し出される形で溢れ出てきていると推測される。


ゴアデビルが無造作に放った火槍が、先頭の火火猿を貫き殺す。


――もう、第二階位の魔物が混ざり出している。


このまま退()()にならなければ良いが……。


――――


新栄にあるダンジョン管理所、統括本部。

その一室でアキが「偉い人」と呼んでいたスキンヘッドの管理長、家長は部下と雑談をしていた。


「本当に良かったんですか?」

「何の話かな?」

「あのソロの探索者を、紅蓮人の指名依頼に同行させた事ですよ。あの指名依頼は本来、パーティー単位での募集だったはずでは」

「あぁ〜、いいんだよ、あれで」


家長は手元のコーヒーを啜りながら、気のない返事をする。彼は休憩中の部下とのこうした会話を大事にしているのだ。


「探索者の上澄みって奴は、どいつもこいつも金はあるのにダンジョンに潜りたがる」

ふぅ、と息を吐き出し、家長は続ける。

「取り憑かれてるのさ、ダンジョンに」

「……イカれてるって事ですかね?」

「まぁ、そうとも言えるね」


手元のコーヒーを一息に飲み干すと、家長は「さて、仕事やるぞ〜」と大きく体を伸ばした。

「どいつもこいつも、上に行くような探索者の思考は理解できないな」



――――


アキは、第二階位が主体となり始めた魔物の群れを蹂躙しながら、口元に笑みを浮かべた。


現状、黒馬の雷撃とゴアデビルの火力だけで、余裕を持って処理できている。

黒石の巨人と黒兵士を温存している現状、戦力には相当な余裕がある。


だが、異変は確実に起きている。

――所々に、第三階位の魔物が混ざり始めているのだ。


今はまだ散発的だが、今後どう増減するかは予測できない。

今回の作戦では、第三階位の魔物が出て来るという前提の話は一切なかった。

現段階で、既に作戦は予定外のフェーズに突入している。


隣の陣地からは、焦りの混じった怒号が聞こえ始めていた。





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