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当日。
新栄のダンジョン管理所からバスに乗り込み、揺られること40分ほど。
少し酔ってきたなと感じたタイミングで、目的地へ到着した。
辺りは厳重に封鎖されており、規制線も張られている。物々しい雰囲気だ。
今回の指名依頼の概要。
最奥の攻略を担当するのは、全員が10代で構成された第五階位のアイドルパーティー「紅蓮人」。
メディア露出が多く、全員がイケメンという華やかなパーティーだが、踏破記録も10を優に超えており、実力は本物だ。
太いスポンサーがバックについており、貴重な遺物を優先的に提供されているらしく、強力な装備で武装しているという噂だ。
正直、いけ好かない連中だが、探索者としての実力は上澄み中の上澄みだ。
第三階位に到達する探索者ですら全体の10%未満と言われている中で、さらにその上の第四階位を超え、第五階位に至るというのは並大抵のことではない。いくら遺物を融通されていようと、センスがなければ死んでいる。
今回の作戦はこうだ。
まず、「紅蓮人」が最奥への攻略組として先行する。
続いて、第四階位の熟練2パーティーが後詰として突入。
そして俺達、第三階位の混成部隊が、ダンジョンの一層入り口付近で待機し、攻略の余波で発生する「魔物の氾濫」に備え、食い止める。
いわゆる、蓋の役目だ。
ダンジョンは森林型。
出現する魔物は第一階位〜第三階位までの複数種類。
攻略組が奥まで進攻すれば、逃げ出した魔物が入り口へ殺到し、確実に溢れ出すと予測されている。
「今回、この防衛チームのリーダーを務めます、パーティー『青龍』の……」
作戦説明の最中、壇上のリーダーが不意に声を張り上げた。
「――おい! 君! 君だよ君!」
指を指されたのは、俺だった。
「1人しか来れなかったのか? 可哀想に。特別にウチの『青龍』に入れてやろう、こっちへ来なさい」
まるで迷子を保護するかのような、憐れみを含んだ口調で手招きされる。
ソロで立っていた俺を、メンバーが集まらなかった落ちこぼれだと勘違いしたらしい。
他のパーティーの視線が一斉にこちらへ集まる。
俺は溜息を飲み込み、ハッキリと告げた。
「自分はソロでの参加です。踏破記録もソロでのものなので、パーティー参加は結構です!」
会場がざわめく。
少し納得行かなそうな顔をした青龍のリーダーだったが、これ以上進行を止めるわけにもいかず、「……そうか、好きにしろ」と話を戻した。
――要は、持ち場を離れずに魔物を食い止めろって事でしょ。
うーん、思っていたような「未踏破ダンジョンの攻略」では無かったが、これも国からの依頼実績の一つだと思えば悪くない。
作戦開始。
まず「紅蓮人」が颯爽と侵入し、続いて後詰めの2パーティーが続く。
最後に自分達、防衛組の出番だ。
広い森の中、ダンジョンの入り口を扇状に囲むように配置につく。
暇だ。あくびを噛み殺していると、隣に配置されたパーティーの男が話しかけてきた。
「おい、ソロでの踏破なんて大きな嘘つくなよ」
ん? なぜそう思ったのだろうか。
ムッとして言い返そうとしたら、男は続けて言った。
「お前、まだ第三階位だろ? 管理証を見たぜ。第三階位でソロ踏破なんて無理に決まってんだろ」
あぁ、なるほど。
受付や待機中に、俺の管理証を見られたのだろう。
確かに、ソロで高難易度ダンジョンを踏破するような猛者は、さっさと第四、第五階位へ昇格しているのが普通だ。
「第三階位に留まっている=実力がそこ止まり」と判断されたわけか。
「なぜ、第三階位だとソロで踏破出来ないと思う? 特性や遺物の組み合わせ次第だとは思わないか?」
「そりゃあ理屈じゃそうだが……そんな有望な人間なら、もっと有名になってるか、とっくに次の階位へ行ってるぜ」
確かに一般論としては正論だ。
だが、俺は今まさに駆け上がっている最中なのだ。
「じゃあ、その時が来たら見せてやるよ」
俺は自信満々にそう言って、ニヤリと笑ってみせた。
男は「ハッ、口だけは達者だな」と鼻を鳴らし、自分の持ち場へ戻っていった。




