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只人の『召喚魔法』運用法  作者: 上昇線


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16

帰還して管理所の事務員に報告すると、「本部へ連絡します!」と言って彼女は慌ただしく動き出した。


俺はロビーの椅子に腰掛け、背嚢からペットボトルの水を取り出して飲み、昂った神経を落ち着かせる。

しばらくすると、ダンジョン協会の関係者が複数やってきて、厳重なケースに入れて獄山蛙の魔石を回収していった。


こうして、俺の黒い管理証には「東山ダンジョン」の踏破記録が刻まれた。


事務員に聞いた話だと、この東山ダンジョンは今回の討伐を機に封鎖されるらしい。

ダンジョンは最奥のボスを倒した後、再出現までのリポップ時間の間に物理的に入り口を爆破などで塞げば、消滅させることが可能だとされている。


東山ダンジョンは過疎地で、いつも俺しか侵入していなかったし、閉鎖は妥当な判断だろう。

「もう6年はここで管理員をしていたけど、異動だわね。また別の所で会うかもね」

事務員はそう言うと、少し寂しそうに笑った。


ダンジョン踏破記録。

それは、ダンジョンランクC以上のダンジョンの最奥ボスを倒した場合にのみ記録される実績だ。

より具体的な「強者の証」である。

東山ダンジョンはCランク。

ちなみに金山ダンジョンはDランクなので、踏破記録の対象外だ。


さらに後で聞いた話だが、今回はソロでの踏破記録として最短記録だったらしい。

そんな記録を取っても、表彰状がもらえるわけではないが。


第三階位以上。かつ、踏破記録所持者。

この条件が揃えば何が起きるか?


国からの指名依頼が発生するのだ。

今まで俺が入っていたのは、既に攻略情報が出回っている「攻略済み」のダンジョンだった。

だが、国からの指名依頼はその殆どが、誰にも手を付けられていない未知のダンジョンである。

ワクワクしないか? 俺はする。


獄山蛙の魔石は30万円で引き取られた。

命の対価としては安いが、実績の前では些細なことだ。


俺は自宅へ帰らず、街へ向かった。

そろそろ、あの狭いアパートもどうにかしないといけないとは思いつつ、腰が重い。

今の俺が身につけている遺物だけで、総資産価値は億を超えているだろう。

そう考えるとやはり、セキュリティのしっかりした高級ホテルへと足が向かう。


東山ダンジョンの近くのホテルではない。

名古屋一の繁華街、栄にある探索者御用達の超高級ホテルだ。


一泊150万円の部屋だったが、迷わず宿泊した。

これでもスイートルームではないというのだから恐ろしい。

いつ死ぬかもわからない戦いをすればするほど、金銭感覚がおかしくなっている自覚はあった。


テーブルマナーなんてものは知らなかったが、部屋にディナーを運んでくれるルームサービスのお陰で、人目を気にせずに食事を楽しめた。


ふかふかのベッドで泥のように眠った、次の日。


俺は、新栄にあるダンジョン管理所の統括本部にいた。


「指名依頼は来ていませんか?」

受付でそう尋ねるが、昨日の今日ではまだ情報は降りてきていないようだ。

「どこでも良いですよ、空いてませんか」

そう言って事務員を困らせていると、背後から声をかけられた。


「こんにちは。指名依頼を探しているのかな? 珍しい人がいるもんだ」


振り返ると、そこにいたのは先日金山ダンジョンからボロボロで帰還した際、事情聴取をしてくれた協会の偉い人だった。

「あっ、こんにちは。その節はどうも。……なにか、ありますか?」


彼は話しながら、手元の端末で俺の登録データをチラリと確認し、口を開いた。

「ちょうど明日、近くのダンジョンで大規模なグループでの指名依頼がある。参加するかい?」


……グループかぁ。

俺は露骨に渋い顔をした。足並みを揃えるのは苦手だ。

それを見兼ねて、彼は苦笑しながら言葉を付け足した。


「グループと言っても、同じパーティーに組み込むことはしないよ。魔物が溢れ出ないようダンジョンに複数人で挑むというだけだ。もちろん、君はソロ参加で構わない」


そういう事が出来るのであれば、話は別だ。

「じゃあ参加したいです!」

俺は内容も聞かずに、即答で参加を決めた。


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