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「触って効果を確認していいのか?」
「どうぞどうぞ」
俺は半魚人が見ている前で、一つ一つの遺物の効果を確認していく。
【媒体:指輪】
効果:666秒間、武装した骨の兵士を5体召喚する。
【媒体:腕輪】
効果:666秒間、黒石の巨人を1体召喚する。
【媒体:ネックレス】
効果:火魔法「龍光」を使用できる。
以上の三点だ。
「指輪と腕輪はいくらだ?」
「指輪は魔石200個でいい。『ちょこれーと』と交換だな」
そう言って、半魚人は俺の手にあるチョコレートバーを指差す。
「腕輪は?」
「腕輪は魔石450個だ。目玉は『龍光』のネックレスだが、そちらは1500の所、今だけ1200にまけてやろう!」
「いや、火魔法はいらない」
がーん、とわかりやすく項垂れる半魚人。
火魔法「龍光」。
第四階位以上の探索者が使用する、強力な攻撃魔法だ。
しかし汎用性が低く、大技すぎて俺の現在の戦闘スタイルには合わない。
だが、この指輪と腕輪は是非とも欲しい。
魔石換算で200と450だと?
召喚系遺物でその価格は、普通に考えてあり得ない破格だ。
ちらりと半魚人の手を見る。
なるほど、指には立派な水かきがある。この種族にとって、指輪や腕輪は物理的に装備できない不要品なのだろう。
俺はチョコレートバーを1本差し出し、まずは指輪を受け取る。
そして背嚢の奥から、さらに三つのチョコレートバーを取り出した。
「おぉぉぉ!! ……だ、だがお釣りはでねぇぜ!」
「いいよ、取っといてくれ」
「太っ腹だねぇ!」
計4本のチョコレートバーを受け取り、ホクホク顔の半魚人はさっさと荷物を纏め出した。
「俺の名前はデラボネアだ。色んなダンジョンを徘徊しているから、また見かける事があるかもな」
そう言うと、荷物を背負って飛び込みの姿勢に入る。
「じゃあな、アキ! 良い商売だったぜ!」
言うが早いか、地面があたかも水面であるかのように波打ち、彼は着水した。
トプん、と地面に潜り、あとには波紋一つ残らない。
名前を明かした記憶はない。「心を読む」というのは本当だったようだ。
手にした指輪と腕輪は、幻ではなくしっかりと実体として残っている。
どちらも、黒い薔薇の意匠が施された不気味で美しい遺物だ。
すぐに装備する。
スロットには入れずとも、指と腕にはめるだけで効果は発揮される。
デラボネアは言っていた。
この先の通路を抜けると、魔物がうじょうじゃと出て来るボーナス部屋だと。
ゴブリンを先行させ、俺は黒馬の近くで警戒しながら進む。
道はこの一本しかない。
やや進むと、大きな髑髏のレリーフが施された禍々しい扉が現れた。
これが入り口か。
扉をほんの少し開けて中を確認しようとした瞬間、巨大な扉が自動ドアのように勝手に開き始めた。
ギギギ、と重い音を立てて全開になる。
中は広いホールになっていた。
100メートルほど向こう側に、同じような出口の扉が見える。
しかし――その扉に辿り着く前には、白い海が広がっていた。
夥しい数の、スケルトン軍団。
骨の軋む音が、ホール全体に響き渡っている。
これが、この部屋のギミックか。




