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5話 業務の最適化強制なんて”この仕事はつまらない”と自白してる様なものだ

「衣類、皺無し!ネクタイ、結び目よし!髪型、ちゃんと整ってる!そしてコイツ、うん、ちゃんと機能するな、総じて全部ヨシ!」


と朝から気合いの入った身だしなみで出社準備をする社会人の鏡の様なこの好青年は生天目(なばため) シンヨミ、普段はその読心の能力を活かして事件などを解決する業務が主な期待の新人社員。しかし今日に限っては


「無能力者代表との面談の場に俺がついて行く、ですか?」なんとも、悲しいかな実務を勉強した事がない役職にも”使える能力持ち”というだけで上の意見一つで部署を移転になるなどなんら珍しくも無いのだ。


いや、この場合は1時の移転かつ同席すればいいだけであるためそこまでの理不尽は感じないが、とはいえ外交の事など何一つとしてわからない新人が、仮にも一つの勢力における最高機密会議の場に出席するなど如何なものか。


「そう心配しなくていい、どうせ無能共の集まりだ。というより、確かにあの場に出てくる四人は総じて頭の切れる方ではあるが、そいつらが最終的に意見を委ねるのはあの狂人だ。全く、常々あいつらの権力構造には同情するよ」


と返事をくれたのは多井 ロッカン外交大臣。とはいえ能力者間の勢力に差はあっても”国”と言える概念は実質的に無くなっている。何せ言語の壁も国境の壁も意味を成さないのだ。だとすれば自然に自分が住みたいと思える場所に移動するだけの事。というわけで実質的な業務は無能力者との交渉や意見交換である。


ではなぜそんな場に俺が同行する必要があるかというと


「最近の能力者達の不審死、及び失踪、それから一切の鳴りを潜めた無能力者の人権活動とは名ばかりの不当な権利要求運動、どうにもきな臭いものが多い」


そう言いながら一連の事件の被害者達との接点や行動パターンなどをボードに書き足していく


「ありえない話では無い、だが、あんな無能がこんな大それたことを赤羽に気づかれずにやれるなど到底思えん、そこでだ、お前の能力で奴らの心の内を暴け、そう気負う事はない、質問は事前にこちらが考えてある。お前はただ相手の心を聞いて記憶すればいいだけだ、わかったな?」


「はい」


正直、自分が役に立たなかったら、という不安がない訳ではない。しかし、これで調査が進むのであれば喜んで引き受けよう。そう思い、会談が予定されていた場所に移動する。


車の中で時計を確認するが、この調子だと予定の10分前には到着できそうだ。もし早めについたのならばあえて隠れて見張る、というのも出来なくはないだろう、それはこれから相談して決めれば良いか。などと思いながら到着する。


「失礼します」


とドアを開けるも、先客が一名いた様だ。こいつは確か、


「シータさん、でしたね。ご足労おかけします。」


と言いながら手を差し出す


「私は生天目 シンヨミ、と申します、今日はよろしくお願いします」と笑顔で言葉をかける、無能とはいえ一応ロッカンさんが一番警戒すべき相手として、こいつだけは直接自分で確かめろ、と言われた相手だ。正直こうして一人で来てくれたのは助かったが。


「えぇ、よろしくお願いします」


と、心底興味無さそうに、いや、先程までと一切雰囲気を変えずおおよそ空気にでも話しかけるような無気力な返事が返ってきた。とはいえ握手には応じて来たので多分嫌味はないんだろう。さて、俺にどういった印象を抱いているのか、警戒か、疑問か、それとも好印象なのか。そう思い心をのぞいてみるが


(あ〜、社長、今日も寝顔が可愛かったな。)


????何を言ってるんだこいつは?え?社長?あの、別に失礼とは思わないが何のセンスも感じられないあの意味不明なマスクを四六時中被っているあいつが?というかまともな素顔してたんだあいつ、てっきり何らかの病気が原因で見るに耐えない顔とそうゆうのがあったから隠してたのかと。いや、こいつの感性がおかしい、という可能性はあるが、いやいや、そんな事はどうでも良い、どうして社長の寝顔が見れるの状態にあるのかとか疑問は尽きないがとりあえずはどうでも良い、いや本当に。落ち着け、一旦落ち着け、顔には出てないよな?うん、ちょっと引き攣った感じはあるが、もう少し集中して奥まで探っとくか。仮にこの調子が続けばどこかでポロッと社内に関する重要な事を考えるかもしれない。幸いこいつは本当に俺の事がどうでも良いようでこのまま暫く手を握っていても何ら思わないだろう、そう思いとりあえず集中を再開すると。


(あ〜、膝の上に座らせた状態で無理やり頭を撫でながら抑えつけて嫌いな食べ物をイヤイヤ言わせながら食べさせたい)


???????え?そうゆうこと?もしかしてこの人そうゆう趣味なの?まじで?え、怖、一番警戒しておけってそうゆう?あ、やばい、なんか流れ込んできた。…これ聞き終わったら解除しよう。


(そういえば社長の嫌いな食べ物って何でしたっけ?あの人基本出されたものは何でも笑顔で食べるからわからないんですよね、まぁ、そういったところも可愛いから良いんですが。乳児期に血液しか飲めていなかったから味覚がおかしくなっている説を推していましたが影響として出ているのはアルビノ体質だけだったのであの人は素で何でも食べてしまう子だったのでしたね、更に可愛さが増した、というものです。そうなれば人間の血液ならば過去のトラウマが掘り返されて嫌がるのでしょうか?試してみる価値はありますね)


いやいやいやいやねぇよ!何言ってんのこいつさっきから、まじで怖いんだけど!何が試してみる価値はあるますね、だよ、ねぇよんなもん!え?もしかしてこいつのせいであの社長がストレス抱えて奇行に走ってるってこと?だとしたら少し同情の余地が出てきたな。それで周りの情報に流されそうになってたけどさっきさらっとすごい事言ってたな!何だよ乳児期に血液しか飲めなかったって、え?母親が何らかの原因で居なくなって他の親が母乳は濾過した血液理論で血液を直接飲ませるストロングスタイルだったって事?いや本当に何なの?まぁ、落ち着け、情報がない訳じゃない、そうだ、ここは落ち着いてロッカンさんに適切な情報だけを集めて報告を


インカムにて「何かわかったか?」


「はい、シータは恐らく幹部の中でも特に社長と密接な関わりがあり、過去の経歴を知っています」


「そうか、流石だな、他には?」


「そして何より」


「何より?」


「変態(猟奇的な危険人物)という事が確固たる確信を持って言えます」


「ん?」「ん?」


「まぁ、参考には、しておこう」


終わった〜、心の声と出した声が反対になっちゃったよ、ロッカンさんすごい気まずそうにしてたし、終わった〜。たまにあるんだよなこれ、人の心の声聞きすぎてどっちが心の声でどっちが喉から出てる声かわからなくなる瞬間が。いや、さっきのは内容が内容だっただけに自身の動揺も多少はあったのだろうが。


そんな誰に聞こえるでもない口を心の内でこぼしていると、扉を開いてゾロゾロと六名程入ってくる、ちょうど時間になったようだ。


我々側の人間が追加で三人、合計五人、よし全員集まったな。無能共のが追加で三人、合計四人、あれ?一人足りないな。


「あー、社長は、遅れていつも通り遅刻っすね、すんません」


と恐らくはゲンタであろう人物がそうやる気のない謝罪を行う。うん?いやまぁ、社員が幹部とはいえ社長の行動を制御できないのも、把握できないのも、100万歩譲って良いだろう。しかし、しかしだ、社長の寝顔を恐らくは今日見ている奴がこの場には居る。どうして起こしてこなかったんだとか色々と言いたいことはあるが、そんな事を言い出してもどうにもならない。ゆえにここは沈黙を守ろうとしたが


「あ、これ、社長から遅刻のお詫びのマテ茶です。」


「あ、どうもご丁寧に」あまりにも自然に渡して来たので全く違和感に気づけなかったが、よくよく考えてみると、なんで遅刻前提で部下にお詫びの品を持たせているんだ?よくよく考えてみるとこれ丁寧でも何でもなく煽りだよね?そうだよね?しかもマテ茶ってなに?普通もう少し飲みやすいもの渡すよね?あと何だよマテ茶って、これでも飲んでマテってか?


しかし当の本人は未だ来ず、多分待ってたら時間が無くなるとか言い出したので一応の最重要人物を交えずに行う事となった。


しかし会議は驚くほど順調に進み、必要な資料や時折こちらが半ば牽制目的で求めるデータなども全てを事前に準備していた時などには流石に驚いた。どうやら案外捨てたものでは無いらしい。


そうして会議は無事に終わり感謝、という名目で全員に握手をしていく。


さて、ここからが本番だ。一応シータの心は会議中ずっと聞いていたが、特に目新しい情報は無く時折あちら側に有利に調整したデータの場所を教えてくれる程度のものだった。とは言えこの程度誤差の範囲だし何の役にも立たない、そう思い対象をゲンタに変えてみると


(역시 일본인에게는 마테차 인기 없을까?저 녀석 알비노니까 외형은 일본인에게는 보이지 않지만 일단 태어난 장소는 일본인데.그렇게 말하면, 그 사람이 마테 차를 마시는 것을 본 적이 없다.)


あー、そう言えばこいつ韓国人だったか、クソ、何か重要な事を言ってるかもしれないのに、こんな事なら韓国語でも勉強しておけば、いや、費用対効果が割に合わないな、流石に


(日本語訳すると、日本人ってマテ茶嫌いなのかな?社長も見た目はアルビノだから日本人には見えないけど一応日本生まれなのに。あ、そう言えばあの人がマテ茶飲んでるの見た事ねぇや って言ってるんすよ)


あー、解説ありがとう、ん? とその事実に気がついた時、背筋が凍りついた


(いやー、慣れない事はするもんじゃないっすよ?この手のデータ改竄とか当たり前だろうに一々反応して上司の方伺うって、そんなの素人感丸出し且つなのにその事実には気づくっていう意味不明な状態なんすよね、やけに集中してシータさんの方見てるからもしかしたらって久しぶりに母国語で脳内言語回してたら当たり前の様に引っ掛かってんのがマジでウケるんすよね。いやぁ昔は家族に日記見られない為に4ヶ国語織り交ぜながら書いてた経験が逆に普段は言語の壁を感じないから生きるとか普通は思わないっすよね。うん、多分君のやった最大の失敗はその”普通”の想定を武器として手にとる頭のおかしい奴を敵に回そうとした事っすかね?勿論俺じゃないっすよ?君らの大好きなあの狂人っすよ。俺もまぁあの人が頭おかしい人間ってのには完全に同意はしますよ)


そこまで聞いた俺は、何をするでも無く、その場から立ち去っていた。今思えばそれこそが完全な悪手だったのだろうが、それ以上にみなさんに迷惑をかけるのが怖かった。いや、違う、これはただの言い訳だ、本当は


「おはよう、見ない顔だね?まぁ顔の見えない私が言うのもアレだけど」


と言いながら、通路に出た俺を待ち構えていたのは、今一番会いたくなかったであろう、今の俺にとっては最悪の象徴たるそいつが壁にもたれかかってた。


すぐさま離れようとすると


「まぁ、待ちなって、せっかくだし悩みでもあるなら聞くよ?マテ茶飲む?」(うわ〜、この青年が心読めるって子?怖いな〜、立ち去ってくれないかな〜?)


と言いながら肩を掴んできた、と同時に心の声が流れこむ これが?こいつの?それと同時に今、この状況がまたとないチャンスである事を理解する。こいつらが何を企んでいるかなど知らない、それにどうせ俺から得られる情報など何もないだろう、そう思い、こいつの策に乗ってやる事にする。


「えぇ、そうですね、今、少し難事件を追っていまして」


「ほうほう、それはそれは、私でよければ力をかすよ」(いやだな〜、怖いな〜、それ私に関係してなければ良いんだけど)


(占めたっ!)「そうですね、仮に、あなたが権利拡大を訴える無能力者がいた場合、どのような対応を取りますか?」


「えっ?まぁ、普通に、応援とか?」(だ〜れが応援なんてするかバーカ、私はなぁ、働かずに食っちゃ寝の生活が一番なんだよ!慎ましやかに生きたいんだよ!そんな事いって私たちみたいなのまで疎まれて殺されそうになったらどう責任をとってくれるんだよ!こっちから願い下げだ!)


「そうですか、では仮に、その様な存在を率いて戦う存在がいた場合、どの様な理念を掲げると思いますか?」


「ん〜、難しい事はよくわからないけど、きっと革命でも目指してるんじゃない?」(まぁ、私から言わせればそんなことは不可能だろう、まぁやるとしたらわざと派手に負けて後世の無能力者が慎ましやかに生きてくれるのを願う、みたいな感じになるんだろうか?)


「ありがとうございます、では最後に、あなたは、能力者を殺しうる武装組織、もしくは戦力を持っていますか?」(これは、敵対宣言にほど近い、ここから先の情報収集は無理になるだろう、それでも、それでもこの質問には意味がある)


「う〜ん、持ってるよ」(あ、シータ、こいつそのまま後ろからやっちゃって)


!!と瞬時にその声に反応して振り返るが、そこには誰も居ないすると後ろから、とどのつまり社長がいた方向から冷く硬い筒状のものが後頭部に押し付けられ


「何を勘違いしているのかはわからないが、君たち能力者の殆どは肉体的な耐久値は私たち無能力者と変わらないだろう?そうなれば、こうして不意でもつけば非戦闘特化の能力者など簡単に殺せる。だから、その質問に対する答えはyesだ。私は能力者を殺しうる戦力だと言うのはこの場で保証しよう」


と告げられ、最後に、この死が、無駄にならない事を、


「な〜んちゃって、怖かった?ほら、これマテ茶のポットだよ、ほら、これがないとやっぱり本物の香り高さは味わえないよね!」


といい、そのまま腕を引っ張られ会議室に連れ戻される、憔悴しきった自分を見て心配されるが何事もなかったとかぶりを振っておく。本当に、何もなかったからだ。そうして無事にマテ茶パーティーは終わった、思ったより味は薄かったが健康的な味がした。次からは茶菓子でも持ってこよう


「人物評価ブラックステンレスコーポレーション社長本名:不明常に奇怪なマスクをかぶって素顔を隠している、遅刻癖、方向音痴、忘却癖などおおよそ人の上に立つ器のある人物ではない。奇行は目立つが特段問題も起こさないためそのまま置いておく当人以上に当人を支える幹部たちの方が優秀で厄介、しかし構造上最終的な判断は当人が行うため幹部達の優秀さを相殺している。総評:A+ 警戒の必要性がなく、反抗的な態度もない、やや奇怪な言動が目立つが傀儡として置いておくのにはこれ以上ない都合のいい存在。痺れを切らした幹部に立場を追われないかだけ注意」


修正後「人物評価ブラックステンレスコーポレーション社長本名:不明おかしいでしょう、ただの無能ならば曲がりなりにもアレだけの人心を集めているわけがない、俺ははっきりと聞いたんです、あいつが、こいつが一番危険な人間だって!赤羽勝奇に聞いたことがあります、あなたが勝てない人はいますかと、そうすると口頭でも心でもこいつを指定してきたんです!最初は何かのカモフラージュかと思いましたが間違いなくこいつはおかしい、早急に身元を洗うべきです!総評:E-(最低評価)何が警戒の必要は無い、ですか、あいつらは権力の構造上で従ってるんじゃない!自ら望んで従っているんだ、それがなんでわからない!いいからさっさと---編集済み--」



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