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第13話    (12月13日のおはなし)

「頼むから嬉々として漁るのはやめろ……」

 眼前の嘆かわしい光景に、ティーゼルは渋面じゅうめんを片手でおおって懇願する。

「人聞きの悪い。べつに喜んでやってるわけじゃないよ」

 感情の乗らない声がぼそぼそと反論する。

 様子を見にきたティーゼルを背後に、『死に損ない』は死体の荷物から食糧を探して取り上げていた。

 調べると言ってここまでおもむいた彼が真っ先に手を付けたのが食糧漁り(これ)とあっては、ティーゼルがそのような印象を持つのも無理はない。

「まるでニームだ……」

 大きなため息と共に漏れた感想に、しかし『死に損ない』は気分を害した様子もなく平然と返した。

「ニームは人の食糧になんか興味ないよ。彼らが欲するのはエルムの民の血と肉のほうなんだから」

「真面目に答えるな。俺は最大限の非難を表現するために言ったんだ」

 ティーゼルの言葉に、『死に損ない』は初めてこちらに顔を向ける。その口角がわずかに上がっており、ティーゼルはぎょっとした。

 これまで一貫して投げやりな表情を崩さなかった『死に損ない』だ。それが初めて微笑……とまではいかなくとも、何らかの意味を伝えるような変化を示したのである。

 しかしティーゼルはそれを素直に笑っているとは捉えなかった。

(どう考えても笑うところじゃないよな……むしろ物凄く怒っていることの裏返しか。ニームに(たと)えられたら誰だって面白くはないからな)

「……あー、悪かった。言い過ぎだった。だがな、昨日お前が倒した奴らから十分食い物は掻き集めたはずなのに、出くわした相手を積極的に襲ったり死体と見たら飛びついて遺留品を漁るなんてのは、さすがにどうかと思うわけだ……」

 ティーゼルの謝罪と弁明を受けた『死に損ない』は、不思議そうに首を傾げる。

「……なんで謝るのか分からないけど」

 そこまで言うと、顔を戻して亡骸に向き直りながら、再び口を開いた。

「ティーゼルに付き合うなら、いくらでも必要だと思ったから」

「……俺?」

 意外なことを言われ、ティーゼルは眉を上げる。

「荒野を出ようとしてない。通り抜けることが目的じゃなくて、ティーゼルはここで何かを探してる――違う?」

 突然核心をかれたティーゼルは絶句した。

 しばし驚きの表情で『死に損ない』の外套に隠れた後頭部を見下ろす。

「……なぜそう思った?」

「誰かに追われてここに逃げ込んだなら……もっと後ろを気にして進むと思うんだけど、そういう風には見えない。そんなひとが、そもそもただ通り抜けるためにここに入ったりはしないだろうし」

 ティーゼルは押し黙る。一日行動を共にしている間に、怪我を押しての移動で精一杯とみられた『死に損ない』が、存外冷静に自分を観察していたことに驚いた。

(もしかしてこいつ、俺が何を探してここに来たのかさえ見抜いているのか?)

 ティーゼルとしてはそこまで付き合わせる気は全くない。彼の怪我がもう幾分癒えたら目的地を聞き出し、その方角を教えて別れるつもりだった。

 そもそも、行き先を話したうえで同行したいと言う者など、いるわけがないのだ。

 しかし――。

「ニームの『遺構』を探しているなら、一緒に行くよ」

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