第10話 (12月10日のおはなし)
結局、ティーゼルはこの新たな連れのために、最も手っ取り早い物資調達を試みた。
『死に損ない』が倒した者たちの遺留品である。
「……死体を漁るの?」
危うげな足取りでティーゼルについてきた『死に損ない』が、目深に被った外套のフードの奥から小さな声で問う。感情の乏しい声音からは、どう捉えたうえでの発言なのかは判別が難しかった。
ティーゼルは彼に向き直り、真剣な顔つきで言う。
「気が咎めるか? だがこんな土地じゃ、生きてる側は使えるものは使わないと、すぐに自分も死体の仲間入りだ。食い物も無為に死者と朽ちるより、誰かの口に入った方がよほど有意義だろう。いいか、人間らしい倫理観は一旦忘れろ。ほら、陽が高くなる。さっさとしないと俺たちが干からびるぞ」
言うだけ言うと、彼はすぐに『死に損ない』に背を向け、作業を再開した。
背後でそれを眺めつつ、しばし『死に損ない』は言われた言葉を吟味していたようだったが、ほどなく、彼に倣うように別の遺骸のそばでしゃがみこんだ。
どうにか飲み込んだか、とティーゼルが小さく安堵のため息をついたとき、『死に損ない』から独り言のような呟きが聞こえてきた。
「無いなら……有るところから奪えばいい、か」
「は……?」
自分の諭した内容より一段行き過ぎているような納得の仕方に、ティーゼルは思わず『死に損ない』を振り返る。
彼は黙々と、丁寧な手つきで自身が斃した相手の所持品を検め、乾パンや干し肉などの携行食糧を探し出しては自身の旅嚢に詰め替えていた。
先ほどの会話から、荒野の厳しさも知らない甘い認識を引き摺っているのかもしれないと考えたティーゼルは、ここで生き延びるために考え方を改めてもらわなければ、と敢えて端的な言い方をした。
擦り込まれた良識を脇に置いて行動する、ということがさほど簡単ではないのはティーゼルにもよく分かるからだ。
ゆえにきっと言い聞かせたところですんなりと受け入れられるものでもなく、この先の道中で辛抱強く教え込んでいくしかない、などと思っていたのである。
しかし『死に損ない』はそれに抵抗感を表すどころか、むしろ好都合とでも言わんばかりの様子だった。
そのことに若干背筋が冷えたティーゼルは、これはおいおい加減を教えていかねば……と先ほどとは真逆の決意を固める。
しかしもう手遅れだった。
『死に損ない』は、これにすっかり味を占めてしまったのである。




