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第1話    (12月 1日のおはなし)

 赤茶けた大地に、点々と大岩が横たわっている。

 まるで、子供が戯れに積んだ石が均衡を崩してその場に転がったかのごとく、不規則な配置で散らばっている。

 それらは何十年、何百年とその場を動かず、昼は黙々と陽にかれ、夜は粛々と冷気に抱かれ、ただひたすらに、この厳しい地に鎮座し続けていた。

 植物の気配はごくわずか。と言うより一望して皆無である。

 極端に乾いたこの地には、雨など年に幾度も降らず、従って陽光を和らげる雲もろくに浮かびはしない。

 日中は焦熱の地獄。その暑さにうっかり着衣をはだけ、あるいは四肢を露出させようものなら、たちまちその身体は水分を失い、ついでに宿る命をも搾り取られるだろう。

 だがそびえる大岩の影に潜れば、責め苦のような陽射しも獲物を見失う。この地を行く者にとって、その影は恵みであり――しかし場合によっては厄災であった。

 風が運ぶ塵に磨かれたのか、岩肌はみな奇妙になめらかだ。その足下に身を滑り込ませれば、先客がいたという事態もときには起こる。

 それが無害な旅人であればよいだろう。だが生憎、こんな過酷な土地で蠢く人間など、真っ当である確率の方が低いのだ。



「おう、こりゃいいところに来たな。日暮れまでいたけりゃ、有り金と食料全部出しな。あと水もだ」

 ティーゼルが連れと共に岩陰に足を踏み入れた途端、その先にたむろしていた人相の悪い男たちが立ち上がる。嬉々として、こちらを岩壁に追い込む形で取り囲んできた。

「なんだ、いい外套じゃねえか。そいつも寄越すんだな」

 こちらを若造と侮っているらしく間近から威嚇するように顔を覗き込まれたが、それに動じるでもなく、ティーゼルはのんびりと背後を振り返る。

「――だってさ。俺たちの骨も拾ってくれるっていうなら考えてやってもいいか?」

 言われるままに提供したら当然、この先の旅路で命を繋ぐことは不可能だ。だから冗談めかして斜め後ろ、岩壁を背にしてたたずむ連れに訊いてみた。

「……べつに、拾ってもらわなくても」

 全身を覆う外套のフードの奥から、歳若いが沈んだ声が返される。面白味のひとつも感じないとでも言わんばかりの口調だった。

 残念ながらティーゼルの洒落しゃれは、連れには通じなかったようである。彼は肩を竦めた。

「さすが『死に損ない』は言うことが投げやりだ」

「そういうわけじゃ……。ただ、骨を拾ってもらうつもりがない、っていうだけ」

 言うなり、『死に損ない』と呼ばれた連れは無造作に剣を抜いた。次の瞬間にはティーゼルの向こうに立つならず者の首に、ひたとその刃が据えられている。

 唐突な彼の行動に、この場の全員が目を剥いた。

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