表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガーディアン  作者: ハルサメ
VS鬼
7/10

第6話

 鬼の体は急にぐらつき、まるで中身の無いぬいぐるみのようにいとも簡単に宙を舞った。


 その真下には、左腕を高々と上げた閃也の姿があった。


 その体には右腕が無く、その代わりに翼竜を思わせる翼が背中に生え揃っていた。


「おら、お返しだ。喰らえよ」


 頭上を舞う鬼に向けて、閃也は大きく口を開く。


 反った体のバランスを取るように翼がはためき、次の瞬間一筋の細い奔流が放たれた。


 その衝撃で周囲の瓦礫は吹き飛び、閃也を中心に地面が僅かに陥没する。


 奔流は鬼の一つ目を貫き、そこで爆発を引き起こした。鬼の上半身は消し飛び、残った下半身が地上へと叩きつけられる。


 失った上半身を再生するように鬼の輪郭がブレるが、その再生速度は目に見えて低下していた。


 閃也の一撃は実体を消し飛ばしただけでなく、鬼の魔力そのものをごっそりと削ったのだ。


「鬼が魔術を使わないって言ったのは誰だよコンチクショウが」


 両翼をしまい、閃也は瓦礫の上から再生にてこずっている鬼を見下ろす。


 全身の再生を優先するためか、もう鬼の体長は三メートルほどにまで縮んでいる。


 いくら鬼であろうと、これならば数人の封魔師で同時行えば封印が可能だろう。


 伊坂に連絡を取ろうとしたが、耳にはイヤホンがついていなかった。


固定して取れ難いようになっていたはずだが、先ほどの光線を緊急回避した際にどこかにやってしまったらしい。


「これどうすりゃいいんだ?」


 これでは満足に文句も言えない。異変に気付いた伊坂が応援を寄越すのがいつになるか分からないし、鬼が再生してしまった時の事を考えるとこの場を去るわけにも行かなかった。


 回復するたびに殴り続ければいいのだが、そんな単調作業はごめんだ。喧嘩は上等だが、弱いものいじめをする気はない。


 回収はともかく、鬼は何とかできないものか。座り込んで呆然と空を見上げた――その時。視界の下で、何かが光った。


 慌てて目線を戻すと、いるべき場所に鬼の姿は無かった。


 再生が完了し、どこかに逃げ出したわけではない。


 先ほどの光は鬼が魔力に分解され、吸収された光だ。


 その場には鬼の代わりに、一人の女性の姿があった。


 もう封魔師が到着したのか、と感心しつつも興味なさ気に思った閃也だが、その女性に少し違和感を覚えた。


 長い黒髪に白のカチューシャ。その凛とした立ち姿から成人した女性かと思いきや、顔つきは良く見るとまだ少女とその中間、言ったところだ。


 着ているのも封魔師の正装というわけでもなく、ベージュのシフォンブラウスに八分丈のレギンスという完全な私服。


 封印武装を持ってはいるが、その傍に護衛役である守護者の姿が見当たらない。


 いくら鬼が瀕死の状態だったからと言って封魔師が単独で接近する意味はなく、さらにこの状況で守護者が身を隠しているというのも考えられない。


 そして何よりあの鬼は確かに瀕死ではあったが、まだ再生するだけの力を残していた。


「おいそこのオネエチャン、こんなところに一人でどうしたんだ?」


 以上のことが不思議に思え、そして興味が湧いた閃也は声をかけてみた。


 声に反応した少女は、瓦礫の上にいる閃也に目を向ける。ややつり目気味の威圧感を与える瞳だった。


「先ほどの戦闘……あなた何者?」


「俺はただのフリーの守護者だ」


 質問に答えず、逆に質問を返して来た少女に内心やれやれと思いながらも、質問に答えることにした。


「ただの守護者が鬼を単独で討伐するなんて、信じられないわ」


「そりゃこっちの台詞だ。守護者も連れていない封魔師、それも瀕死とは言え抵抗力の高い鬼を単独で封印する奴なんて、それこそ驚きだ。お前こそ何者だ?」


「…………」


 どうやらこの質問には答えたくないようである。


 面白そうではあるが、だからと言って閃也には拒んでいる相手に干渉するほどの積極性はない。


 とりあえず鬼は封印されたし結果オーライか。そう思い、忘れていた右腕の復元を行った。


 右腕の感覚をイメージすると黒い粒子が右腕の付け根に集まり、一瞬で右腕が復元する。


「あなた、フリーなのよね?」


 拳を握り締め復元した右腕の感触を確かめていた閃也に、少女が尋ねた。


「ん? あぁ別に俺はどっかの封魔師の守護者ってわけじゃない」


「そう。なら……私の守護者にならない?」


 その少女の提案に、閃也は回していた肩の動きを中断した。


「どういう経緯でそうなった?」


「さっきあなたが言った通り、私には守護者がいない。だから」


「いやいや。だから、とか意味分からねえから。お前さん頭大丈夫か?」


「決めたわ。あなた名前は?」


「お前人の話を聞けよ」


 今までの閃也の人生の中で、ここまで物怖じせずに閃也に接してきた者はいない。


 伊坂でさえ手綱を握るのが精一杯であり、上手に出る事はほとんどなかった。


 そもそも閃也には誰かの守護者になる決定権が無いどころか、その存在自体が秘匿扱いを受けている。


 特査が所有する戦略級守護者、ドラグナー。


 こうして実戦に出るのも極めて稀で、出たとしても他の封魔師、守護者は全て退避が義務付けられている。


 今この少女がここにいて閃也と対話していることすら、すでにあってはならない状況なのだ。


 この少女が封魔師として相当な実力を持っているのは確かだろうが、それと閃也が守護者になるのは話が別だ。


 鬼の封印部隊と閃也の拘束部隊が到着すれば、もうこの少女とは二度と会うことは無いだろう。


 この少女がいくら言ったところで、その結果は覆りようの無い事実だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ