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ガーディアン  作者: ハルサメ
VS鬼
10/10

第9話

 翌朝、起床した閃也はなんとも言えない違和感を抱えていた。知らない場所と、生まれて初めて寝るベッドの感触、そして自由な四肢。


 全身を拘束具でガチガチに固められ、更に動かないように椅子に固定されると言う不自由の最高レベルの睡眠が基本だった閃也にとって、今の状況は異変でしかなかった。


 四肢の状態は良好だった。昨晩何時間も浴び続けた電撃による後遺症はない。というよりは、普通は閃也に損傷を与えることすら困難なことである。しかし蒼生の言葉通り、閃也が無力化されたことも事実だ。


 その事実を何とかしない限りは、問答無用で蒼生にひれ伏すしかなくなってしまう。


 実は閃也もただ何時間と電撃を受け続けたわけではなく、そこにはちゃんとした狙いがあった。


 例え魔獣因子の機能を封じられたとしても、そもそも閃也は生身の肉体ですら普通ではなく、免疫力などの面でもあらゆる強化を施されている。


 つまり機能停止に追い込まれる電撃でさえ、受け続ければ耐性が生まれると言うことだ。特査として緊急出撃する際も毎回異なる毒物を混入されている。


 その算段から電撃を受け続けた閃也ではあったが、ここに一つの誤算があった。いくら電撃を受け続けても耐性が生まれる事がなかったのだ。


 それについて、閃也は電撃を発するナノマシンが免疫機能を阻害しているのだと推測した。


 魔獣因子を蒼生に、自力の免疫力をナノマシンに封じられているとなれば、もう閃也に打つ手はなかった。


 それには負けるくせに、現実から逃げる最終手段である自決には完璧な耐性を備えている体にうんざりしていたところで、扉がノックされた。


「閃也様、起きておられますか? 既に朝食の時間です」


 扉越しに聞こえてきたのは千奈美の声だった。千奈美は蒼生の専属メイドであり、その蒼生の守護者である閃也の世話係も担う事になっていた。


 閃也に与えられた部屋は屋敷の二階の一室で、朝食は一階の広間で取る事になっている。確か電撃でボロボロになりながらそう告げられた。


「起きていないのですか? 失礼します」


 返答が無いのを確認して、千奈美が部屋へと入ってくる。


「おや、起きているではありま……」

 

 千奈美はベッドに腰掛けている閃也を見て、絶句した。


 閃也が全裸だったからだ。


「何故何も着てないんですかッ!? ちゃんと服はお渡ししたはずですッ!」


「ん? あぁ、何かヒラヒラして邪魔だった」


 自由になった違和感か、襟元や袖口が妙にそわそわしたので全部脱ぎ捨てていた。


「な、何でもいいので早く服を着てくださいッ!」


 千奈美は真っ赤にした顔を手で覆い、慌てて部屋を出て行った。



「だからあんたを呼びに言った後、千奈美がどこか呆然としていたのね」


 制服に袖を通し朝食を食べ終えた閃也は、蒼生とともに徒歩で学校へと向かっていた。


「たかが裸を見たくらいで動揺しすぎだ」


 辛辣な答えを返す閃也は、着慣れない学校の制服に違和感を覚えたのか、上着のボタンを全てあけていた。


「知り合って間もない異性の裸を見たら誰だって動揺するわ」


「ほう、じゃあ今ここで俺が全裸になったらお前も動揺するのか?」


「他人のフリをした後に、まず間違いなく死ぬ寸前まで電撃を与え続けるわね」


 その光景がすぐに頭に浮かび上がる。電撃に対処する手段が無い以上、イニシアチブは蒼生にあるため、閃也はふてくされ気味に鼻で笑った。


「それでこれから学校に行って何をするんだ? まさか本当に机にかじりついて仲良くお勉強する訳じゃないだろ?」


「もちろんそれもあるけれど、あんたにそれは期待していないわ。学年最下位でもなんでも勝手に取っていなさい」


「ほぉ。じゃあ紫藤のお嬢様は俺に何を望んでいるんだ?」


「学力なんかに興味は無い。あんたにはただ実技に働いてもらうだけで良い」


「なるほど、俺の力を示せば良いってわけか」


「そう。でもだからと言って、味方にも喧嘩を売って良いというわけではないから勘違いしないように。妙な真似をしたらすぐに黙らせるわ」


「んじゃ買うのはいいのか?」


「安心しなさい。最初はいやでも買う事になるから」


「あ? それはどういう」


「さ、着いたわ」


 質問を遮り、蒼生は立ち止まって顔を上げた。二人の正面には白い壁と鉄格子によって出来た巨大な門が聳え立っていた。


 塀というよりは外壁と表現した方が正しいものは、門から左右に途方もなく伸びている。


 その塀の上部には電熱線が張られており、壁を伝っての行き来を完全に不可能にしている。


 凶悪犯をぶち込んだ刑務所かな? と思えるその外観だが、


「ここが、今日から通う第一学園よ」


 どうやらここが学校と言われる施設のようである。

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