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ドラゴンアタック

「これは馬の必要ない馬車かしら?」


馬が必要なければ、それはもう馬車とは違うのでは?


現代日本の分類で言うと、ミニバン。痛車仕様。

魔法少女っぽい、ピンク色多めの外装だね。


まあ、どうでもいいや。動くなら。

悪魔が運転する痛車に全員乗車じゃ。


はえーわ、痛車。

早朝に出発して、昼過ぎにはもうターマ山サファリパークだ。

欠点としては、道行く人の視線が痛いことかな。今は、山の獣の視線が怖い。


「なんだか様子が変ねぇ。獣が多すぎるわ。」


クリームちゃんは平然と言っているけど。

こえーよ。なにこれ。うじゃうじゃいるんだけど。熊とか虎とかワニとか。


「森の中の生態系に異変が生じたのかしら?異常に強い個体がよそからやって来たとか。」


それな。よく聞くわ、そのセリフ。異世界冒険ものでな。

そんなとこに、わしら行くの?まじでー?

わし、勇者とか剣聖じゃなくて、女神なんじゃけど。幼女なんじゃけど。


車に乗っている間は、サファリパーク気分じゃったが。

目的地に着いてしまったので、降車する。


「十字架で思いついたのがここなのだけど。ここに埋蔵金が埋まっているのかしら?」


ここは、熊に襲われたカステーラ家の護衛を埋葬した場所だ。お墓に枝で作った十字架を立てたね。風で飛ばされたのか、もう無いけど。


「十字架であれば、もう1か所、思い当たる場所があるのじゃ。」


車を降りた辺りから、獣を見なくなった。クリームちゃんの言う、やべえ奴が近いんじゃろうか?

ドラゴンかも知れぬので、ここはひけないね。


先に森の中の方に行く。

せめて明るいうちにね。


森の奥深く、地面に屹立する伝説の聖剣。に見えるお墓だね。


「これが十字架なのか?そう見えなくもないが。」


そう言って、セリカが無造作に短剣を引き抜いた。お前、勇者か。


「うーん。結構な値打ちがありそうだけど。墓のものを盗ると女神レベルが下がるからなあ。」


と、元に戻した。

女神レベルってなに?


「十字架はその剣ではなく、墓の中です。」


メイドさんが言う通り、墓の中には十字架が埋まっているはずだ。王女の首に下がっていたネックレスだ。それぐらいは残そうということで、奪わずに一緒に埋めたのだ。


「といっても、墓を掘り返すわけには…。…この墓、誰かに掘り返されてるな。」

「獣じゃなくて?」

「獣だったら、埋め戻さないだろう?」


確かに、ぱっと見は元のままに見えるが、一部分土の色が違うような。


「犯人は、川上に向かって移動したようだな。」

「だなぁ。これは子供の足跡かな?」


わしには何も見えないのだけど。足跡があるらしい。

足跡を辿って行くと、やがて、ぽっかりと丸い形で森が開けた場所に出た。

この場所は、わしとメイドさんが最初に居た場所だ。

かつて、全裸の幼女がメイドさんに膝枕されていた場所に、何か居る。


全裸の幼女だ。


銀髪だ。腰までの長さの銀髪に、真っ白い肌に、赤い瞳。川のほとりに座り込んで、手に提げた十字架のネックレスを、ほけーっと眺めている。

墓を荒らしたのは、この幼女か。


しかし、全裸の銀髪幼女を目前にすると、何と言って声をかけたものか分からんな。

こんにちは、だろうか。ここは、公園じゃないんだよなあ。

などと思案していると、先に相手から声をかけられた。


「ここで、何してるの?」

「わしらは、ドラゴンを退治しに来たのじゃ。」

「そう。こっちに来て。」


銀髪幼女について行く。あれは、ラッキーアイテムなのだ。

森の中を進んで行くと、洞窟があった。

この中に、ドラゴン居るの?


洞窟を抜けると、ロストワールドみたいな空間に出た。

周囲を高い崖にぐるっと囲まれた、野球場程度の広さの場所だ。

中心付近に見える、巨大な樹が目立つね。この樹なんの樹?

そして。


猫だ。


巨大な、樹の根元で、丸くなって猫が寝ている。とらじまの猫。日向で幸せそうに寝てる。背中に羽があるけど、猫だよな?


「ニンゲンを連れてきた。」


銀髪幼女が猫に伝える。


猫は、くあーっと大きくあくびをすると、ぐーっと伸びをした。猫だね。

ぺろんぺろんと前を舐めると、顔を洗う動作をした。猫だね。

すっとすました感じで座ると、じーっと、我々を見上げる。猫だよね?

みーっと目を閉じて開く動作をしたので、こっちも同じ動作を返す。猫だろ?


「ニンゲン…。ちょっと違うけど…。まあ、いいか。」


猫じゃない?

語尾が、にゃじゃない。


「そこにいるドラゴンの幼体の世話は任せた。ぼくはもうおしまいなので。」


は?


「じゃあ、あとはよろしくね。そこの樹になっている生命の実を持って行っていいよ。ドラゴンが成体になるには1000年はかかるからね。ああ、でも君には必要ないのかな…。」


そう言って、再び丸くなって目を閉じると、やがて光に包まれて、ほわほわほわっと消えていった。


何が起こったの?


「これが、ドラゴンの代替わりか。まさか立ち会えるとは。」


悪魔が言っていることが答えなのだろうか。じゃあ、今の猫は?


「ドラゴン退治できちゃったわね。ある意味。」


え、あれがドラゴンなの?


そして、銀髪幼女もドラゴン?


これは、退治した事になるの?


「討伐を証明するものがないから、1円にもならないわね」


じゃあ、何しに来たん?


「生命の実が、ありますが」


巨大な樹に、ひとつだけ赤い実がなっている。

メイドさんが、無造作にもぎ取る。


「それが、生命の実ならば今すぐ食べないと!あ、でもわたしはいらないわよ!」


賞味期限が超短いらしい。じゃあ、持って帰って換金するのも無理だね。


「俺もいらないぞ。女神の幼体は、成体になるまで最低でも1000年は地上で生きるからな。食べても意味がない。むしろ成長が止まるかも知れない。」

「私も不要です。人ならざるものになる覚悟はありません。」


みんな、要らない、という。

「では、いただきますね。」


生命の実は、メイドさんが完食してしまった。

人ならざるものに、なっちゃったの?


芯は残った。種がある。


「生命の実の種かあ。林檎の種にしか見えないわね。」


クリームの言う通り、見た目は、ただの残飯ですね。


「これで、お嬢様が成体になるのを、見届けることが出来そうです。」


1000年以上、このメイドさんのお世話になることが決定してしまった。

収穫ではあるんだろうけど、目的のお金は?


「お金いるの?」


あるのか?そういえばドラゴンはキラキラしたものを好んで集める習性があるんだった。

ここがドラゴンの巣なら、ドラゴンのキラキラコレクションがあるはず。


「これ」

銀髪ドラゴン幼女が革袋を持って来て、セリカに渡す。

ドラゴン幼女は軽々と持ち上げていたけど、受け取ったセリカは、ぐへっと呻いてよろけた。

革袋の中身は、金貨。

発行した国家や年代が異なるのだろう、いろんな種類の金貨。

だいたい500枚かな?

先代のドラゴンは、金貨限定でコレクションしていたんだね。


「金貨1枚で、今の相場がだいたい40万円だから、500枚なら2億円ね。3人で等分しても、6,666万円ね。」


「やった!これで学園に通えるな!」


ミッションコンプリートだ。


後は、銀髪ドラゴン幼女をお持ち帰りするだけだ。

わしが、保護者になってしまったので。

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