とんでもない、わしは女神さまじゃよ
目覚めると、もう結構遅い時間なのだという。旅館の朝食はもうない、と。
「寝過ぎよ?」
クリームにちょっと叱られた。
しかし、わしは昨夜風呂で決意したのじゃ。
この世界では、わしは幼女として、のんびり生きていくのだと。
地上に使われた女神として、何か任務があるのかも知らんが。
なんも聞いてねえし。
幼女なら、好きなだけ寝ていいのだ。
寝た子を起こしてはいけない。妖怪大先生が仰っておられる。
「ご飯は外で食べましょう」
とのことで宿をチェックアウトして町へ。
喫茶店でモーニングというやつを食べた。
ここは岐阜県なのかな?
茹で卵とトースト、うまい。
エタナル神社の御利益だね、きっと。
わしも、エタナル神社の祭神ような立派な女神にならねば。
などとは、思わないな、うん。だるいわー、そんなん。
ご飯を食べ終えた我々は、乗り合い馬車のターミナルへとやって来た。
乗るのは南行きの便になるそうだけど、西に行くのが運命だったのでは?
「ワンコスギまでは南に向かうわ。そこから西に向かうのよ。」
うーん。遠回りするのかな?ワワンサキは遠そうだ。
先の事を考えると気が遠くなる。
まずは今夜着く宿場町のご飯を楽しみに進むこととしよう。
短期的な充足感を積み上げることが、長期間のプロジェクトを乗り切る秘訣かと思う。
ドラゴンの尻尾のステーキとか無いのだろうか。食べたい。うまそう。
乗り合い馬車は十人乗りで、我々以外の乗客は九人居た。定員オーバーなのでは?
もっとも、我々含め、幼女が六人も居るので、別に窮屈な感じでもない。
幼女率高いな。何かのフラグ?
「悪魔が居ますね」
なんか、病んでそうなのいるなー、って思ってたら、うちのメイドさんも病んでる?
二十代後半と思われる男で、全身黒づくめ、片目が前髪に隠れた、悪人というか悪魔のようなツラ。隠れてる腕に、包帯とか巻いてそうな奴。
「悪魔なんて、神話とか聖書の中だけの生き物ですよね?」
縦ロールメイドのアンがそう言うからには、この世界では悪魔なんて居ないのかな。
でも、ここに女神が居るしね。
「悪魔みたいのなら、こっちにも二人居るけどね」
誰のことか分からないけど、クリームちゃんは割と毒を吐く。
「おい、お前」
隣の幼女から声をかけられた。
金髪のツインテールだ。
ロリンテールだ。
しかし、ガラの悪い幼女だな。
「え?わし?」
「そうだ。お前だ。後で顔貸せ」
うわ、なんだこいつ。
メイドさんを見ると、なんだか緊張した顔つきしてる。嫌な予感がするよ。
乗り合い馬車が止まった所で、ロリンテールは「ついて来い」と言って降りて行った。
もちろん、しかとだ。
はやく、馬車出ないかなー。
「おい!」
ロリンテールが泣くので、仕方なくついて行く。
「俺は、セリカだ。お前は?」
めんどくせえなあ、ヤンキーかこいつ。
どこちゅうだよ?
「セリカ?あなたも女神の名前なのね。王族には見えないけど。」
答えたのはクリームだ。ついて来ちゃってるよ、この子。
「いや、お前には用が無いんだけど。」
ロリンテールがちょっと怯んだ。
縦ロール対ツインテール、勝つのはどっちなのか?
はやく終わらせて行こうぜ?
「あら?私の友に用があるということは、私に用があるということよ。そして私はクリームよ」
縦ロールの、いかす口上に惚れてしまいそうだわ。幼女で百合、尊いと思います。
「そこまで言うならいいけど。今から言う事を聞いて、おしっこ漏らすなよ?」
ツインテールの方は、脅し方が幼女だった。むしろ安心するわ。
「お前、女神だろ。いつ生まれたんだ?ありえない位に貧相なんだが」
「いつって、昨日じゃけど。」
「貧相というのは、女神の格のようなものでしょうか?」
メイドさんが介入してきた。ちょうど、聞きたかったことを聞いてくれた。
「まあ、そんなようなもんかな。格というより、成長度合いかな」
このロリンテール女神、案外いいやつかも。
質問には、ちゃんと答えてくれる。ガラ悪いけど。
「でも、昨日なったにしては、ちょっと成長が早い気もする。何かやったのか?」
何かって何だろうか?
「例えば、昨日人を殺したとか。死者を弔ったとか」
後者は、ともかく。前者は女神の行いか?
神は六日で世界を作り、七日目に人類を滅ぼした。違うな。
でも、神話ってわりと人類が滅びるよね。
「死者は弔ったよ。5人程」
「え?いきなりそんな数を?お前、教会にでも就職したのか?それは、やめといた方がいいぞ」
神社だけでなく、やっぱり教会もあるのか?
現代日本並みに文化がバリエーション豊かなんだな。
「いや、教会なんか知らん」
なんだろうか、もしかして神社に行ったのも良くなかった?
「そうか。じゃあ教会には近づくな。もし行くなら殲滅する覚悟で行け。」
なんでだよ。
「エタナル教には神社しかないから。学園に入ってからも、教会に関わることは無いわよ」
クリームは、異様な話についてきているのか?
わしは、もう飽きてきた。
「神社ならいい。むしろ、おみくじは因果律の確認に利用できる」
因果律、とか日常会話で使うやつ、どんな職業なんだよ。
幼女だから、ニートかな?
それとも、女神は職業なの?
「他にも、いろいろとお聞きしたいことはありますが。馬車が出る時間のようです」
メイドさんに促されて、我々は馬車に戻った。
「お前、もしかしてエタナル学園に入るのか?だったら、俺も一緒に入ってやるよ」
敵に回すよりは、味方にしておいた方が良さそうではあるが。
「そう。じゃあよろしくね」
クリームは、なんでも来いだな。
森から湧いた、全裸の幼女も受け入れてくれたもんな。
大物ですわー。
旅の仲間が増えました。