後片付け(3)We Could Be Together
1台3億円もする自動車は、もれなく痛車だ。何故だ。
「貴族社会は少子高齢化ですので、子供の人気とりが加熱しているのです」
なんと、ちゃんと理由があったとは。
大型車両は売ってなかった。
そもそも、現在製造されているのが、ねこバス号と同型の1車種のみじゃった。
「これを馬にして馬車引かせる?」
「うーん…。あの山に物資を運搬するのは、思いのほか大変かもなあ」
「とりあえず、1台買っておくのじゃ」
痛車の痛い部分は、デザインが選べるというので、熊デザインを指定した。ドラゴン山の熊はデストロイする奴だが、こっちはリラックスする熊だ。クマックマ号と命名しよう。
ねこバス号と同じ設計書から製作された姉妹車。完全手作りなので、完全に一緒ではないが、主要部品と整備手順は共通だ。
代金は、出来立てのブラックカードで決済した。
プラチナを越える幻のカードだが、手に入れてみると、ただのカードだな。
モンスターをキャプターしたり、コレクションしたり、バトルしたりするものでもない。
クマックマ号は、明日仕上あがるという。ドラゴン山に納車してもらうわけにはいかないな。誰か来ないと。やっぱりワワンサキに拠点が必要かな。
「ワワンサキに資金を還元するためにも拠点を借りようか」
ハナちゃんの言う通りであろう。
オエド銀行を通して、最も高価な賃貸物件を契約した。
6階建てのマンションを1棟まるごと借りた。家賃は、月2千万円だ。年間で2憶4千万円。国債は、300億円発行されるので、あまり減らないな。
5年後に50億の利子をつけて償還するので、無駄遣いはいかんが。
このマンション、偶然にも学園跡地の目の前にある。
「学園再建しちゃう?」
土地の所有者がエタナル教なのが問題、という話であったが。今や、エタナル教も、うちの傘下みたいなものだ。うちには初代巫女様が居るからね。
「むしろ、再建する義務すらあるんじゃないかなあ」
「いいわね。汚職の温床だったんでしょ?利益が見込めるのはいいことよ」
「そうだね。国債の償還のためには、利益が出る事業もしないとね」
学園が再建されたら、通ってもいいし。
そういえば、学園と言えば疑問に思っていたことがあるぞ。
「わしは生まれたてのあほの子なので、学校行くのは当然じゃろ?」
「そうね」
あほの子の部分、スルーしないで欲しかった。自虐ネタすべり乙。
「ハナちゃんは、7歳から銀行員で修羅の道を歩んでおったから、17歳の今からでも学校に通いたかった。そうじゃろ?」
「そうだね。見た目だけは6歳児相当だしね」
ハナちゃんは分かる。
「クリームちゃんも、見た目だけは6歳児じゃが、3000歳じゃろ?今さら学校行く必要ある?」
「3000年生きてても、学校には通ったことないのよ。学園生活をしてみたかったの。寮の相部屋の子達と騒動起こしてみたり。クラクラ白書っていう読み物の世界に、ずっと憧れて居たから。ターマが独立しちゃうと通いづらくなるから、今のうちかなって」
ターマのけちけち商人にしては、随分とミーハーな理由じゃったわー。
「だったら、なおさら学園の再建は必要じゃないかい?4人で、学校をかき回して楽しもうじゃないか」
無くなったと思った学園編が復活するようじゃな。
「わたしは、ほんとにろくさいじなのでー。しょうがくせいになるのです」
コルサちゃんが一番ノーマル説、あるわ。
なお、小学生と言う言葉は、わしが教えたが、この世界には無い。
学校は9年間通うので、中学生も無い。よって、ちゅうに病の語源が、この世界では謎じゃ。
9年通ったら、みんな社会人になる。高校も大学も大学院も無い。
なので、学校に小中高も大も無い。
地域や職場に部活動があるので、10代の青春はそういうところで昇華させる。インターハイみたいな大会もある。
CDもネット配信も無いので、町中にライブハウスがある。軽音楽部の活動場所にも困らない。
大学の研究室相当のものもある。貴族から資金さえカツアゲできればやっていけるので、何の利益にもならない、ヘンテコな研究機関が沢山ある。
この世界の庶民は、楽しそうでいいなあ。
その日は、購入したマンションに早速泊まった。
ここも家具・備品付きなので、明日のぱんつさえあれば即入居できる。
もちろん、大浴場もある。ここは6階の展望大浴場だ。
「いいゆだねー、うひひひーっ」
「月がきれいじゃのう」
6階の展望風呂からは、月がよく見える。
「そうね。悪魔の湯から眺める月もいいけど。ここもいいわね」
「なのです」
「月か…銀行に居た頃は眺める暇なんかなかったなあ」
ふいに、さみしさを感じた。
わしらは、いつまでこうして一緒にいられるんじゃろうか。
こいつらと共にあり続けるために、少しはやる気を出してみようか。
わしの神話を、重厚なものにしてみたい。そんな気持ちが沸き起こってくるのだった。
明日の朝には忘れていると思うが。




