後片付け(1)Angel Don't Cry
「あいつ誰だっけ…?」
「…さあ?」
「なのよ?」
お前ら、薄情じゃなぁ。
「ひとつ分かったが事がある、女神は1万年くらい生きるということじゃ」
あのツインテールの話は、さっぱり分からんかったが、それだけは分かった。
「1万年…生命の実の効果がもつのかしら?」
みんな、黙り込んでしまう。1万年という時は、あまりにも長過ぎる。そんなにも長く、共に居られるのだろうか、と。わしらの人生、別ればかりになってしまうのでは?
誰だっけと言われてしまうようなセリカ先輩が、みんなの心に開けていった穴は、小さくても深く暗いものじゃった。
「いよー。元気だったか?」
「は?」
「またな、って言っただろ?」
翌日に、セリカ先輩が帰って来た?
女神のパワースポットに、全裸で転がっておったそうな。メイドのミーがまた拾って来た。
「前より、小さくなってない?」
「4歳児くらいに見えるんだが」
「なのよ?」
セリカツインテールは、6歳児くらいだったはず。わしと、同じくらいの大きさじゃったぞ?今は、2歳分くらい小さいのじゃがー?
「弱くてニューゲームってやつだ」
「2周目は弱いって、なにそれ」
レベル99で最初からやり直せる、強くてニューゲームなら聞いたことあるんじゃがー?
「実は俺、3周目なんだぜ?」
どうにも要領を得ない説明するので、よく分からなかったのじゃがー。
本試験に落ちて成体になれず、留年だか浪人だかになったらしい。さっぱり分からない。
「次も、すべるとどうなるのじゃ?」
「0歳かららしいぞ」
0歳児が、獣だらけの山の中に生まれちゃうわけ?即死なのでは?
「それ、次で最後なんじゃないか?」
「だよなあ?だから、もう成人式は諦めて、ずっと地上に居ようと思う」
「そんなの可能なの?」
「うーん。分からん。もしかしたら寿命もあるのかも知れない」
使えねー。先輩使えねー。こいつから、何も得られないわー。
ただ一つ前進したことがあるとすれば、ちゃんと年下の妹になったという事じゃなー。
「昨日、聞きそびれたことがあるんじゃがー」
「なんだ?覚えていることなら、答えるぞ」
聞きたいことは、2つか3つか、そんくらいあるぞ。
「神社と学園と国王の家を、焼き討ちした?」
「そんなことしたっけ?」
「…しましたよ。私も一緒にやりました」
代わりに答えたのはメイドのミーじゃった。なんか、今の答えで、次の質問が不要になった気がするのじゃがー。
「先輩って、あほなん?」
「なんだとっ!?」
「はい。女神はあほです」
またしてもメイドの方が答えた。女神で一括りにしないで欲しいのじゃがー。
「もう一個あるぞ。神社の初代巫女はどっちじゃ?」
「俺だぜ!」
「違います。私です。」
女神はどこまであほなのか?
あもう一個あったか。
「ミーは、転生を繰り返しておるのか?」
クリームちゃんみたいな長命の可能性もあるが。であるならば、生命の実を食べなかったはず。だとすると、異世界知識で推測するとそうなるのじゃ?
「今回が12回目くらいだと思います」
引っ越しの話みたいなのりだね。わしの前世での引っ越しが、それくらいじゃったな。
「それは鍛錬が捗りそうですね。12倍強くなれそうです」
「武術はいくつか習得できましたね」
ミーの規格外の強さは、人生単位で11セットもトレーニングした成果かあ。修羅じゃのう。
キナコは、転生できる方法が分かったら試しそうじゃな。
「2問目の意図が分からないんだが?」
「セリカの過去をミーが知っておるということはじゃ。こいつら、かなり前から知り合いじゃぞ」
「あぁ、オタマ市の乗り合い馬車の中で、まったく気づいてなかったわよね」
「ミーの方は、反応しておったがの」
当然といえば当然かも知れぬが。1万年も生きているから、ボケている?
「ちょっと待て、女神の幼体は不老不死だ。いや、不死かどうかは分からない。しかし、老いる事はないんだ。違うんだ、そうじゃないんだ」
「私、なんとなく分かるわ。100年くらいでだいたいの事は忘れるのよ。人の脳って」
そうか、クリームちゃんも3000年だっけ?ロリばばあじゃからな。
「さすがに、自分の従者まで忘れるのは、どうなのか…」
ここでセリカを弄りすぎると、100年後は我が身なので、黙るわしじゃった。




