Goddess Bless You
「俺の神話の最終章を決めに来たぜ」
何やら、カッコイイことを言う全裸のセリカ先輩。
真っ黒な悪魔の湯の中で、セリカ先輩は、家出中のことを語ってくれた。
長かったので、コルサちゃんはまったく聞いていなかった。まあ、聞いても、さっぱり分からんかった。聞き流していいんじゃないかな。
「ミーと一緒に、エタナル教の総本山に殴り込んだんだぜ。あのうんこ神父が居るって聞いたからな。あいつ、ワナビー教会の神父だったくせに、どういうわけか、エタナル教に居やがって、学園の理事になってやがった。王家まで巻き込んで好き勝手やってやがった。1万年も経ってるのに、ニンゲンは成長しないな!しかし、ばかだなあのうんこ!エタナル教は、俺達の縄張りなのにな!」
分かったのは、セリカ先輩が1万歳以上ということくらい。正確には1万6歳とかだろうか。正確な年齢は本人にも分からないそうだ。
でも、なんでもいいよ、セリカ先輩が楽しそうだからね。
「本当はなー、ズンダでお前が大軍に囲まれたところで、俺が助けてな、それでおしまいのつもりだったんだ。俺、あの騒ぎをずっと見てたんだぜ?たこ焼き食いながら」
やっぱり、たこ焼き食ってたツインテールは、先輩じゃったか。
先輩のお陰で、わしは、あの場を乗り切れたよ。
「あの国では、ずっと戦争してたろ?バカなニンゲン共が。俺が祈りを捧げてやってなかったら、もう滅んでたかもな、あいつら」
コルサちゃんが、うちまでこれたのも先輩のお陰?
「ワワンサキでは、うんことばかを退治したしな。だから、俺も、もうそろそろおしまいだと思うんだよな」
おしまいって、なにがだよ。
「お前は、ほんとにすごいな!俺は、国を3つも治めた事なんかないぞ?」
「それは、違うのじゃ。みんなの力なのじゃ、わしはただのぽんこつ幼女なのじゃ。セリカ先輩にだって、大きな恩があるのじゃ」
「そうか?俺達、会って7日くらいしか一緒に居なかったぞ?」
「それでも、セリカ先輩抜きでは、今のわしはないのじゃ」
セリカ先輩の体が、ほわほわほわっと輝き出した。
「…やっとおしまいか」
湯舟から立ち上がって月を見上げる先輩を、わしは、そっと抱きしめた。セリカ先輩も、わしを、やさしく抱きしめてくれる。
「俺が、ドラゴン一家の一員だった瞬間は、俺の神話の中で最高にクライマックスだぜ!」
月から、強い光が降り注ぎ、セリカ先輩の体を包む。
光の中で、セリカ先輩が、消えていく。
「じゃあな!またな!」
セリカ先輩は、地上を去った。わしがこの世界に来て初めての満月の夜に。
女神セリカの神話は、どこに行けば読めるんじゃろうか?
わしの神話は、誰が残してくれるのじゃろうか。




