どらごん戦争(16)Crazy Sister
コルサ様だー!コルサ様が出たぞー!捕獲しろー!
湯上がりに牛乳を飲んでいたら、巫女共が騒ぎ出した。
「生け捕りだぞっ!殺すなよっ!」
「がってんしょうちのすけー」
「コルサ様ー!!」
「コルサ様って、誰さ?」
「あんた新人?とにかく、追って」
「やっちまいなー!」
「きゃー!いやー!いっそころしてー」
なんか、さっきとは違う部族が出て来たな。
「にげ、るのよー、うーわー」
珍しく焦ってるな。一体、ここで何をやらかしたんだろう。
「なにごとかしらっ!?」
「に、逃げるぞ。何か分からんないけど、危険だっ」
「きゃー、うわー、うひー」
とにかく逃げるのじゃ。
しかし、まわりこまれてしまった!
宴会場みたいな大広間で、コルサちゃんが、巫女共に取り囲まれている。
何が始まったのかと言えば、宴会だ。鍋パーティだ。
「あ、あちゅ、わっちゅいっ」
コルサちゃんは、熱々の湯豆腐を押し付けられて、泣いている。
「なんてかわいいの」
「おぬしも、わかるか?」
「もう逃がすなよ」
「メイド服も、かわいいね」
「一生、飼い殺せ」
大人気ですね。
ズンダ王国では、王女様は国民のスーパーアイドルだという。
ズンダの国民いかれてんな、と思ってたけど、いかれた連中がここにも居たよ。
そういえば、ズンダ王家の主神と、エタナル神社の祭神は、同じ女神リーザか。
いかれてんのは、女神リーザなのか?超大物の名前にあやかってしまったなあ。
同じ神に仕える身が相手なので、コルサちゃんは逆らえないんだね。
おとなしく、巫女さんのかわいがりを受けている。
「この鶏肉のミンチうまいぞ」
「こっちの白菜もいい感じよ。くたっとなる前にどうぞ」
「わしは、白菜はくたくた派なのじゃ」
わしらは、ただひたすら鍋の御相伴に預かった。
「コルサ様の、あの一撃、今思い出しても震えますわ」
「あれな。あれは、やばかった」
「やばっくさばす」
「何があったの?」
「神父を一発でのした。殺せばよかったのに」
「はんぱねーっすわー王女様ー」
「なんじゃあわれえ!しばきあげるぞ!って、もう殴った後に言ったの萌えた」
神父は、随分嫌われているね。
どんだけクズ野郎だったんだろう。
ところで、王女様ってばれてるのまずくない?
「あの腐れ神父。あいつが来てからメシがマズくなった」
「あれは、むしょのめしよりひどかった」
「ああ、まずかった」
「病院食の方が、遥かにうまい」
食べ物の恨みか。そりゃ殺されても仕方ないのう。
コルサちゃんは、悪の神父に痛快な一撃を食らわせた事で、巫女共のアイドルとなったらしいな。
「国王が神父と組んで、神社と学園の経費を着服しているとは聞いてたけどさ。食費にまで、手を出してたのかい。そりゃ恨まれるわ。ああ、そうか、孤児院のまずいメシもあいつらのせいだったのか。ざまあだな」
「やることが小物ねぇ。ターマでそんなことしたら、ターマ川に浮かぶわよ」
「おやぶーん、たすけてー」
おっと、うちのメイドさんのヘルプコールじゃ。
「おまえら、これを見るのじゃ」
わしは、巫女共にプラチナカードを見せた。この紋所が、ほら、あれで、なにじゃよ。
「こいつ、幼女のクセにプラチナ持ってやがるぞ」
「噂のドラゴン爵って、この子じゃないの?」
「リーザ様!?」
「のじゃロリよ!実在したのね!?」
「はんぱねーっすわードラゴン爵様ー」
あ、待て、あつあつの湯豆腐はやめろ、やめるのじゃ。
「わ、私達だけでも逃げるべきかな?」
「白菜が、くたくたになるわよ。早く食べなさい」
「君は、何事にも動じないね…」
しまった。この国では貴族は庶民の下僕じゃった。紋所は逆効果じゃった。
「また来て下さいねー」
巫女共総出で送り出されて、わしらは神社を後にした。
わしの名が、リーザで助かった。
祭神と同じ名前の幼女相手に、これやばくね?ってなって解放してくれた。
日が暮れてしまったので、帰るのはあきらめた。夜間の山越えが出来るのは、暴力あんぽんたんの近衛騎士だけ。わしら幼女は眠くなるの早いからね。
宿をとるのは止めておいた。テロリストに見つかるとやばい。
考えてみれば、今日一日うろついていたのが危険過ぎた。
わしらは、マンションに戻って来た。1階の大浴場と図書室は無事だったので、図書室に泊まる。まさか、黒焦げのターゲットに戻ってきているとは、テロリストは思うまい。
「収穫はあったと思うよ。ワワンサキにズンダを盗りに行く動きがあったけど、動機がずっと分からなかった」
「王女様が、先に攻めてきたからね」
「すぱいなのよ?」
「エタナル教の神父をやっちゃったからね。どうみても宣戦布告です。ありがとうございました」
「でも、なんで王女だってばれたのかしら?」
「これなのよ」
コルサちゃんが十字架を差し出したので、3人で検分する。
「エタナル神社で売ってる十字架かい?」
「これがどうかしたの?これは、ターマの神社では売ってないわね」
「そうなのかい?ズンダとワワンサキでは売っているんだよ」
「つくづくターマはワワンサキとは別の国だと感じるね。実際、別の国になったけどさ」
「ここなのよ」
十字架を立てた時の底面に、小さくズンダ王家の紋章があった。これを彫った職人、超絶技巧だな。
これは気付かなかったな。ズンダ財宝の目録に載ってなくて良かったわー。
「はんこになるのよ」
「まさか、何かに押したのかい?」
「しんぷのひたいをこれでついたのよ」
神父の額にズンダ王家のハンコを押しちゃったのかー。
「ねえ、その迂闊っぷりだと、ズンダの国民にもばれてるんじゃないの?」
確かに。




