どらごん戦争(11)王女の林檎
悪魔課長が、痛車に続いて温泉をくれた。いいやつなのでは?悪魔なのに。
悪魔課長は、我々に悪魔の湯を明け渡すと、家に帰って行った。
やつが居なくなったところで、早速風呂に浸かる。
拾った子猫は、魔王の幼体じゃった。
成体になるまで最低でも1000年はかかる。ドラゴンと同じじゃな。
魔王を育てるわしらには、悪魔の湯に浸かる権利が与えられた。
悪魔の湯は、悪魔の力で湧いているわけではない。
悪魔の湯が湧くところで、魔王の幼体を育てるのだ。
温泉探索を命じられた悪魔課長が、ドラゴン山に源泉を発見し、ニンゲンが入り易いように整えた。魔王を拾ったわしらは、それを譲り受けた。
温泉の湯は川に流してあるので、湯舟で遊んでいた魔王がどんぶらこしてまったらしい。
コルサとキナコは、亡命中に悪魔の湯に浸かった効果で、一度死んだのに蘇ったのじゃろうか?
後で、キナコ隊も入れてやろう。どらごん組は、福利厚生を重視するのじゃ。無給じゃけどな。
「いいゆだなー」
ふふんふーん、と歌いながら、コルサちゃんは、魔王の入った手桶をおさえてる。
また、どんぶらこしちゃったら大変だからね。
ハナちゃんは、人である事を辞めようとしているんだけど、気にしている様子は微塵もないな。これで幼女隊は、永遠の幼女隊になるね。
「ハナちゃんも、エターナル幼女になるんじゃなあ」
「なんだい、それ。悪魔の湯に一回使った程度じゃ、ならないんだろ?」
石碑に彫られた温泉の効能によると、不老不死になるには、最低でも一か月は湯治を続けなさいと、あるね。
だとしたら、コルサに宿っている力は一体なんだろう。彼女は一回浸かっただけだ。
毎日、一緒に風呂に入っているから、湯舟に染み出た女神の出汁を吸収したとか?
悪魔の湯以外にも、何かありそうじゃのう。
「りんごなのよ?」
林檎が食べたいと、コルサちゃんが言うので、神社跡地に来た。
ドラゴン山の林檎といえば、ここだ。
「あの林檎なのかな?毒はないんだろうね?」
毒は無いだろうけど、害はあるかもなあ。
「この遺跡は、初代エタナル神社なの?こんな場所だったかしら?」
クリームちゃんが来た時は、ここはまだ山では無かったのかな。
「たべてー」
コルサちゃんが手近な実をひとつとって、ハナちゃんに差し出す。
「え?私が食べるのかい?」
林檎を受け取り、もしゃもしゃ齧るハナちゃん。
「どうよー、なの?」
「これは、林檎なのかい?すごく、おいしいよ」
「ちょっと貸して」
ハナちゃんから林檎を受け取り、ぺろっとするクリームちゃん。
昭和の刑事ものなら、これは上物!とか言うシーン。
何も言わずに、スグに吐き出す、クリームちゃん。
「あれ?まずいかな?おいしいでしょ」
返された林檎を、ハナちゃんは全部食べた。
「これは、生命の実の亜種よ」
うん、だろうなと思ってました。
味で分かるものなんだね。そんなにおいしいのかな。
女神は食べちゃダメって、セリカ先輩が言ってたから、食べないけど。
「生命の樹の近くだから、交配しちゃったんじゃろか?」
「そんなところなんでしょね」
「うわー。どらごん組の領地は、やばいものだらけだねえ」
コルサちゃんは、生命の実の亜種を食べ、悪魔の温泉に浸かり、女神の祈りを受けた。
三つの奇跡のコラボで、この世に再び蘇る事が出来た、のかな?
謎が残るのは、この山の獣に後れを取ったことか。
「ちょっと!他に方法はないのかい?」
「乳歯でしょ?大丈夫よ」
ハナちゃんがエターナル幼女化したのか確認するため、人体実験中。
「あ、こら、それは」
めきっ
ハナちゃんが、声も無く、ただ涙を流しながら震える。
なんて残虐な事を。幼女の前歯を抜くなよ。
コルサちゃんが実行犯で、クリームちゃんが教唆した。罪が重いのはどっちなんだっけ。
もっとも、悪魔の湯に浸かっているので、すぐに癒えるはず。
疲労回復、疾病回復、美肌、の効能もあるのだ、このお湯。
「うー…、痛みはもうひいてきたよ」
「永久歯が生えかわれば、確定よ」
「なんてことするんだよぉ…」
クリームちゃん、マッドサイエンティストの気質がある。
メルちゃん号を改造した技術力は伊達じゃないな。
しばらく湯に浸かっていたけど、のぼせる前にあがることにした。
ハナちゃんの前歯は欠けたままだ。
「さすがに、にょきっとはいかないわね。私も、永久歯はひと月はかかるもの」
「やる前に言って欲しいなあ。だいたいの事には協力するからさあ」
幼女隊の序列を決める儀式だったのだろうか。
ハナちゃんは、クリームちゃんには逆らわない事に決めたようだ。




