君は天使を見たか?
しりがいたい。
馬車は乗り心地悪いわー。
もう死んじゃうかも。
ぐったりした頃合いに、宿場町に着いた。
入口の町案内図によると、ここは、オタマ市のナマタ村。
町並みには、統一感というものがまるでない。
レンガ造りの建物があれば、日本家屋のような木造建築もある。
どういう進化を辿るとこうなるのだろうか。まるで現代日本だな。
まずは、馬車を処分するため、中古車センターのようなところへ行く。
この世界の馬車はリセールバリューが高い。
乗り合い馬車の無い区間だけは、こうやって馬車を転売して凌ぐそうだ。
出発地のターマ市での購入金額よりも、高く売れたとか。
わしなら、もっと高級な馬車でゴールまで行くが。
縦ロール達は、商人なんだそうで、ケチじゃ。
今夜は、ここに宿泊するので、宿を探しつつ町を散策する。
宿場町なので宿が当然多いが、飲食店も多い。
お団子屋まである。
ここは日本なんじゃないの?
辿った街道は東海道なのでは?箱の山を越えてきたのでは?
お団子屋の「もちもちおもっち」なんて書かれた幟を眺めて、今更ながらに気付く。
日本語じゃん。
思えば、クリーム達とも日本語で会話している。
なんでじゃ?
まあ、どうでもいいや。楽でよい。
神社があった。
この世界の宗教施設は、日本風だね。
もしかしたら、西洋の教会風なやつもあるかも知れんが。
赤い鳥居の隙間から見える境内では、巫女さんが掃除をしている。
異世界感ないのう。
「あら、この神社、エタナル教なんじゃない?」
どこで区別がつくのか分からないが。この世界の宗教も、いくつか宗派があるということか。
「ここに祭られているのは、リーザなのよ。お参りしていきましょう。」
自分の名となったリーザは女神の名だと聞いたけど、エタナル教とやらの祭神なんだな。
みんなで、鳥居をくぐる。
祭神と同じ名の女神が降臨しておるとゆうのに。
何も奇跡は起こらない。
境内の土鳩が、一斉に白い鳩になるとか、起きないね?
巫女さんも、軽く会釈するのみ。
目の前に女神が降臨しているのに。
手を繋いで歩く幼女二人を微笑ましく見つめるだけ。
わし、ほんまに女神なんじゃろか?
メイドさんは、この世界に来る前に天使にあったそう。
役人のおじさんみたいな天使が、案内してくれたそう。
「あなたは異世界行きですねー。そこに居る女神を拾って下さい。後は現地の状況次第で。あ、女神は幼女の形なので、気を付けるように、とのことです」
なんか、ブラックな職場を案内するバイト紹介所みたい。
わしは、そんなとこに行ってもいないし、天使にも神にも会っていないのだけど。
まあ、いいか。
そのうち、なんか分かるじゃろ。
お参りじゃ。
願い事は、宿でおいしい晩御飯が出ますように。
だって、自分も女神じゃろ?
同僚に、厄介な事は頼めないでしょ。
おみくじもひいた。
お賽銭も代金も、縦ロール幼女がくれた。
小吉だった。女神への忖度はないのか。
小吉
方角:西
旅立ち:よい
金運:かなりよい
出会い:とてもよい
ラッキーアイテム:熊
熊って、アイテム?
おみくじを見た縦ロール幼女クリームに、ワワンサキまで一緒に行かないか?と誘われた。
ワワンサキはここから西なんだよね?
おみくじに従うなら、そういう事になるね。
クリームは、これはきっと運命の出会い!とか、ゆりっとしたこと言っている。
彼女の実家は、ターマ市の老舗商会で、お金持ち。
さっき、馬車の中で聞いた。
仲良くしようじゃないか。
次に、「閉店セール」の幟の立つ、衣料品店に入る。
明日のぱんつ買わないとね。
ところで、異世界でも、衣料品店は永遠の閉店セールしてるのかね?
メイドのミーと縦ロール幼女のクリームに、着せ替え人形にされることしばし。
ぱんつと、服を数着、靴、山登りに使えそうな大きなリュックを購入。
レジで、死体から強奪した金貨を出すと、断られた。
「使えるけど、お釣りが無いからごめんね」
と。
縦ロールにたかっておいた。
金貨は、結構な価値なんだな。
金貨だもんな。
現代日本なら、一枚数十万円するんでなかった?知らんけど。
そろそろ、宿を探そうか。
老舗の温泉旅館にしか見えない宿に泊まることにした。
熊肉を買い取って貰えたので、宿代はかからず。むしろプラス。
畳敷きの八畳間。ここに大人二人と幼女二人で泊まる。
障子を開けると、日本旅館につきものの謎空間まである。
部屋に通してくれた中居さんがお茶を入れてくれた。
おまんじゅうを食べつつ、いただく。
「どちらから、来られたんですか?」
「ターマ市よ」
「山を越えられたんですか?それは大変でしたね」
びっくりを越えて戦慄という感じの中居さん。
ターマから山を越えて来た宿泊客が相当に珍しいのか、女将さんまで挨拶に来た。
「どちらまで行かれるんですか?」
「首都よ。学校に入るの」
「もしかして、エタナル学園ですか?」
「よく分かったわね?」
「あそこなら、オタマ山を越えてまで行く価値がありますからね」
縦ロール達は、ターマ山と言っていたけど。
山を挟んで呼び名が変わるというのは、それだけ山を越えた交流が無い、ってことなんだろうな、きっと。知らんけど。
「食事は今準備中ですので。お風呂に入られたらよろしいかと。露天風呂は、うちの自慢ですよ」
あれ、スケベインベント発生?