ドラゴンファミリア
悪魔がリビングでお茶を飲んでいた。
買い取って欲しいものがあると言うので、縦ロール商人のクリームに任せる。
「ドラゴンだからなー。強そうじゃないとなー」
「セブン、ガイア、ダイナ、タロウ…」
「チキン、ポーク、ミート…」
「お肉よりお魚がいいかのう?」
わしらは、重要な事をすっかり忘れていた。
幼生ドラゴンの名前だ。
「ドラゴン」
本人からの申告があった。
ドラゴンの名前は、ドラゴン。
「ドラゴン…。ドラちゃん」
幼生ドラゴンが、こくりと頷く。
猫に、ねこと名付けるようなものか?
なくはない。
本人が、決めたのだから、いいか。
「はい、これ」
クリームから、鍵を渡される。
商談は終わったんだね。
「100円で買ったわ」
「何を?」
「馬の不要な馬車」
「あー、メルちゃん号か」
勝手に、名前付けるなよ先輩。
「持って帰れなくて困ってるっていうから。買い叩いた」
どういう交渉をすれば、神社のおみくじ以下で車が買えるのか。
自分達で作るはずだった車が手に入った。
「魔法少女メルリの絵は、機能に関係ないわよね?」
このキャラ由来で、メルちゃん号なのか。
「ないじゃろう。むしろ邪魔じゃ」
「こいつ、何食べるんだ?」
「燃料が何なのかは、重要ね」
みんなで、痛車を眺める。
明日から、こいつのリバースエンジニアリングと改良をしよう。
玄関前にあると邪魔なので、メイドのミーに運転して貰って、馬小屋に入れておいた。
ミーは、前世で大型特殊免許も所持していたそうだ。
どんな前世だったんだろう。
晩御飯前に、マンションの1階を探検する。
さっき入った団子屋以外にも、定食屋と雑貨屋があった。
これらのお店は、マンションの住民以外も利用できる。
図書室もあった。ここは無料で解放されている。
この国では、本は共有財産だからな。
マンションの住民専用区域には源泉かけ流しの大浴場。
後は、倉庫とか護衛の詰め所など。
このマンション、家賃が高いだけの価値はあるね。
定食屋で、今日の日替わりを食べる。
他のメニューは一切ない。
近所住民にとっては、毎日のご飯を食べるところ。
嗜好とか贅沢の類ではなく、日常の一部なので、その日出されたものを食べる。
客は全員常連なので、ニンジン抜いてね、とか好き勝手に頼んでいる。
もっともリクエストが通るとは限らない。
ニンジン抜いてねと言った少女はニンジン山盛りにされていた。
常連相手なので店側も遠慮がない、というか、おかんみたいなもんだな。
今日の日替わりは、はんまるぐ定食だ。
球体を半分に割ったような形状の、ハンバーグのようなものだ。
この世界のネーミングセンスは、よく分からないが、うまい。
ドラちゃんは食べ終えると、またしても店内をうろつきはじめた。
お肉より魚が好きなようだが、お肉もよく食べる。
おかわりして、定食屋のおかんを喜ばせていた。
「俺らの、家名どうする?」
セリカ先輩に言われて、またしても、名前を考えることに。
銅のクレジットカードで、家名が無いのは困るらしい。
明日までに、銀行に申請しないといけない。
「家名もドラゴンがいいな。かっこいい」
「つまり、ドラちゃんは、ドラゴン・ドラゴン?」
わしは、ドラちゃんの保護者なので、同じ家名になる。
「いいんじゃないかしら。神話に出てくる、最初の神みたいじゃない。」
この世界のネーミングセンス分からんのう。
最初の神とやらの名前は、そのうち図書室で調べてみようか。
「俺はセリカ・ドラゴンだな!かっこいー!」
え?お前もドラゴン一家なの?
さっきも、「俺らの」って言ってたもんな。
「よろしくな、リーザお姉ちゃん!」
俺の妹かよ、こいつ。年上の妹って、何それ、萌える。
女神レベルとやらで、決まったのだろうか。
「そうなると、家賃は2世帯で折半になるかしら?」
「いや、人数で按分するのが妥当じゃろう。うちは200万円で、カステーラ家は100万円じゃ」
妹様からも、徴収しないとな。
「セリカ、お前は65万円をわしに払うのじゃ」「
「え!?多くない?」
妹様が、お姉ちゃんは横暴だ!悪魔だ!鬼だ!おにーちゃんだ!と騒ぐので、クリームが仲介に入った結果、妹様の負担は75万円に増えた。
「末っ子の分を、姉2人で折半しなさい」
こうして、ドラゴン家が創業された。
わしらが騒いでいる間、末っ子ドラちゃんは、定食を更におかわりしていた。




