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わしは女神なのじゃ、名前はまだない

 ある日、森の中で、その女神は生まれました。


 森の中、樹々の合間から穏やかに差し込む陽ざしと、暖かい風に包まれ、メイドさんに膝枕されている幼女。

 その様子は、宗教絵画のようにも見えます。ただし、邪教のものでしょう。

 何故ならば、幼女が全裸だからです。たとえ、幼女でも全裸で森の中に転がしておいてはいけないですね。


 ここは、どこなんじゃ?

「異世界ですよ」


 わしは、だれなんじゃ?

「女神様ですよ」


 おまえは、なにものなんじゃ?

「あなたのメイドです」


 幼女は、目覚めた。


 そうか、わしは幼女で女神で、メイドが居て、ここは異世界か。


 生まれたての女神様は、人間の幼女の姿をしていました。彼女には、前世の記憶があります。日本という国で暮らす、50過ぎのおっさんの人生を覚えています。


 女神とは一体どういうことか。戦の女神なのか、音楽の女神なのか、まさか水の女神?


 そんなことよりも、今は重要な問題があります。

 明日のパンツさえあれば生きていける、とは言いますが、今日のパンツすらなければ死んでしまう、ということではないでしょうか。


 幼女を小脇に抱えたメイドさんが、森の中を歩きます。

 目指すのは、この世界の人々が居る場所です。

 パンツをくれる善良な異世界人を探すのです。

 川を下流に向かって進んで行きます。

 川では、先程幼女が溺れました。生まれて5分で死ぬところでした。

 まだ、ちょっと濡れています。


 森の中で、2人?1人と1匹?は、残念な白骨死体を見つけました。

 白骨死体は、大人と子供のセットでした。

 大人は立派な剣を腰に付けていたので、メイドさんが貰い受けました。

 子供が持っていた短剣は、墓標のかわりに地面に突き立てました。

 まるで、伝説の聖剣のようですね。森の奥深くで木漏れ日を浴びてきらきらと輝いています。

 金貨と宝石などの財宝がいっぱいに詰まった革袋も転がっていたので、こちらも貰い受けました。


 死体剥ぎ、とも言いますね。

 でも、遺体を埋葬してお墓を作ってあげたので、許して欲しいです。どうせ、死人に口なしです。どうして、こんなところで力尽きていたのかも分かりません。


 この森は、人が来る場所ではありません。

 今も、おそろしい獣の唸り声に囲まれています。


 彼女達が、森を抜けると。やりました、第1異世界人との遭遇です。

 でも、その異世界人はすぐに死んでしまいました。

 おっさんなので幼女のパンツは持ってないでしょうけど。残念ですね。

 異世界人は4人居ましたが、全滅しました。おっさんばかりでした。若い男も1人居ましたが、そいつだけは逃げました。あるじを置いて堂々と逃げるなんて、ある意味立派ですね。


 おっさん達は、熊に殺されたのです。

 後に残ったのは街道で立ち往生する馬車だけです。おっさん達は、この馬車を守って死んだのですね。つらいお仕事ですね。


 馬車の中に居るのは、縦ロールの幼女と、縦ロールのメイドです。

 どうやってセットしているのでしょうね?縦ロール。生まれつき縦ロールを装備しているのかも知れませんね。縦ロールの崩れた時、彼女達は死ぬのかも知れません。


 縦ロールのメイドが馬車から降りてきます。手には包丁を持っていますね。

 熊の解体ショーでしょうか。


 でも、解体ショーは延期されました。

 女神様を抱いた方のメイドが先に熊を倒したからです。

 おっさん達のことは見殺しにしましたが、縦ロールの幼女からはパンツが剥ぎ取れそうだったので、助ける事にしたのです。

 あっという間でした。メイドは強いんですね。エタナル神社の初代巫女はドラゴンを倒したという伝説もあるくらいですからね。メイドは地上最強の生物かも知れません。


 ふたりの縦ロールは、全裸の幼女に驚きましたが、1人と1匹を馬車に乗せてくれるといいます。ワワンサキまで行くそうです。ターマ山を越えて、ワワンサキまで行くなんて、きっとお金持ちですね。

ターマ山は、とても危険なので、越えるには沢山お金が要りますから。


 メイド2人が、死んだおっさん達を片づけている間、縦ロールの幼女と、女神様な幼女は馬車の中で待ちました。縦ロールの幼女は、自分の明日のパンツを女神様に渡しました。


 なんで全裸なの?


 とは、聞きませんでした。

 何故ならば、全裸の幼女を担いだ方のメイドの剣には、ズンダ王国の紋章が刻まれていたからです。しかも、暴力あんぽんたんのズンダ王国騎士団のやつです。中でも最凶最悪の近衛騎士団のものです。


 まずいです。

 全裸に剝かれたくありません。


 縦ロールの幼女は、クリーム・カステーラ、だと名乗りました。縦ロールのメイドは、アン・オモッチです。おやつみたいな主従ですね。


 女神の方の主従には、まだ名前が無かったので、名乗れませんでした。


「わしの名前は、わけあって明かせぬのじゃ」


 女神様は、誤魔化しました。名前はまだない、なんて言ったら拾われたばかりの猫みたいですからね。

 メイドさんに拾われたばかりの幼女ですから、似たようなものですけどね。

 でも、亡命中の王女と近衛騎士だから、身分を隠しているんだわ、とおやつコンビは思いました。

 ズンダ王家は最近、みんな死んじゃったはずです。革命、というやつが起きたので。

 でも、王女だけが1人ちゃっかり逃げたらしい、そんな噂があります。王女付きの近衛騎士はドラゴンよりも強いですからね。あり得る話です。


 縦ロールの幼女は、興奮していました。

 だって、王女様が、のじゃロリだからです。

 のじゃロリなんて、物語の中でしか見たことありません。まさか、実在するなんて。


 こうして、女神様は、のじゃロリ王女として、はじめてのお友達と旅を始めたのです。

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