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第玖話 緊張しすぎて緊張しない

連続投稿

 

 説明せねばなるまい。

 なぜ一番合戦式部大輔華恋いちばんがっせんしきぶたいふかれんが摘発をされてしまったのかを。

 それは三千院播磨守御門さんぜんいんはりまのかみみかど吉祥寺権少納言怜きちしょうじごんしょうなごんれい遷宮時少納言蒼海せんぐうじしょうなごんそうかい花郷井肥後守海星はなむらいひごのかみほしうみの四人が利敵行為として天皇猊下へ陳情を申し立てたからである。

 天皇猊下はそれを面白そうだからと言ってそれを承認し、英雄の一人に数えられていた一番合戦の苗字をもつ華恋に会ってみよう…………とそういうことである。

 彼女の勘違いをわかるのは天皇猊下その人のみであり、周りの人間からは恐怖の対象でしかないが、天皇猊下は全て見抜いていた。

 天皇猊下の異能は【知る】ことのできる異能であり、世界の望みすら、宇宙の真理すら、神の有無すら…………何でも知ることのできる異能だ。

 最初から全てを見ていた…………いや知っていた天皇猊下にとっては面白い一大イベントであるから、それを承認したとしている。

 最初から勘違いされていないとはいえ、天皇猊下の一番の娯楽はそれを()ることで、面白さを見出しているのである。

 本当に面白いことになってきたと口を歪ませながら、日本酒を傾けることが直近の楽しみである。



________________________










 はい、やってきましたのは大日本帝国第一王朝異能学園の敷地内にある天皇猊下がおわすところで、名前を聖導大日本天皇王室せいどうだいにっぽんてんのうおうしつというところである。

 猊下というのは聖職者の一番偉い人、とざっくりと習うところだが、天皇猊下とは徳の高い人間であり、聖職者の如き御仁であるというところから、皆親しみを込めて天皇猊下…………と呼称している。

 まぁ、日本国に居ればそれは誰でもわかる一般常識であり、中卒の俺ですらもわかるという素晴らしい仕組みになっている。

 まぁ、この国では天皇猊下の名前を知らないものは一人もいないと言っていいだろう。

 多分そんな不敬なものは秘密裏に処理されているとしか思えない程だ。

 しかし、そんなこともなく悪い人間ではないということは普段の言動からは伝わってくるため、本当にアンチの人間はいないんじゃなかろうか。

 天皇猊下はもう日本国をウン百年(びゃくねん)と治めているから、それは揺らぐことのない事実だろう。

 え?寿命がないのかって?

 天皇猊下は昔に食ったものがなんか不老不死をもたらすものだったらしく、寿命は無くなったんだとか。はぇーすごいなぁ。俺だったらそんな時間過ごしたら死ぬ自信はある。

 詳しくは超重要国家機密であるため謎に包まれているが、天皇猊下が食った何かが起因している…………と都市伝説になっている。それがいちばんの通説だって言われてるしな。

 まぁ、そんな現実逃避は置いておいて、とうとう王室の前まで来てしまった…………まずい、発言一つ一つに気をつけないとまじで死にかねん!

 そんなのは絶対に嫌だ!せっかく銀髪短髪碧眼ロリに転生したんだ!と、喚いていても始まらん。

 はよ早いことご納得いただける様な説明をしてさっさと立ち去ってしまおう。

 それが長生きのコツです!

 昔はブラック企業に勤めて死ぬほど働いたら文字通り死ねるだろって楽に思ってたけど、そんなこんなも言ってられなくなった。


「天皇猊下の御成である、皆の者控えおろう!!」


 それに倣い頭を深く下げる。ここで頭を下げなければ、下げる頭すらなくなる。

 …………彼らは天皇猊下直轄の『軍事機動部隊・自衛自己判断組織マジェスティ』が正式名称であるマジェスティ隊の陸軍総司令官の大元帥たる百花繚乱左大臣絢爛ひゃっかりょうらんさだいじんけんらん様である。

 百花繚乱家は代々伝わる名門華族の出で、素晴らしき軍事行動をとったために陸軍総司令官の大元帥たらしめられたのだ。

 この会うだけでの威圧感が半端ない。

 他の諸学生生徒では出せないものだ……!

 ひぇぇ、恐ろしや恐ろしや。

 ここでおかしいなぁって思われる方もいるかもしれない。

 ここで疑問にお答えしよう!…………誰にお答えするんだ俺…………?

 陸軍総司令官の立場は、本来ならば天皇猊下が大元帥であらせられるはずだ。しかしながら、大元帥という立場は他の総司令官殿にもお譲りになられている。

 戦力の集中が天皇猊下のみになってしまったら、その中核を担う人間が少なくなって、指揮系統に混乱が生ずるため、とされている。

 中卒でもわかることなので、分からないという人間がいれば、叩き直してやるところだ。

 こんな馬鹿でもこの日本国の理ぐらいは知っているつもりだ。っていうか実際に知ってるからね?

 そして、その他大勢。マジェスティの方々である。

 そう、蠅一匹すら通さないとされているこの厳重な警備の数々。

 そして贅が一極集中されているこの王室…………目が痛くなるねっ!いやいかん、やめやめこの思考。


「よく来たねぇ〜!一番合戦式部大輔華恋ちゃん?」


「……………………」


 黙して首を一段と深く下げる。

 自分は会話が得意な方ではないので、この首をさらに深く一礼することによって無礼がない様にするのだ。

 コレは決して怖くなって一言も喋れていないというものではない。

 単純に言葉を交わすことすらもできない空気の圧迫感なのである。

 この場で発言ができるのはよほど能天気な人間か、それとも蛮勇な人間か、立場ある人間かの3択であろう。


「他のみんなははけていいよ。この子と二人きりで話したいし〜」


咫多識仁(たたしきひと)天皇猊下陛下!お言葉ですが、そば付きのものがおらず……であれば、他の臣民達が危きと思いまする!それだけは平にご容赦を……」


「いいのいいの〜!別にこの子が僕に害をなすことなんてないだろうし〜」


「…………そこまで仰りますれば、承知相致しました!そこの、一番合戦式部大輔華恋とやらよ、天皇猊下陛下に何かあれば貴様を八つ裂きにして殺す。その前にも害をなそうとすれば殺す。シンプルでわかりやすいだろう。いいか、私が言葉にする前に殺す」


「…………………………ご配慮、感謝……………………します」


 こっわ!怖い怖い!怖いよぉ〜!!普通に殺気をコートでも着込むかの様に使いこなしてるぅぅ!!【メンタルを強化】していなければ即死だった…………。

 危ねぇところだったわ!ぐわぁあぁああ!

 はぁ、マジェスティ隊の方達がいなくなってから、ようやくプレッシャーから解放されるぅ〜。

 まじであの中で楽しく喋れる天皇猊下陛下は強者だぁ。

 まじですごいなぁ〜、このお方。

 普段はクソみたいな喋り方してるけど、俺だって礼儀を尽くす場面は弁えてるつもりだ。

 他の人間にするのなんて普通に考えて無理じゃん?だから無理にしようとはしてないんだけど、この方の前ではそれすらも超越して礼儀を尽くさねばならないっていう感じになるんだよね。

 多分どの人間も思ってることじゃないかな。

 そして、こんなドキドキワクワク…………ドキドキドキドキな拝謁はまだ続く君なのである。



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