第拾陸話 付ける薬はない
ゴミはきっちりと片付けるのはいいが、この少年の問題が終わっていないため、別のことに目を向けるのは後々になる。
見た目は普通にどこに出みそうな中学生って感じなんだけどな。何がこの少年を駆り立てたというのだろう
「この度はすいませんでした……!あいつらにやれって言われて仕方なく操っていました。僕を解放してください!お願いします!一思いに自分を殺してください!お願いします!お願いします!お願いします!」
オドオドした少年は、こちらを見ると申し訳なく頭を擦り付けて謝罪をしだす。しかし、どうしてもこれが彼の本心ではないと思ってしまう。
この胸騒ぎはなんだ……?
何かの前兆と捉えてもいいけど、確証がないから下手のことはできないし、急にこいつの頭をぶち抜くにしても、黄泉を納得させるだけの材料が見つからないが……どうしようかな。
「お前は……命乞いをするのですか?あんなにも人を殺していたのに?ならば、潔く死ぬ方がよほどいいですよ。アドバイスですけど、嘘をつくならば、もっとマシな嘘をつきなさいな。あなたの視線の動かし方でバレバレですし、華恋さんもとっくに気がついていることでしょう」
確かに胸騒ぎ程度ではあるが、気が付きはしてたけど、そんなにはっきりとは分かりませんでしたけどもぉ!?
どうやら彼女の中で、俺という人物像がどういうものなのかを改めて問いたいんだけど、一体どんな感じで神格化されてるんだよ……そんなに誉めたって何にも出ないぞ?
俺のことを慕ってくれてるのは嬉しいが、本質は見失わないでほしいと思う華恋ちゃんなのでした。
「……………………はっ。僕の偽装がバレるなんて、やるじゃないか君たち。まさか見破られるとは思わなかったよ。君たちが強いのは知っていたが、まさか視線だけでバレてしまうとは恐れ入った……なんていうと思ったかばぁか。お前らなんか、死んじゃえばいいんだよ。こいつらを殺したのはお前達だ……紛れもなくね?だから、こいつらと一緒にここから消えてなくなっちゃえばいいんだよ!」
「事実私たちはここにいる怪物型の人間を殺しました。しかしながら、それは悪いことだとは思っていません。彼らは救済を求めていたからです。なぜだか分かりますか?あなた達の管理下に置かれるということが嫌だったのでしょう。気持ちはわかります。私もこの鳥籠の中に囚われていたのですから、当然と言われれば当然そういう考えに至ります。つまり、あなた達は等しくクソということです……よかったでちゅね、女の子にこんな罵倒をもらって気持ちよくなっちゃうタイプの人ですよね?ボクちゃん」
それを聞くと、堪忍袋の尾が切れた様子で唇を噛んでいる。明らかに怒り心頭って感じだな。わかりやすい表現方法をしてくれて助かるが、そんなことをやっても何にも出ないぞ?
俺たちはお前の母親じゃないし、お前の友達でもなんでもない。だから止めてやる義理もないし、そんなことをする様な人間でもない。お前が邪悪だから、ただただ殺すってことだ。
俺らにとって、コンビニに寄ってジュース買うのと同じように、お前にとってもそれが日常のことであるのは間違いないだろう。しかしな、お前のそれはコンビニに寄ったついでに人を殴るのと同じ行為なんだよ。他人に迷惑をかけたらおしまいなんだよ。
「……………………殺して、全てのものを楽にする」
「お前らぁ!絶対に許さないぞ!お前達の体をバラバラにして、お前らの股だけ使ってやる!お前達にとって、それがいちばんの幸せだろうからなぁ!ただただ棒を扱くだけの機械が、偉そうな口を叩くなボケが!お前らの体の部位を有効活用してやるんだから、ありがたいと思え!」
口汚く罵り、俺らの部位を使ってやるまで言ってくるとはここまでくると、最早こいつにつける薬はないみたいだな。
どんな特効薬でも、こいつの病気を治すことはできやしない。人間ではないから当然と言えば当然か。人でなしにつける薬はないと言ったところだろう。
こいつと問答していると、頭がおかしくなりそうなので早めに片してしまうことにする。もうこいつとの会話もこれ以上はないだろうしな。
俺が素早く前に出ると、それに呼応するかの様にバックステップをして回避してくるが、その回避のところを狙って拳を突き出していく。目の前にいたと思ったら、横にいました!みたいなことをするため、まだあえて引きつけるが……動きがだんだん早くなってきたな?
こいつの異能は【怪物を操る】という単純な能力だけではない?…………まさかとは思うが、こいつも二つ目の異能を持っているんじゃないか?
そうじゃないと、ずっと【強化】し続けている俺についてこられると言うことがおかしいからな。
「案外、お前も大したことないなぁ!ロリが僕の動きについていこうだなんて、思わない方がいい!僕は最強なんだ…………!この研究機関で落ちこぼれだった僕を、あのDrは文字通り救ってくれた!前の醜い僕を隔絶した力を持つ様になった!さぁ、怪物型はまだまだいるぞ!どんどん増えていく、どんどん湧いてくる!お前達に果たしてこの僕のことを殺すことができんのかよ!さっき偉そうに殺すとか言ってたなぁ!クソロリ!やっぱりただの扱き穴のお前にとって、僕を殺すことは難しいらしい……!容易ではないことを容易と言うその傲慢さ、万死に値する!やっぱりお前らは棒を扱う専門の店にでも行ったらよかったんだよ……その才能もなかったら、ちょっとかわいそうだけどね……?ははははははははははははははははははは!!」
なるほど、やはり精神が歪んでいる。歪み歪んで、自分でも制御できなくなったタチの悪い人間……怪物だったか。狂うってことは、自身との乖離があるからだ。
自身の口を【強化】して言ってやらないと気が済まないな。
そして、俺の事を何度も何度もロリって言いやがって…………!自分がロリだってことは一番知ってんの!それを何回も何回も突きつけてきやがってよぉ…………!絶許です(漆黒微笑)。
「………………下衆だな。気持ちも悪いし、人のことをそうとしか見れない単純脳みそには恐れ入る。自分の棒は一度も扱かれたことがないからって、僻むなよこのクソボケが。「女は全員自分の穴」だと思ってるんなら、それは単なる勘違いで、お前に向く奴なんて何もいない。ただただそこには棒を扱いてもらえなかったお前がいるだけ。力で支配しようとする奴に、何が得られると言うんだ?そんなことも知らないで生きてきたなんて……なんて可哀想な人間……じゃなかったか。お前は怪物だよ、身も心も。」
決着をつけないとだよね。こいつとの戦いも、もうお腹いっぱいだから。そして、こいつももう寝る時間だ。しっかりと地獄で寝かしつけてあげないといけない。
まぁ、先に地獄に行って待ってなよ。すぐ追いかけるからさ。
…………なんて、言ってもこいつは聞かない。
戦闘体制の構えを解くことなく、二人が見合っている横で、黄泉が怪物達を殺しまくっているが、どんどん溢れてくるみたいだ。
この状況を打破しないと、二人とも本当にお陀仏だね。