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第拾弐話 異能が二つ(徳用ではない)

 


 ナイフ攻撃はまだ続く。

 地獄の果てまで追い回そうとしている様は、死神が鎌を振り回してその魂を回収するが如し。その命をいただくまで俺は止まることをやめないだろう。


「お前さん、意外と情に厚いやつだったんだなぁ!あんなにポンポンと人を殺しまくってたからよぉ!そんな場も無いような人間……一緒(同類)だと思ってたぜ!好きに殺して何が悪いんだ?」


 道徳0のゴミ人間か、こいつ。

 流石に中卒でもわかるレベルの問題なんだが、そんなことも理解できないというのか?

 俺の中の怒りというものが収まってきた。

 多分、こいつはまともな教育を受けて育って来たわけではない。戦時中はどこの教育も、自国を褒め称えるばかりで、他国は仮想敵国であったがための教育だ。

 教育と言うのは謂わば洗脳に近しいもの。教え手によって、子どもは何色にもなることができるのだ。それを考えると、こいつの発言は不思議ではないような気がしないでもない。納得は当然できないが。

 そして、こいつの詳しい年齢なんかは知らないが、間違いなく自分の年齢よりもしただろうと判断できる。……それにより、まともな教育を受けた人間では無いと言うことが、この怪物を生み出してしまったのではないか。

 そう考えると、こいつは一撃で葬ってやった方が良さそうだ。

 汚い大人に改造されてしまっていたのだろう。思考回路が酷く劣っていることからも、想像に難くない。


「………………安心しろ。お前は一撃で殺す」


「いいねぇ!できるもんならそうしてみろ!」


 喰種を操り、俺のいく手を阻んでくるが、そんな数合わせの奴らは無駄でしかない。邪魔にもならないし、切るのが少し多くなる程度の違いでしかない。

 こちらに向かってくる奴らを、切って投げ捨て……それを何回も繰り返し行う、謂わば作業のようなもの。

 全部を微塵切りにしてやつのところへ一歩ずつではあるが、確実に詰めていく。しかし、それでも余裕の表情を見せるこの男に、少し警戒をしつつ進んでいく。

 全てを片付け終わり、次はこいつだ……と思った時には、すでにこいつは息絶えていた。

 ……………………???????????

 急なことで何が何だかわかんないんだが、どう言うことなんだ?

 本当に何が起きたのかわからないので、俺は混乱するしかなかったが、この男の胸を見ると、手が突き刺さっていた。ドス黒いオーラを放ち、体には毒が回った色のようなものが蔓延している。

 その手は、その男の心臓を握りつぶし引っこ抜くと、その心臓に恨みがあるかのように何遍もぐちゃぐちゃにしていた。そう、念入りに。


「華恋さん………………」


「……………………委員長」


 望まぬ再会というのはこう言うことを言うのだろう。…………彼女の制服は血に塗れていた。

 深い恨みと、深い憎しみがなければこんなことにはならないだろう。しかし、表情はどこか悲しげな表情をしていたが。

 確か、彼女の異能は聖なる力と……もう一つあったはずだ。なんだかな授業の時に、もう一つの能力があるらしいと噂になっていたからな。しょーもない噂だと、その時は全スルーを決め込んでいたわけだが。

 ふと、俺は考えた。あの黒いオーラと聖なる力は相反するもの。そこから導き出される答えは…………。

 …………ああ、成程。そうか……………………そう言うことか。彼女はこの研究所に囚われていたうちの一人だったんだな。

 とりあえず、お礼を言おうと言葉を紡ぎ出す。


「………………敵、倒してくれてありがとう」


「いえ……っ!逆に獲物をとってしまって申し訳ない気持ちでいっぱいです。私はここまでくるのにどれほど時間がかかってしまったのか……何年も待ち侘びたと言うのに、気持ちが焦っているのですね……」


「…………………………復讐したいんでしょ?…………なら、しょうがないと思う」


「華恋さんにそう言っていただけると救われます。私はこれしか脳がない女ですから」


 委員長が闇落ちとかしたら怖そうだなと思いつつも、無事に再会できたことを喜ぶ自分がいる。あちらは望まぬ再会であったかもしれないが、こちらにとっては久しぶりに見た級友……そりゃ少しは俺だって喜ぶに決まっているじゃありませんか!

 ここで少し休憩にしようと思い、先ほどのオーラについての情報を求めることにする。


「………………………………さっきの力、よかったら私に教えて欲しい」


 自身の記憶が正しければ、彼女は聖なる力がメインの異能だったはず。

 あの色はその力とは真反対のものだとも思ったし、攻撃的であると感じたからだ。本人に伝える意思がないのであれば、それはしょうがないことだと思うが、どうだろうか?


「華恋さんに隠し事はできませんね……全てお話しします。私の身に起きたことを」


 彼女は決心がついていたのかいないのか定かではないが、こちらに体を向けてくれる。

 もし、自分の言葉が断り辛いとかだったら別に良いのに……と思ったが、それでも自分で決心して、俺に話すと決めたことに、今更水を差すということもすまい。

 俺も彼女の気持ちに答えてなければならないと感じ、真面目な顔で話を聞く。一体彼女見に何が起きたと言うのだろう。



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