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第拾壱話 弄びし者

 


 次の階層では、全部をぶっ壊すと心に決めていたのだが、剣山が多く設置されているエリアでは、手も足も出せない。

 何気にこちらの心理的状況を読んでくるのやめてほしい。

 全くふざけ散らかした奴らだが、こんなところはすごい対策をとってくるのだと感心してしまうな。

 感心ついでに、ここを壊させてくれんか。………………え?ダメだって?絶対にゆる早苗。

 絶許と判断した時点で、貴様らの負けは確定しているようなもの!地獄を見せてやろうかぁ!

 …………一旦落ち着きましょね〜。落ち着かないとまともな判断ができませんからねぇ〜。落ち着けてえらい。

 今の俺にはバブみが足りないんだよなぁ。誰か俺にバブみを感じさせてくれるようなそんな人間はいませんか?ちょっとだけで良いんです。バブみが欲しい……おぎゃりたいよね。

 ふざけるのはここまでにしてっと……ここは地獄の剣山がモチーフにされているところで、普段は拷問かなんかに使われていたのか、剣山の先には血がべっとりとついている。ここまでしなくても良いだろうに、逃げられないようにする鎖なんかもあった。

 ここまでくると、拷問部屋で確定でいいかな。

 物的状況が多く揃っている中で、これ以上のことを論じてもしょうがないしね。

 証拠が多く残っていれば、その考えに辿り着くのは容易だが、発展して何かを考えるというのも……この状況が許してくれないだろう。

 今しがた背後に何人かに回られた。

 ここを悟らせたくないのか、手合いもなかなかに強そうな連中ばかりだ。困っちゃうねぇ…………モテモテでさ。ハァハァ聞こえるし、興奮してんのかね?こんな体に発情する奴は、とりあえず死ね。

 ナイフでもって、先頭にいる奴を攻撃する。

 しかし空振りみたいで、血飛沫の音は聞こえなかった。残念、一番強そうなやつを攻撃したんだけど、対策されちゃってるみたいね。

 前回も一番強いやつから倒そう作戦で、敵の混乱に乗じてやっつけてたんだけど、そうもいかないみたいだ。


「女……女ぁ」


「血…………血くれ」


「あああああああああああああああああああ!欲しい欲しい欲しい!」


 なんか、最初からクライマックスなんだけど、どゆこと?

 これ先頭のやつは何にも喋っていないということは、こいつが操っているという認識でよろしいか?

 しかしながら、体の一部がない奴がいるな………………こいつの異能はちと厄介そうだぞ。人間を喰種にして蘇らせる能力とかだと思うんだけど、確証がないねぇ。

 ………………!あいつ……舐めた真似してくれるじゃん。

 灼熱階層で葬った、あの兄弟が出てくる。

 野郎…………命を弄びやがって…………上等だよ。消し飛ばしてやる。


「………………一撃だ」


「おいおい!お嬢ちゃん。懐かしい…………わけでもねぇか!再会を喜ばずしてそのまま殺そうってのかい!まぁ、こいつらは実験体だったけどよぉ!そんなすぐに別れの挨拶を言わなくても良いんじゃねぇの?」


「…………耳が腐る。早よ死ね」


 敵意剥き出しの俺に少しも驚いた様子を見せないってことは、普段から敵意を向けられるのに慣れているということだ。

 それこそ何人も葬らないと達しない境地だろう。

 厄介な相手というのは恐怖心が何もない相手。こちらの攻撃に動揺しないというのは、それだけでまともな判断ができる頭を積んでいるということなんだよな。

 本当に迷惑な敵ばかり出てくる。

 考えさせられる敵が多いというのは、脳のリソースを使うから嫌なんだけど。

 あいつらを殺したのは俺だし、恨みも持たれているだろう。

 しかし、もう一度殺さなきゃいけないというのはしんどいな。


「は……?」


 俺は躊躇いもなく、この喰種を殺した。

 もう息をすることもできなくなった肉の袋に目を向けることなく、操っているやつめがけてナイフを振るう。

 すんでのところで避けられるが、気にせずにナイフを振るう。

 一撃、二撃、三撃と振るううちにどんどんと早くなってくるナイフの速度についていけず、とうとう顔に切り傷をつけた。

 しかしながら、俺の攻撃を喰らって顔に切り傷だけというのは納得いかない。こちらは体を強化しているはずなんだけど?


「お前さん、ちぃとばかし強いなぁ。何もそんなに向きになって殺すことないだろうに。しかしまぁ、派手にやってくれちゃったとしても、こいつらは…………ほら!この通りさ!すぐに復活する!」


 何かアクションをしたわけでもないというのに、切りつけた奴らはすぐに起き上がって、こちらを補足してくる。

 多分こいつの能力は喰種を操作するので間違い無いと思うが、それでは俺の攻撃を受け切れる説明がつかない。

 おそらくだが、《《別に能力を持っている可能性がある》》ということだろう。全くもってめんどくさいが、そういうことなら納得だ。

 不意打ちで拳を顔面に殴打するが、それも大したダメージはなく、ノックバックもしない。

 敵ながら恐ろしいやつだよ。外皮の強化ができるなんて……これ、帰ったら学長先生に給料もらっても良いレベルだよね?

 要求通るか心配なんだけど、それぐらいのご褒美はあっても良いでしょ。

 俺は改めてナイフを構えると、一撃を加えるべく向かっていく。

 刺し殺して終わりではない。その体に何十何百もの傷をつけて、バラバラにして粉微塵になるまでメチャクチャにしてやらなければ気が済まない。

 命を冒涜するな……とは言わない。俺も命を冒涜して来ている側だ。しかし、本人の意思や自由を無くして操るという行為の愚かしいこと愚かしいこと。

 だから、お前のことはおもちゃにするよ。

 俺を楽しませるためのおもちゃにする。…………それで同じ気分をお前にも味わってもらえるだろうから。



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