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第㭭話 キョウダイ

 


 何ということでしょう!?

 匠の手によって、暗く重苦しい雰囲気が立ち込めていた暗い間取りもこの通り!風通しの良い、いい場所になりました!

 という茶番を、落ちながら行っている俺は、胡座あぐらを空中でかきながら平常心を保っていた。まぁ、ぶっちゃけた話、これぐらいじゃ驚かないっていう方が正しいんだけどね。

 俺の精神は頑強……はっきしわかんだね。

 鉄の木と落下の旅を楽しんでいるが、それも長くは続かないだろう。

 一回こんなことを派手にやらかしたんだ次は何かしらの対策を講じてくるはず。そうなるとちょっと面倒だけど、しょうがないよね〜。

 これは要するにチート技みたいなもんだし……例えば街の中にある車なんかを一瞬で爆発させる能力と言い換えても良い。それぐらいのパワーはあったはずだしねぇ。


「助け…………」


「いや、いやだ」


「もう無理、耐えられない」


 あっ、空中に投げ出されて気がおかしくなっている奴らが数人。流石に施設が用意した人間でも、こんなことになるなんて思いもよらなかっただろうし、急なことで混乱しているのかも知れんな。

 しかし、謝りはしない。この施設が悪いと諦めてくれ(ゲス顔)。

 そして落下の旅がそろそろ終わろうとしている頃、その景色は広がってきた。

 マグマが広がる大地。火山は今か今かと自分を解放できるのを待っている。

 マグマ溜まりからは泡が弾けて、周囲の環境をさらに劣悪なものにし、生物の介入は一切行えないような……そして温度も高いため、本当に生物が生きようとしたら、それはそれは苦しいことになるだろう。

 そもそも、生物が活動して良いような温度ではないため、ここには何の刺客もいないかも知れないな。


「油断している」


「そうだなぁ、油断しているなぁ」


 いま、声が聞こえたような……?

 まぁ、気のせいか。

 こんなところ、さっさと抜けるに限るし……次の階層が見つかるまでしらみ潰しに奔走しますか。

 ギアを一段階上げると、全力のダッシュでこの階層をかけていく。ダッシュすると風が起きるし、その方が涼めるかなと思ったんだが……。

 走るたびに汗がちょちょぎれていき、俺の中から体力をずっと奪っていくこのフィールドでは、行動が制限されると言っても過言ではない。つまり、全くと言っていいほど涼めない。

 最悪の場合、普通に死の危険性があるというのが難点の階層だな。次の階層は涼しいと良いんだが……そんな都合よくもいかないだろう。

 溶岩溜まりから泡がポコポコと噴き出ると、周りの温度が上昇する。

 環境が整っていないというのは、こんなにも嫌なものなのかと……自分は現代っ子でよかったなって常々思わせるよ。地球滅亡の日はこんな感じだったんだろ?隕石が落ちてきて、この温度になったら普通に死ねる。

 俺は文明を知らないほど愚かなことはないと思うんだが……どうだろう。

 探索は続き、次の階層に続く階段を見つけたところで違和感に気づく。

 そう、小さな違和感。

 まるでその空間だけ、暑さを感じないような……この部分だけ切り取られているような、そんな感じの違和感だ。

 そこに誰かいるのか?誰かいるなら教えてくれ……お前たちは一体誰なのか……?さっきから刺客続きで疲れてるんだ。

 皆似たような強さの奴らばかりだしバカラだしぃ?ちょっと戦闘に飽きてきたんだが……少しは休ませてくれない?………………当然、休ませてくれないかなぁ。

 ほんっと、やんなっちゃうよ。

 こんな雑魚たちを仕向けて一体何になるっていうんだ……無駄なことはしたくないんだけどなぁ。


「やっぱ、油断しすぎ」


「油断しすぎだなぁ。こんな簡単に後ろが取れたぁ」


 気づいた時にはもう遅かった。

 後ろ足から蹴り上げられる速度は、常人の倍のスピードで飛んでくる。それは敢えて避けずにそのまま喰らって距離を取ったのだが、その後ろに隠されていた、クロスキックの二撃目が強力だ。

 一瞬脳みそが揺れたと勘違いを起こして、気絶しそうになった。

 この体になって気絶を経験したことってなかったと思うが、初めて意識を刈り取られるかも知れないと感じた蹴りの強さだったな。


「………………確かに油断し過ぎていた」


「ははぁっ!にいちゃんにいちゃん!こいつ、俺らの攻撃喰らっても死ななかったぁ!」


「死なない。いいから早く殺す」


 交戦的なやつは嫌いじゃない。強者からの挑戦状(蹴り)だ……受けてたってやるしかないだろ?

 しかもこいつら倒さないと、次の階層になんていかせてくれないだろうし……遅くなるかの違いだけだから、問題ナッシング〜…………でも、俺に喧嘩を売ってタダで帰すとも思ってないだろ……?

 俺は、この施設で初めてナイフを使用する。

 軽くスウィングすると空間が切れて、そこから強力な風が巻き起こる。明らかに質の違う攻撃に驚いているようだ。それでも、この攻撃を逃げることができるってだけでも十分強いが、切り傷はついているみたいだな。

 逃れるのは、実質不可能だ。なにしろ、俺のメインウェポンであるこのナイフは特別製でね。

 俺の異能によって【強化】されている武器で、俺の【強化】に応じて合わせてくれる優れものだ。


「何だそれ」


「不気味、不気味だぜぇ!こいつ……ふざけた武器を使いやがるぅ!にいちゃんにいちゃん、こいつここで殺そぅ!殺そうぜぇ!」


「そうだな」


 こいつらも少しは俺のことを警戒してくれたみたいだ。助かるねぇ、勝手に警戒して潰れてくれるのがベストなんだけど、さすがにこのぐらい強い手合いじゃ引っかかってもくれないだろう。

 めんどくさそうな戦いが始まろうとしているというのに……少しこいつらとの戦闘が楽しくなってきたぞ……!

 強い奴との知謀はワクワクする……やはり、俺の性格はあのドブカスと一緒で……破綻しているのかも知れないが、こんな楽しいこと止められるわけないだろ……!

 血湧き肉躍る…………そんな戦闘を楽しもうぜ?



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