第廿伍話 同衾は結局えっちと一緒
人間の感情が豊かなど、誰が決めたことなのだろう。
人間の感情が遍く水のようなのだと、誰が決めたことなのだろう。
人間なんて単純だ。
人間なんて単調だ。
人間なんて直情だ。
人間なんて……なんて、人間に対するネガキャンか。
人間は恐ろしく愚かで馬鹿で手がつけられないくらいアホらしい。
感情とは豊かたり得るべきだと誰かが言ったが、そんなことはない。
みんな自分が可愛いだけだ。
そんなこともわからないで生きているなんて、何てまぁアホらしい。
斜に構えているものは誰もが皆そう思う。
なんてことはない、意固地になっているだけだ。
ま、そんなことはさて置いて!
感情って、どうやったら手に入れられるんですかねぇ?
俺に感情らしい感情なんて芽生えてこないんですけど、道端に落ちてるものなんですかね?自分が自分を探すために、何かをもがこうとも関係ないだけど。
でも、もっとこう…………あるだろう!?
起伏というものがあって、情緒があって……それだからこそ素晴らしい!
自分が自分足り得るためには何かが必要なのだ。俺には決定的に足りないパズルのピースがあるはずなんだ!
それが見つからないから困窮している、と言い換えても差し支えない。
それが探し得ないからこそ、困っているのだ。
誰も彼もが皆完璧超人な訳がない。
誰もが皆その人間のように振る舞えるわけじゃないのだ。
だから、人間の感情なんて読めないのさ。織り込めないのさ。その思考にすらも織り込めない。
自分は感情の無き人形であるならば、それでも良かっただろう。しかし、こうして自我があり、何かを考えるというワンアクションを置いているから、人間がどう考えているかなんてものは分からないのさ!
ま別にぃ?いいんですけど〜。神様転生ものの主人公はみんなもらってるじゃないですかぁ?ギフトをよぉ!
俺にギフトないの?ないんですか?!
一番のギフトは女になったこと《《ただそれだけ》》!?あんまりな話だろう!
誰もが皆神様転生でのギフトをもらっている中で、刺されて殺されたと思ったらこの仕打ちときたら無いわぁ〜、マジで無いわぁ〜!
どうしたら「あ、君刺されて死にかけたけど、まだ生きてるから現代で普通にやり直してね?あ、記憶も年代も変わらずにそのままだけで許してねテヘペロ!」みたいなことになるんだよ!クソが!
神がいるとするならば、この仕打ちは何だ!?毎回風呂に付き纏われるこっちの身にもなってみろってんだ!
今?今どこにいるかって?自室だよ自室!そんなものがあるだけマシだと思う車中泊を余儀なくされている皆々様?
違うんだ!別にファッションを気取ってモノを置いているわけでも無いし、ただただミニマリストを気取ってモノを置いていないわけでも無い。
あんまり自室が豊かでもしょうがないだろう?寝食を共にする部屋だが、その機能だけあれば問題ないだろう?!
それをいうに事欠いて「このミニマリストが!」なんて罵倒吐ける!?吐けないよなぁ!!
当然こうなるべくしてなったとも付け加えるが、別にそういうことじゃねぇだろ!
「ねぇ………………今日…………ここで、寝ても…………いい?」
大歓迎だとも!一緒に人と寝ることなんて今までなく、子どもの時すらベイビーの時に至るまで一緒に寝た奴なんていない。
クソな馬鹿親が他の女男と寝ている間俺は預けられていたのだから、そんなことはないんだよ!
園があるじゃない……って?バカいっちゃいけねぇ!
あんなのノーカンだノーカン!一緒に寝るといっても寝かしつけてるのみなの!
同衾をしたってことじゃねぇ!
愛のない生活を送ってきたからか、こういうのは裏があるんじゃないかと思ってしまうのが性というもの!
何かを欲さんとすれば、何かを与すのが人間ってもんだ!
しかしながら、俺には感情というものが決して完璧に無欠にわかるわけじゃねぇ!
だからこうして頭抱えて困ってんの!
単純に考えられもしないから、相応に困窮していんのよ!
いや、側から見たら美少女と寝ることになるということは認めるよ?
しかしだね、こうも何か簡単に物事が行きすぎて困るのも事実なわけで、誰もが裏を証明できないわけで……。
要するに言い訳を作ってんだよ言わせんな恥ずかしい!
万が一、億が一に何か裏があったとしよう。しかしながら、そんなものはこねぇと断言はできるぐらいには、多分彼女は何もしない無害な存在だ。
ペドの人だったら、少し逃げ惑いたくなるけれど、彼女も別に悪い人間ではない……と仮定する。しかしながらね君ぃ〜、わからないのが人間なんだよなぁ!
人間は恐ろしくも愚かだからねぇ〜!俺を筆頭にしてな!
ほら、現実感が増すだろう?俺のような人間がいる時点で世界の異物だ。
こうして調停者に問い詰められ「悪い人生だったな」なんてほざくことができるぅ!!
おかしくない!?全くもっておかしくない?!こんだけでこんなことされるなんて思う脳味噌マジでおかしくない!?
はぁ、自分の身を可愛さに、何かを発展できるべくもないか。
肉を切らせて骨を断つ、そういう言葉があるように、虎穴に入らずんば孤児を得ずともあるように、何かリスクを負わなければリターンなんて返ってこないわけだ。
人生はパチンコと一緒ってことよ!パチンコの貯玉なんか貯めないで、全ブッパがブラック企業勤めリーマンってもんよ!
…………生涯収支はプラスだから(震え声)
「ダメ………………かな」
「……………………………………………………構わない」
まぁ、たまにはこんないい思いをしつつ、寝ていきますかぁ。
あれ、明日ってなんか用事あったっけ。
そういえばなんかあったような…………いや、何にもなかったようなぁ?
ま、別にいっか!
明日のことは明日の自分に回しましょう!
はい、おやすみぃ!
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龍公国、親日的な国のある場所の話。
異能学園に転入してこようという、公国のさるお方がいた。
「本当に宜しいんですか……?あなた様があの国に行かれると、こちらとしても困るんですがねぇ」
そう嘯くのは従者なのか、はたまた雇われた傭兵なのか、それは定かではない。
しかし、少しばかりの敬意を持って接しているというのは確定的に明らかだ。
だが、粗野というか粗暴というか、少し荒っぽい言葉が目立つ、そんな印象を受けるだろう。
「貴方も一緒に来てくださいますか?そうすれば百人力なのですが」
「えぇ?勘弁してくださいよ。俺は普通の人間ですぜ?貴方のお父上の代から支えていやしたが、それは流石に……」
「行きましょう!」
「でもy」
「行きましょう!」
「いやだk」
「行きましょう!」
「……………………行かs」
「行きましょう!」
「分かったから!行くから!行く、行きます!マジで!壊れたラジオみたいになるなっつーの!」
「いえ、貴方がしぶとかったものですから!」
コントを見させられているのだろうか。
夫婦漫才のつもりなのだろうか。
理外の存在が日本に近づこうとしていたのは言うまでもない。
そんな彼女達の存在が、どう働きかけるのかは定かではないが、間違いなく旋風であるのは想像に易いだろう。
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