第廿弐話 権力は代償がつきもの
とんでもない天皇猊下の発言に、言葉が出なくなって早0.2秒、足りない知識ながら考えて考え尽くしたが、《《これが詰みってやつか》》。
まじかぁ〜。まさかゲームに乗る前からゲームが終了していたとか言う高度な詐欺が使われて……いや、もはや何も言うまい。
俺に政の類は本当に向いてませんよ?いやまじで。
多分傀儡の出来上がりなんじゃないですかね?本当にありがとうございました。俺の次回作にご期待くださいって展開になるってマ?
そんなことが起きても良いのか……なんで思案していても始まらないので、問に対して答を返すのが普通のこと。
しかしながら、その普通ができたら苦労してないんだなぁ!
全く苦労しているのでこんな状況になっています!
まじで俺の口が使えな過ぎる!
表情筋が一ミクロン単位で動かないこの鉄壁のなんちゃってポーカーフェイスは、果たして動かない。
まじだ、天皇猊下の目はマジなんだ……!
めちゃくちゃ「ねぇ、受けてくれるよねぇ?」って言う副音声が表情の上に見え隠れっていうかめちゃくちゃ見えてるぅぅううう!
「…………………………………………………………有り………………難く」
もぉ、煮るなり焼くなり好きにしてください(泣)
こうなったら自棄よ自棄!
はい、一番合戦中務大輔華恋改めまして、一番合戦内大臣華恋になりました、俺です!
はい、俺がなりました!内大臣にね!ちくしょう!
はい、そんな不遜なことばかり心の中でも思うことが恥ずべき行為なので、辞めましょう!あ、ついでに内大臣辞められます?
辞められたら嬉しいなぁって……あ、辞められませんかそうですか本当にありがとうございました(血涙)
「そして…………そうだね。君たち二人にも新しく役職を与えようかな!内大臣の補佐官としての任に命ずる!そうだなぁ、名前は何が良いかな。今から新しい官位を作るから待っててね!…………えっとぉ、うぅんとぉ……内大臣補ってのはどうかな!君たち二人は内大臣補だ!」
えっと、つまり仏魔殿入りが二人も確定したわけで……俺一人じゃないっ!?やったぁ!
流石に姉さん達二人がいてくれないと心ぼせぇですよぉ〜!!
ふぁー、神様って目の前にいるんだなぁ!
やっぱり『何も成さない神より、成す天皇猊下陛下』って言葉が作られるのも納得だなぁ!
あ、この現代日本においての常識ね?意味は『天から見守ってばかりかの神より、目の前にご降臨されている天皇猊下陛下の方が上ですよ』って簡単な話だと、こう言う説明になるわけ。
やらない善よりやる偽善とは、また違った意味合いなんだけどね?
まぁ、流石にこれがわかんないと大日本帝国の帝国民じゃないからね!しょうがないね!
そこら辺の言葉は流石に中卒でもやるレベルだから、しっかりしような。まじで抑えとかないとテストで悪い点数とってしまうから注意が必要だ!
だから一般教養とかはそこまで問題ないわけですよ。応用とかが少しだけ抜け落ちてるだけで。
何せ中学卒業から今に至るまでブラック企業勤めだったもんで……致し方なしたかし。
「は!ありがたき幸せのことと存じます!」
「存じ……ます」
ペドの人がまともそうに見えるぅぅぅううう!愛の人はなんかちょっと便乗して存じますしか言ってないしぃ!
中々に我ら無口族には厳しいところがあるよな。しょうがない哉、そんな時もあるってことで。
そして、権力を得る代償は何かな何かな?
多分贅の一極集中がこなされている大日本帝国なんだけど、流石にそこらへんのこともカバーしているでしょうし。
こんな中卒が予想できるんだから、多分この二人も想像しているわけで。
想像に易いことなのは自明の理だが、何かしらの枷はある。
「君達はそのまま学園生活を二年と一年楽しんだ後、ボクのいるところまで来てもらうよ!だから、学園でしっかり学んできてボクの話し相手になってよね!楽しみにしてるよ?君たちがちゃんとボクの袂まで来ることを!じゃ、これにて信賞必罰はおしまい!」
罰がなかったかのように存じますが……いえ、なんでもありません。
「何か言いたげな目だけど、何かあるのかい?」って顔してらっしゃった今……!
俺の勘も鋭いけど、天皇猊下もめちゃくちゃ鋭いぃぃ!!なんでこんなわかるんだろう!自分の才能が怖過ぎるってぇ!
まぁ、でも……?内大臣になって悪いことばかりではない。
学園では一番の権力者になったかもしれないが、俺にとって会話とは!コミュニケーションとは!必要のないものである!
嘗てブラック企業勤めのリーマンがコミュニケーション能力を有していたか?否だ!
嘗て働いていたとして、営業の成績を今まで一度も一位になったことがあるか?否だ!
嘗て電話対応なんかしている暇があったらテメェでちったぁ考えることをしろカス!と言われたことがあるか?是だ!
そう、つまり俺と言う男は!いや……今は女か。俺は!ダメ人間のレッテルを貼られたクソ野郎である!
ぁつまりはぁっ!コミュニケーションなんか最初から自分に期待していない!が答えである!
いやぁ〜言い切れたね^^
これこそ無敵の人なのだよ!
そうして、ぶつくさと心の中で考えながら、王室を後にした。
そう字面にすると、なんか俺やばいやつなんじゃねーかな。
いや、やべー奴だったわ。知ってた(悲)
そして、スリーマンセルは結局のところ、良い着地点となって終わったのである。
大会がどうなったかって?
今そんな不躾なこと聞く奴おる?おらんよなぁ!あーだこーだして終わらせたの!天皇猊下陛下が!
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辺りに動揺が走る。
スリーマンセルの動揺も束の間、また新たな動揺が生じたのである。
「どうした、国の首脳方!こちらの方をどなたと心得る!咫多識仁天皇猊下陛下に在らせられるぞ!」
その動揺はそのまま。国家間の動揺に陥ってしまう。
あの一番合戦の笑みといい、咫多識仁天皇猊下陛下の登場といい。
イベント毎には事欠かないと言わんばかりに攻め立ててくる大日本帝国。
それはさながら神風の様……!
「ははは、別にそんなことしなくて良いのに絢爛クンってばお茶目さんなんだからぁ〜!まぁ、ボクの臣民に手を出そうとしたお茶目さんより……よっぽどマシかもねぇ〜」
笑顔の中に重圧のある殺気を混ぜると言う器用なことをしながら、辺り一体を牽制する。
咫多識仁天皇猊下陛下は自在に意識やらを操ることにも長けている。
戦時中ではその能力を際限なく発揮し、大日本帝国の未来は明るいと称賛の渦にいた。
そしてまさしく、第四次世界大戦の終結に導いたのも天皇猊下陛下の力があればこそ。
臣民、国民は皆尊敬する。
そんな力をカリスマと片付けてしまうメディアのことなどはさて置いて、知らず知らずのうちに皆がついて来る。
これが咫多識仁天皇猊下陛下に許された御技ならば、他の誰にもできない素晴らしき才覚と力だろう。
そして、国家は二つに一つの選択肢を迫られていた。
「自らが滅ぶ」か「滅ぼさないでくださいお願いします。と、頭を擦り付けながら赦しを乞う」か。
当然赦しを乞うことが正解だろう。
国家が潰れるとなれば、自分の面子などかなぐり捨てて恥もプライドも外聞すらも捨て去りそれぐらいのことはする。
もし気に食わないのであれば、自分の首一つでいいとさえ思えるぐらいには、大日本帝国は恐ろしい……敵に回ることさえ許さぬ国家だろう。
「……ま、君たちの反応を見る限りだと、反省しているっぽいから別に良いんだけどねぇ。ま、緊張を解いてもらっても良いよ!あ、この三人連れてくから宜しくね?適当に国家間対抗戦終わらせても良いから〜。じゃ、またね〜」
と、まさに過ぎ去る嵐の如し。
絢爛は三人を抱え一人を肩に乗せると、速攻でそこから抜け去るのだった。
これが災害と言わずしてなんと言うのだろう。これが普通に施行されるとして、どう乞えば良いのだろう。
魑魅魍魎を相手取っている様で、なんともつかみどころがない。そんな気さえして来る。
遠い気を戻しながら、現状は襲われなかった。だが、これが戦争の引き金になりかねないとは考えるに易い。
国家間でこれが会議されたのは言うまでもないことだろう。
さらに付け加えるとするならば、破滅よりは共存を選ぶ、とも。
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