第廿話 俺の笑顔は最終兵器
「これは明らかな敵意を持って行動されている!!大日本帝国の明らかな敵意だ!こんな横暴を許していいものなのか!如何に!」
「そうだ!」
「これは異常な行為だぞ!!おかしすぎる!!」
何を根拠に……まぁ、ボコボコにしてるけどさぁ!
でもでも、これって国家対抗戦ですよねぇ!出てきたってことは好きにしていいってことですよねぇ!
必要経費と割り切ってみてはぁ??いかがですかぁ??
と、心の中で煽ってみるが、通じるわけもなく、めちゃくちゃに睨まれていますぅ!!
ひゃははは!何言っても通じるわけねぇわなぁ。
なんか暖簾に腕押しですよ、これ。
どう押し問答しても意味のねぇことなんじゃねぇかな。
しかしながら、僭越ながら、申し立てていただきますが!これは普通に異常な行為ではないと言うことができる!
猊下の命令が明確にあったわけではない。そうでもないが、案にこれは安直に言っているわけでもない。
国家対抗戦は戦力の見せつけ……謂わば「私たちはこんなに戦力を持っていますよ」と宣伝するような場でもある。
そんな場所に猊下を行かせるなど、言語道断であるわね。
卑しい人間の前に現れていいわけねぇだろ!これ大日本帝国臣民の常識ね?一応言っとくけど、これわからないやつ臣民失格ね。
官位を有すると言うことはそこまで把握して、初めて意味のあると言うことだ。
まぁ、それは官位をいただく上で初めに注意されたことでもあり、中学卒業までに習う一般課程での話でもある。最初から知ってはいたが、そこまで常識。
官位があると言うことは中学の道を通るものなら知っていて当然の物……とも付け加えておこう。
「明らかな越権行為であると言うこと……それは我らが天皇猊下に喧嘩を売ると言うことで、相違ありませんか?各国の首相方」
ペドの人、注釈ナイス!そこまで大きく出られると、何も言い返せなくなるのが基本的なものだ。
大体、そんなことを臣民にしたら、天皇猊下も本腰を入れて大日本帝国軍を動かすと言うことになりかねない。
これは学園生の領分の中でありながらも、臣民としての領分でもある。
大体良いとこ出のお嬢様方っぽいし、そこら辺は把握して然るべきものでもあるのだが、良いこと言ったわ!
天皇猊下はただの象徴だけの存在にあらず。
しかしされども、戦力・武力を有する荒事は大体が軍務部に任せてあるとは言えども、絶対的決定権を保有されているのである。
基本的決定権は百花繚乱左大臣絢爛様にあるのだ。まぁ、当然と言えば当然か。
これが理解できないのは外の国から我が祖国にやってきた者たちだけだ。
結局自分たちの国がよほど可愛いと見える。愛国心を持つことは悪いことではないけれど、それを理由に思考停止するのもまた考えものだな、と言うことだなぁ。
さてさて、思考停止の馬鹿どもよ。ここで大日本帝国に嫌がらせをできれば良いと言う風に考えているんなら、オツムが足りないぃ!
これが有用に虎の威を借る狐戦法なのだぁ!
「もし、これが…………天皇猊下の、耳に………………目に触れたら。………………さぞ、お嘆きに…………なる」
「………………………………………………………………残当」
「ならば、この大会の意義はなんでしょう?お考えください、皆様。《《再考のチャンスを与えます》》。そして、もしそのチャンスを逃したのならば、《《明日は我が身》》なんてことが、もしかしたらあり得るかもしれません……どうでしょう?」
ペドの人めちゃくちゃ笑顔でなんてこと言いやがるぅ!再考に痺れるぅぅぅぅぅううう!
各国の首脳にこんな口聞けるの気持ち良すぎだっろ!
俺は少ない文字数でぷぎゃりながら煽るのが当然の役職である!
俺は立つだけで敵を青れると言う特殊性能を持つ……謂わば歩く自動煽動機械なのだぁ!
さぁ、よく見さらせ……よく見なくとも見さらせぇ!俺が……俺こそが最強の煽りマシーンであるぞ!!
やっべ、こんなところに来て何が楽しいんだよとか思ってた俺の心がこの状況を楽しみだして仕方がないぃ!!
本当は「ぷごぉwwwwwwwwwwオタクらの脳みそは蟹味噌よりも貴重なものなんですねぇwwwwwwwwその足りない味噌にヤンニョムソースを足したら頭でも良くなるんですかぁ?wwwwwwww」とかって言いたいぃぃ!!
この体になってから通常の3倍マシで口周り……表情筋が死んだからなぁ。まじで謎!
まぁ、良いよね!あんまり喋れなくても、それが俺の特性みたいなところあるからね!
みんな違ってみんな良い!これ鉄則だから!社会に出たらいろんな性質の人が現れるんだよね!
ほら、上司でもたまにやべー奴いるでしょ?何かにつけてパワハラしてくるやつとか、モラハラしてくるやつとか!
挙げ句の果てにセクハラですよセクハラ!男だっつーに妙に絡んできてサブイボが立ってたなぁ!
アルハラもあったね!奢りとかじゃなくて、こっちが八割負担みたいな事もしばしばあった……てか、俺の人生大概詰んでね?
あぁ、刺されて転生しないにしても、学園に転入する羽目になっても全然良いわぁ〜!
天皇猊下との謁見とか言うなんか夢幻みたいな事も叶ったし、この体って意外と有用性○なのではぁ?
俺が気づいていないだけで、結構破壊力あったんだなぁ!!
敵をものすごく煽れないのが辛いところだけど、この動かない表情筋をピクピクさせながらスマイルを繰り出してみようではないかぁ!
…………あれ、周りのみんなが急に静かになった。おーい、見えてます?これ精一杯のスマイルですよ〜?
あれ、俺って笑顔を安売りにしない質なんだけど、どうかしましたかぁ?
も、もしかして、俺の笑顔は最終兵器だった…………?!
だとしたらちょっとまずいことしちゃったかもぉ!
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あの笑みに含んでいるものは、人によって感じることは様々だろう。
どんなに笑顔でも、相手がどんな風に思っているかなど、その人間が押しはかることなどはできないのだ。
全てが全てわかってしまっていては、全く冒険譚ものはつまらなくなってしまうだろう。
今彼女が浮かべている笑みは、日本の英雄として知られている一番合戦にそっくりの笑みだった。
昔ながらの文献で知っていない者はいないぐらいには有名で、それも一番合戦中務大輔華恋と少し雰囲気が似ていたためか……周りからこう解釈された。
「一番合戦に子どもがいるなんて聞いていない!!」と。
勘違いはまさか国家間にまで及ぶことになった。あの暗黒微笑を目の前にして帰らなくなった軍事部の者たちは沢山いる。
戦略級の異能を持っていたのならば、前線に狩り出されるのは当然だ。国の首脳も馬鹿ではない。
そんな経歴があったからこそ首脳部に入れた……なんて者はごまんといる。
その中で、大日本帝国の英雄の御伽噺……とも形容し難いのだが、逸話があった。
『彼女の笑みを見れたものは幸運か不運かわからない。それは死の合図。それは哀れみではない、確かな自信に裏付けされた微笑。それは、最期の敵への手向』とされている。
そんな理不尽的超常な存在と似ている、稀有な人間がその笑みを浮かべた。
諸君はもうお分かりだろう。もう気づいているだろう。
彼女の放った笑みが、国家間の抑止力にすらなると言うことを知らないまま、彼女は微笑んでしまった。
めちゃくちゃ頑張って表情筋をなんとか動かして、得られた結果が畏怖…………!
「あ、あり得ない。彼女の最期は私たちも見た……日本に落ちてくる核爆弾を自らの体で持って蒸発させ、自身も蒸発しきった。しかし、その力が分散され、各国に逆に大ダメージを与えた。そこから国家間同士での監視が徹底されるようになったと言うのに……!」
この少女はそんなことを全く考えていない。過去の英雄が大日本帝国上で有名にならないはずがない。
しかしながら、異能がらみのことは軒並み規制されており、彼女は中学卒業をしてからそこからブラック企業勤めリーマンになったのだから、分からないのも無理もない。
最初から然るべき異能への教育が施されていたのならば、笑みを浮かべることなく脳内でコケ下ろしにしていただろう。
彼女の勘がそうさせた……としか言いようのないタイミングで、それを平然と行ったのだから、虐殺の合図なのでは……?と変に勘繰ってしまうものもいるだろう。
もう国中の首脳たちが大騒ぎになるどころか、恐怖と絶望をロリに植え付けられていた。
最高どころか、最悪な笑みにタイミング……ここまで噛み合わなければ、もはやそれは天文学的数字に近いものなのだろう。
誤解など当然解ける事もなく、スリーマンセルを組んでいる二人ですら驚愕に至ったのである。
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えっと、俺なんか悪いことしました?国逆の罪に問われているとかじゃないんですが、また王室に召喚されてしまいました。
今度はこの二人も同行しています。
また、俺何かやっちゃいました?
変なことしたのならば謝りますけど、ただ俺微笑んだだけですよねぇ!?
なんすかその反応!!
良いんですか!中身おっさんの外見少女が恥も外聞をかなぐり捨ててここで大号泣してやりますよ?!
え、表情筋が動かなくてそんな事もできないじゃないかって?
全くもってその通り、今の現実を受け入れるしかありません。
どうか、穏便に済まされますようにぃ(懇願)